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厄介な再会
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「ここから帰ってこない旦那を探してる? その珍妙な格好はそういう事なのか?」
「いえ、これはこの国の正式な聖衣で……」
「見つかったらその場で式を挙げるの? 神前どころか悪魔の巣窟なのにやるわね」
「だから……もういいです」
ここの冒険者たちは、私の姿に一言言わないと気が済まないのか。そして誰も旦那様らしき魔術師に心当たりはなかった。せめてドジスンさんに旦那様の職業を聞いておけばよかったと後悔するが、もしかしたら彼も正確には知らないのかもしれない。
溜息を吐き、一旦グラディウスさんたちと落ち合おうと踵を返したその時、腕をガシッと掴まれた。
「よぉ、旦那を探し回ってる花嫁がいるって聞いたからもしやと思えば……やっぱりあんたか」
「……? あの、どちら様?」
ごつい手を辿って見上げれば、そこには屈強な剣士。首を傾げると、憎々しげに舌打ちされた。
「昨日そっちから話しかけてきといて、もう忘れたのかよ!?」
「まあ! ひょっとして冒険者ギルドにいた剣士さん?」
思い出した、そう言えば時間潰しに声をかけたような……
今日は仲間と一緒らしく、ガラの悪い男たちと軽口を叩き合っている。
「そういや、旦那は見つかったのか?」
「いいえ、これからここの人たちに聞き込みをしようと……」
「だったら運がいい。この奥に二階へ下りられる階段があるんだが、さっき近くであんたが触れ回っていた特徴の男を見かけたんだよ。急げば追いつけるかもな」
「ええっ!?」
金髪金眼の……残念な感じ(※オブラートに包んだ)な見た目の三十路魔術師が、ピンポイントで見つかるなんてある!? 三ヶ月前にダンジョンに潜ってそんなにすぐ戻って来られるなら、婚姻式に顔くらい出せるでしょ。
(……怪しい)
この状況に、何だか既視感を覚える。まだ幼かった頃、ローリー様が義弟とはぐれて周囲に聞き込みをしていた時に、うっかり誘拐犯の口車に乗ってしまったのだ。義弟が呼んでいるなんて嘘だった訳だが、ローリー様はいざとなれば何とかなると言い張り、そんな彼女を放置できない私も巻き添えに……嫌な事思い出した。
「では仲間に伝えてきますね。一人で行動する訳にはいきませんので」
「そんな悠長な事してる間にどんどん逃げられちまうぜ。俺が付き添ってやるからよ」
別に逃げられてはいない、ただすれ違っているだけで。
ニヤニヤしながら肩に手を回そうとするのを払い除け、グラディウスさんたちの元に戻ろうとするが、剣士の仲間に通せんぼされてしまった。
「通してください!」
「そんな大事な花嫁を捨てて冒険を選ぶようなやつ、とっとと見限っちまえよ。俺たちがいい思いさせてやるから」
「捨てられてなんかいません!」
見限りたいのはやまやまだが、何も知らないくせに捨てられたなんて決めつけられるのも腹が立つ。どちらかと言えば、結婚もダンジョンの調査も王家の命令ですからね?
ごろつきの脇をすり抜け、人混みの向こう側にジョーカーの姿を見つける。
「ジョーカー!! 助け……むぐっ」
「このっ、大人しくしろ!!」
「む~~っ!!」
暴れた拍子にメンバー証が転がり落ち、私は洞窟の奥へと引きずり込まれた。
「これだけ人目があるんだ、ちょっと口を封じたくらいじゃすぐバレるぜ」
「なーに、一階下りるだけで数は一気に減るんだ。攻略済みの宝の部屋にでも行けば、誰にも気付かれねえだろ」
男たちの胸の悪くなる相談に、サーッと青褪める。この手慣れた感じ……こうやってレベルの低い女冒険者が一人のところを狙っていたんだわ、同じように!!
(冗談じゃない!!)
無理やり地下二階への階段を下りきったところで、私は押さえつけていた男の腕に思いっきり噛り付くと、怯んだ隙をついて逃げ出した。
「いえ、これはこの国の正式な聖衣で……」
「見つかったらその場で式を挙げるの? 神前どころか悪魔の巣窟なのにやるわね」
「だから……もういいです」
ここの冒険者たちは、私の姿に一言言わないと気が済まないのか。そして誰も旦那様らしき魔術師に心当たりはなかった。せめてドジスンさんに旦那様の職業を聞いておけばよかったと後悔するが、もしかしたら彼も正確には知らないのかもしれない。
溜息を吐き、一旦グラディウスさんたちと落ち合おうと踵を返したその時、腕をガシッと掴まれた。
「よぉ、旦那を探し回ってる花嫁がいるって聞いたからもしやと思えば……やっぱりあんたか」
「……? あの、どちら様?」
ごつい手を辿って見上げれば、そこには屈強な剣士。首を傾げると、憎々しげに舌打ちされた。
「昨日そっちから話しかけてきといて、もう忘れたのかよ!?」
「まあ! ひょっとして冒険者ギルドにいた剣士さん?」
思い出した、そう言えば時間潰しに声をかけたような……
今日は仲間と一緒らしく、ガラの悪い男たちと軽口を叩き合っている。
「そういや、旦那は見つかったのか?」
「いいえ、これからここの人たちに聞き込みをしようと……」
「だったら運がいい。この奥に二階へ下りられる階段があるんだが、さっき近くであんたが触れ回っていた特徴の男を見かけたんだよ。急げば追いつけるかもな」
「ええっ!?」
金髪金眼の……残念な感じ(※オブラートに包んだ)な見た目の三十路魔術師が、ピンポイントで見つかるなんてある!? 三ヶ月前にダンジョンに潜ってそんなにすぐ戻って来られるなら、婚姻式に顔くらい出せるでしょ。
(……怪しい)
この状況に、何だか既視感を覚える。まだ幼かった頃、ローリー様が義弟とはぐれて周囲に聞き込みをしていた時に、うっかり誘拐犯の口車に乗ってしまったのだ。義弟が呼んでいるなんて嘘だった訳だが、ローリー様はいざとなれば何とかなると言い張り、そんな彼女を放置できない私も巻き添えに……嫌な事思い出した。
「では仲間に伝えてきますね。一人で行動する訳にはいきませんので」
「そんな悠長な事してる間にどんどん逃げられちまうぜ。俺が付き添ってやるからよ」
別に逃げられてはいない、ただすれ違っているだけで。
ニヤニヤしながら肩に手を回そうとするのを払い除け、グラディウスさんたちの元に戻ろうとするが、剣士の仲間に通せんぼされてしまった。
「通してください!」
「そんな大事な花嫁を捨てて冒険を選ぶようなやつ、とっとと見限っちまえよ。俺たちがいい思いさせてやるから」
「捨てられてなんかいません!」
見限りたいのはやまやまだが、何も知らないくせに捨てられたなんて決めつけられるのも腹が立つ。どちらかと言えば、結婚もダンジョンの調査も王家の命令ですからね?
ごろつきの脇をすり抜け、人混みの向こう側にジョーカーの姿を見つける。
「ジョーカー!! 助け……むぐっ」
「このっ、大人しくしろ!!」
「む~~っ!!」
暴れた拍子にメンバー証が転がり落ち、私は洞窟の奥へと引きずり込まれた。
「これだけ人目があるんだ、ちょっと口を封じたくらいじゃすぐバレるぜ」
「なーに、一階下りるだけで数は一気に減るんだ。攻略済みの宝の部屋にでも行けば、誰にも気付かれねえだろ」
男たちの胸の悪くなる相談に、サーッと青褪める。この手慣れた感じ……こうやってレベルの低い女冒険者が一人のところを狙っていたんだわ、同じように!!
(冗談じゃない!!)
無理やり地下二階への階段を下りきったところで、私は押さえつけていた男の腕に思いっきり噛り付くと、怯んだ隙をついて逃げ出した。
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