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裏世界編
お久しぶりです?
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「王太子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。おめでたい日にお招きいただいた事、誠に光栄に存じます」
「殿下、ご無沙汰しておりました。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
周りの喧騒にも構わず、あたしたちは仰々しく殿下に挨拶する。陛下と王妃様は後から来られるそうなので、とりあえず本日の主役に来訪を伝えておく。
殿下はそばにラク様を侍らせ、あたしたちを視界に入れるのも嫌だという体で斜めから受け答えをした。
「ああ、先ほどはすまなかったな。どうやら手違いがあったようで、お前たちが来るのが伝わっていなかったようだ。もっとも、こちらから誘ったとは言え本当に来るとも思わなかったのでな」
何のこのことやってきたんだとでも言いたげな声に、見せないように下げた顔を引き攣りそうになる。そこへアステル様の手が肩に載せられた。
「左様でしたか。殿下に命じられた以上は断るのも無礼かと承りましたが、社交辞令とは知らず失礼いたしました。この場を汚さないためにも、我々はこれで下がらせていただきます」
「まあ待て、軽い冗談も通じないのか、全く……。エリザベス、久しいな。同じ学園に通っているのに、こうして顔を合わせるのも久しぶりだが……どこに隠れていた?」
クラス委員だから、実は久しぶりでも何でもない。むしろ婚約者だった時よりも会話しているほどだが、もちろんおくびにも出さない。
「授業によって受けるクラスを変えていますので、そう感じられるのでしょう。わたくしは滞りなく学園生活を送っておりますよ」
「ふん、その結果は今度の学期末試験で明らかになるだろうな。新しい婚約者とはどうだ? ラクを襲った事を認めるのならば、もっとマシな相手を宛がってやってもいいぞ」
アステル様を侮辱され、あたしは気を付けていたのも忘れ、怒りで表情をなくした。彼の腕に手を絡め、ぎゅっと抱き着くと、真っ赤になったアステル様を見上げてにっこり笑う。
「ご心配いただかなくとも、わたくしはアステル様の婚約者になれた事を、王妃殿下に感謝しております」
「ククッ、負け惜しみはいい。そのような人間離れした風貌が相手では、ますます悪評が立つぞ」
「構いません。この御方が誰よりも美しい心をお持ちな事は、分かっておりますから。アステル様はわたくしにとって、素晴らしい婚約者です」
この時、ひたすらアステル様だけを見つめて言い放ったので、殿下がどんな表情をしていたのかなんて気付きもしなかった。あたしを見返すアステル様の口元だけが、小さく動く。きっとあたしの名を呼んでくれたのだろう。
「美しい心だと? 物は言い様だな。貴様のような女を引き取ってくれるのならば、確かに化け物でも美しい心の持ち主と言えるだろう。実にお似合いだよ」
「はいっ、ありがとうございます!」
嫌味にも全く動じず、満面の笑みでそう返したあたしに、殿下は大きく目を見開いて放心する。最後にまた一礼すると、あたしはアステル様の腕を引くようにして、さっさとその場から退散したのだった。
「殿下、ご無沙汰しておりました。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
周りの喧騒にも構わず、あたしたちは仰々しく殿下に挨拶する。陛下と王妃様は後から来られるそうなので、とりあえず本日の主役に来訪を伝えておく。
殿下はそばにラク様を侍らせ、あたしたちを視界に入れるのも嫌だという体で斜めから受け答えをした。
「ああ、先ほどはすまなかったな。どうやら手違いがあったようで、お前たちが来るのが伝わっていなかったようだ。もっとも、こちらから誘ったとは言え本当に来るとも思わなかったのでな」
何のこのことやってきたんだとでも言いたげな声に、見せないように下げた顔を引き攣りそうになる。そこへアステル様の手が肩に載せられた。
「左様でしたか。殿下に命じられた以上は断るのも無礼かと承りましたが、社交辞令とは知らず失礼いたしました。この場を汚さないためにも、我々はこれで下がらせていただきます」
「まあ待て、軽い冗談も通じないのか、全く……。エリザベス、久しいな。同じ学園に通っているのに、こうして顔を合わせるのも久しぶりだが……どこに隠れていた?」
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「ふん、その結果は今度の学期末試験で明らかになるだろうな。新しい婚約者とはどうだ? ラクを襲った事を認めるのならば、もっとマシな相手を宛がってやってもいいぞ」
アステル様を侮辱され、あたしは気を付けていたのも忘れ、怒りで表情をなくした。彼の腕に手を絡め、ぎゅっと抱き着くと、真っ赤になったアステル様を見上げてにっこり笑う。
「ご心配いただかなくとも、わたくしはアステル様の婚約者になれた事を、王妃殿下に感謝しております」
「ククッ、負け惜しみはいい。そのような人間離れした風貌が相手では、ますます悪評が立つぞ」
「構いません。この御方が誰よりも美しい心をお持ちな事は、分かっておりますから。アステル様はわたくしにとって、素晴らしい婚約者です」
この時、ひたすらアステル様だけを見つめて言い放ったので、殿下がどんな表情をしていたのかなんて気付きもしなかった。あたしを見返すアステル様の口元だけが、小さく動く。きっとあたしの名を呼んでくれたのだろう。
「美しい心だと? 物は言い様だな。貴様のような女を引き取ってくれるのならば、確かに化け物でも美しい心の持ち主と言えるだろう。実にお似合いだよ」
「はいっ、ありがとうございます!」
嫌味にも全く動じず、満面の笑みでそう返したあたしに、殿下は大きく目を見開いて放心する。最後にまた一礼すると、あたしはアステル様の腕を引くようにして、さっさとその場から退散したのだった。
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