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Episode1
感嘆する剣
しおりを挟む普通なら誰だって慌てふためく状況だ。けれでもルージュは涼しげな顔を一切変えることなく、自分に飛び掛かってきたクローグレを瞬く間に一刀両断にしてしまった。青黒い光が幾何学模様を成してブレードのようになっていることに気が付いたのは、その全てが終わってからだった。
視界の端でそれを捉えたオレは、対峙しているクローグレの毛皮に捕まると引きずりおろすかのように全体重を預けた。不意の事に足を取られたクローグレはオレにのしかかるように倒れる。
ズドンッ! と、辺りに地響きと共に揺れた。
オレは動かなくなったクローグレの下から、這い出ると服や鎧に着いた土を軽く払った。その後に見たルージュが少々驚いた顔をしている事にオレも驚いたが、気にせずに言葉をかけた。
「流石にそのままの姿でも十分に強いな」
「主も私に力を封印されているというのに、よく戦えたな。今の主の力ではかなりの強敵だと思ったが」
「ああ。お前の言葉を忘れていたし、慣れというのは怖いな。筋力がまるで別人のみたいにまともに動きやしない。もう一度基礎から鍛え直さなきゃならん」
◆ ◆ ◆
そう言った主は気を取り直して怪物を器用に解体し始めた。素材として良い金策ができたと喜んでいるようだった。
私はその後ろから主が仕留めた怪物を見た。喉元に深く予備の短剣が刺さっている。その技前に私は素直に感心してしまった。
(なんという手練だ・・・。力負けしているのを理解した瞬間、相手の力を逆手に取り怪物の自重で剣を喉に突き刺したのか。それも手甲が食い破られた、その刹那の早業。少しでも遅れていたら腕に食い付かれていたはず。それを本当に実践した上、傍目に見ていても焦り一つ見せなず冷静さを保てる精神性・・・咄嗟に預かっていた力を返しそうになったが、様子を見てよかった・・・あの男に使われていた時から単純に持っている力をぶつけるような使われ方しかされなかったからな。剣の扱いに長けた者に使われるなど想像しただけで武者震いがする。良い剣に出会えることを戦士は喜ぶというが、その逆も然りだな)
そんなことを考えていると、誰かの視線を感じた。主に伝えようと思ったが、既に気付いている様子だった。
◆ ◆ ◆
クローグレの体を解体していると、茂みの奥に気配を感じた。大分拙い気配の消し方だったので案の定ルージュも気が付いている。
オレ達は目くばせだけで配置を決め、挟み撃ちで見えない敵を追い詰めた。するとそれは逃げ出すために勢いよく飛び出してきた。が、こちら警戒していた上に相手の動きが遅い。足を引っかけると盛大に転ばすことができた。
クローグレの血の匂いに紛れて分からなかったが、それは魔族の女だった。女は殺されるかもしれないという恐怖に怯えた顔をこちらに向けてきていた。
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