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一日目の終わり
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結論から言うと私はジョーカーの提案を受け入れ、戻ってきたグラディウスさんたちとも相談して明日からダンジョン内で聞き込みを開始する事にした。もちろんダイナには秘密だ。ドジスンさんならご自由にと言った手前、反対はしないだろうけど、何かと心配してくれる彼女が実質お目付け役になっているから。
(だけど私のやりたい事を旦那様が許してくれる以上は通させてもらうつもりよ。悪く思わないでね)
屋敷に戻った後、何かあった時のためにダイナの責任ではない事を記した手紙を残しておく。
思えばローリー様もこういった無茶ぶりで周囲 (※主に私)を振り回すお人だった。何度危ないからやめろと注意しても、その場だけは気を付けると反省した素振りで誤魔化すのだ。
おかげで貴族令嬢なのに生傷が絶えなかったり(※王太子の婚約者である彼女を守るために死ぬ気で庇った結果)一緒に誘拐されかけたりと散々な目に遭ったけれど、そんなろくでもない彼女を嫌えなかったのは、自分の中にも相通ずるものがあったからなのだろう。
(それでもダイナ、貴女の事は巻き込みたくないの。私はローリー様じゃない……自分のつまらない意地でどれだけ周りが迷惑するのか、分かっているわ)
地下一階とは言え危険なダンジョンに足を踏み入れる気になったのは、知りたいという欲求が湧いてきたからだ。旦那様の事、魔法の事、私が修道院に入ってからの空白の一年間……それと、ジョーカーの正体。
一瞬、彼が旦那様なのかと疑ったのは事実だ。魔法に詳しいし、道化帽からちょろりとはみ出た髪は旦那様と同じ金色だった。ただし、目は青いので違うとすぐに分かったが。
(それに……ふざけたメイクをしてるけど、よく見るとかなり整った顔立ちだったわ。グラディウスさんも大所帯のリーダーらしい風格だけど、それとは別系統の美形と言うか)
旦那様ではないけれど、彼が只者ではない事は確かだろう。知り合いの『ローリー』がデル公爵令嬢本人である事も。神聖魔法を教会や修道院の財源にしようなんて突飛な発想ができるのはローリー様くらいのものだ。
そんなローリー様の事が……苦手意識を持ちながらも、羨ましかったのかもしれない。親に言われたからだとか、立場上断れないなんて言い訳で、本当はみんなと同様に自由奔放な彼女が眩しかったし、厄介ではあったけれど特別に必要とされるのは嬉しかった。
だから、罪悪感なんて持たれても今更だった。
『私の我儘に巻き込んでしまって、ごめんなさい。わたくし一人が破滅するはずだったのに、貴女だけが犠牲になるなんて……こんなはずじゃなかったの』
そこには悪気も何も感じられなくて、悪役令嬢だなんてやっぱり妄言だと、乾いた心でそう思った。彼女はただ無邪気に純粋に、お人形ごっこをしていただけ。ただ王太子の婚約者として、貴族令嬢としてあまりにも優秀だったために、そうとは気付かれなかったのだ。
後に残されたのは、付き合いで悪役を演じていた私の後始末だけ。
(それがごっこ遊びで済まないから、私は断罪を受け入れた……でも、もういいよね? 伯爵家の、王家の、ローリー様の言いなりだったアリシアは終わりにしても。アリスとして、冒険を始めても)
たぶんきっかけは、何でもよかった。ただ引きずられるだけの人生は嫌だ。知りたい、追いかけたいと思ったら自分の足で向かっていく。
私の人生は、冒険は私だけのもの。
(だけど私のやりたい事を旦那様が許してくれる以上は通させてもらうつもりよ。悪く思わないでね)
屋敷に戻った後、何かあった時のためにダイナの責任ではない事を記した手紙を残しておく。
思えばローリー様もこういった無茶ぶりで周囲 (※主に私)を振り回すお人だった。何度危ないからやめろと注意しても、その場だけは気を付けると反省した素振りで誤魔化すのだ。
おかげで貴族令嬢なのに生傷が絶えなかったり(※王太子の婚約者である彼女を守るために死ぬ気で庇った結果)一緒に誘拐されかけたりと散々な目に遭ったけれど、そんなろくでもない彼女を嫌えなかったのは、自分の中にも相通ずるものがあったからなのだろう。
(それでもダイナ、貴女の事は巻き込みたくないの。私はローリー様じゃない……自分のつまらない意地でどれだけ周りが迷惑するのか、分かっているわ)
地下一階とは言え危険なダンジョンに足を踏み入れる気になったのは、知りたいという欲求が湧いてきたからだ。旦那様の事、魔法の事、私が修道院に入ってからの空白の一年間……それと、ジョーカーの正体。
一瞬、彼が旦那様なのかと疑ったのは事実だ。魔法に詳しいし、道化帽からちょろりとはみ出た髪は旦那様と同じ金色だった。ただし、目は青いので違うとすぐに分かったが。
(それに……ふざけたメイクをしてるけど、よく見るとかなり整った顔立ちだったわ。グラディウスさんも大所帯のリーダーらしい風格だけど、それとは別系統の美形と言うか)
旦那様ではないけれど、彼が只者ではない事は確かだろう。知り合いの『ローリー』がデル公爵令嬢本人である事も。神聖魔法を教会や修道院の財源にしようなんて突飛な発想ができるのはローリー様くらいのものだ。
そんなローリー様の事が……苦手意識を持ちながらも、羨ましかったのかもしれない。親に言われたからだとか、立場上断れないなんて言い訳で、本当はみんなと同様に自由奔放な彼女が眩しかったし、厄介ではあったけれど特別に必要とされるのは嬉しかった。
だから、罪悪感なんて持たれても今更だった。
『私の我儘に巻き込んでしまって、ごめんなさい。わたくし一人が破滅するはずだったのに、貴女だけが犠牲になるなんて……こんなはずじゃなかったの』
そこには悪気も何も感じられなくて、悪役令嬢だなんてやっぱり妄言だと、乾いた心でそう思った。彼女はただ無邪気に純粋に、お人形ごっこをしていただけ。ただ王太子の婚約者として、貴族令嬢としてあまりにも優秀だったために、そうとは気付かれなかったのだ。
後に残されたのは、付き合いで悪役を演じていた私の後始末だけ。
(それがごっこ遊びで済まないから、私は断罪を受け入れた……でも、もういいよね? 伯爵家の、王家の、ローリー様の言いなりだったアリシアは終わりにしても。アリスとして、冒険を始めても)
たぶんきっかけは、何でもよかった。ただ引きずられるだけの人生は嫌だ。知りたい、追いかけたいと思ったら自分の足で向かっていく。
私の人生は、冒険は私だけのもの。
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