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寝室問題
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新たにジャックさん一行に加わる事になった私の目下の問題は、寝る場所だった。
この亜空間に作られた住居は元々ジャックさん一人のためのものだったので、五人で寝泊まりするにはやや狭い。構造としては外に小さな庭と露天風呂、建物内は廊下を除けばトイレと脱衣所、キッチン、倉庫、そして寝室だった。食事も寝室のテーブルに持ち込んで食べているんだとか。
「今までどうやって寝ていたんですか」
「ベッドはあるけど、一人用だからな。みんな適当にその辺で……」
お風呂も一緒と聞いてもしやと思っていたけど、寝る時も同室だなんて信じられない。私は首を振った。
「皆さん、未婚の男女でしょう!? いくら冒険者ギルドが治外法権だからと言っても、線引きはするべきです!」
「いや線引きと言うか、こいつら魔物だぞ?」
そうだけど! 見た目が美少女だからどうもハーレムに見えてしまう。鼻息を荒くしていると、ショコラさんがフフンと挑発的に笑った。
「やぁねー、アリスちゃんてば妬かないの♪」
「どうして私が妬くんですか! とにかく私までここに居てはスペースがなくなってしまいますから。脱衣所でも借ります」
「まあまあ、ちょっと待てって……お前ら!」
他に寝転べるところに行こうとする私を引き留め、ジャックさんが合図を送る。何事かと振り返った私の目の前で、三人の姿が変わった。
タルトさんは金色の狼に、ショコラさんはコウモリとなってカーテンレールにぶら下がる。そしてパイさんの体は青白く光り、時が止まったように固まって床にゴトンと倒れた。
「え……えぇっ、一体これは!?」
「だから言っただろ、こいつらは魔物なんだって。便宜上、人間の姿をとっているだけなんだ。まあ……そうでなくとも一緒に冒険しているやつらと仲間以上の関係になる事はないさ。面倒だからな」
そう言いながら、ベッドの下から珍妙な棺桶を引きずり出し、壁に立てかける。そして床に転がったままのパイさんを抱き上げて棺桶に入れ、蓋をバタンと閉じた。
「アリスさんはベッドを使うといい。俺は……同室はダメなんだったか。じゃあ脱衣所だな」
私が行こうとしていた場所で寝ようとするジャックさん。彼女たちの変身ぶりに呆けていた私は、我に返ると慌てて引き留める。
「いいえ、家主が飛び入りの客人に気を使う事はありません。普段通りベッドでどうぞ」
「家主だからこそ客はもてなすもんだろ。それに俺は冒険者だぞ。その気になりゃどこでも寝れるんだって」
「でも……あの、さっきはついムキになって、皆さんのやり方にケチをつけてしまいました。私は気にしませんから、ジャックさんも寝室を使ってください」
助けてもらっている身で我儘など言える立場じゃないのに。彼らはきっと、嫌な思いをしただろうな……反省して脱衣所に行かせまいと掴んでいた裾をぎゅっと握ると、ジャックさんが困惑したように声を上げた。
「あー……とりあえず先に風呂に入りたいんだが、放してもらっていいか?」
「は、はいっ!」
――と一悶着あったものの、最終的に私がベッドを使わせてもらい、ジャックさんはソファで寝る事になった。男女で二人きりになる訳じゃないし、非常事態なんだからいいでしょ、旦那様? 文句があるなら直接言いに来てくださいね。
この亜空間に作られた住居は元々ジャックさん一人のためのものだったので、五人で寝泊まりするにはやや狭い。構造としては外に小さな庭と露天風呂、建物内は廊下を除けばトイレと脱衣所、キッチン、倉庫、そして寝室だった。食事も寝室のテーブルに持ち込んで食べているんだとか。
「今までどうやって寝ていたんですか」
「ベッドはあるけど、一人用だからな。みんな適当にその辺で……」
お風呂も一緒と聞いてもしやと思っていたけど、寝る時も同室だなんて信じられない。私は首を振った。
「皆さん、未婚の男女でしょう!? いくら冒険者ギルドが治外法権だからと言っても、線引きはするべきです!」
「いや線引きと言うか、こいつら魔物だぞ?」
そうだけど! 見た目が美少女だからどうもハーレムに見えてしまう。鼻息を荒くしていると、ショコラさんがフフンと挑発的に笑った。
「やぁねー、アリスちゃんてば妬かないの♪」
「どうして私が妬くんですか! とにかく私までここに居てはスペースがなくなってしまいますから。脱衣所でも借ります」
「まあまあ、ちょっと待てって……お前ら!」
他に寝転べるところに行こうとする私を引き留め、ジャックさんが合図を送る。何事かと振り返った私の目の前で、三人の姿が変わった。
タルトさんは金色の狼に、ショコラさんはコウモリとなってカーテンレールにぶら下がる。そしてパイさんの体は青白く光り、時が止まったように固まって床にゴトンと倒れた。
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「だから言っただろ、こいつらは魔物なんだって。便宜上、人間の姿をとっているだけなんだ。まあ……そうでなくとも一緒に冒険しているやつらと仲間以上の関係になる事はないさ。面倒だからな」
そう言いながら、ベッドの下から珍妙な棺桶を引きずり出し、壁に立てかける。そして床に転がったままのパイさんを抱き上げて棺桶に入れ、蓋をバタンと閉じた。
「アリスさんはベッドを使うといい。俺は……同室はダメなんだったか。じゃあ脱衣所だな」
私が行こうとしていた場所で寝ようとするジャックさん。彼女たちの変身ぶりに呆けていた私は、我に返ると慌てて引き留める。
「いいえ、家主が飛び入りの客人に気を使う事はありません。普段通りベッドでどうぞ」
「家主だからこそ客はもてなすもんだろ。それに俺は冒険者だぞ。その気になりゃどこでも寝れるんだって」
「でも……あの、さっきはついムキになって、皆さんのやり方にケチをつけてしまいました。私は気にしませんから、ジャックさんも寝室を使ってください」
助けてもらっている身で我儘など言える立場じゃないのに。彼らはきっと、嫌な思いをしただろうな……反省して脱衣所に行かせまいと掴んでいた裾をぎゅっと握ると、ジャックさんが困惑したように声を上げた。
「あー……とりあえず先に風呂に入りたいんだが、放してもらっていいか?」
「は、はいっ!」
――と一悶着あったものの、最終的に私がベッドを使わせてもらい、ジャックさんはソファで寝る事になった。男女で二人きりになる訳じゃないし、非常事態なんだからいいでしょ、旦那様? 文句があるなら直接言いに来てくださいね。
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