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第二章 針の筵の婚約者編
恨みの結果
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コン、コン
部屋のドアを叩くノックの音にドアを開けると、そこにはリバージュ様が連れてきたメイドの一人が立っていた。
「いらっしゃい。早速面談を行うわね」
「あ、あの……この廊下でですか?」
「そうよ、カビ臭くて埃っぽいけど、一階で空いている部屋はここしかなかったの。これから掃除するのも貴女たちの役割になると思うんだけど…」
信じられない、と言う顔をするメイドに構わず、私は面談を開始する。まだ公爵夫人ではないものの、チャールズ様が帰ってくる前に顔合わせぐらいは必要だと思ったのだ。
「ルイセと申します。私はリバージュお嬢様に雇って頂きまして…」
「あら、先代侯爵夫人ではないのね。分かったわルイセ。これからよろしく」
「それから……これはベアトリス様からお預かりしている物です。アイシャ様にお渡しするようにと」
「まあ、ベアトリス様から! 嬉しいわ、ありがとう」
ルイセから差し出された手紙を受け取り、次のメイドを呼んでくるよう伝えると、何故か立ち去らずにチラチラとドアの方を見ている。
「あの…廊下だけではなく、お部屋の方も綺麗にしたいのですが、入室許可を頂けますか」
「中はクララが掃除する事になっているのだけど……そう? だったら開けるけど、汚いからって驚かないでね」
ハンカチで口を押さえ、ドアノブに手をかけ半分ほど開ける。メイドはあんぐりと口を開け、次の瞬間咳き込んだかと思うと顔を真っ赤にして立ち去った。
それを見送り、鍵穴に鍵を差し込んで部屋に戻って数分。
コン、コココン、コン
独特なノック音に再びドアを開けば、さっきとは違うメイド。私はにっこり笑うと、彼女を中に招き入れた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
リバージュ様から託されたメモには、自分が選んだ部下たちには独自のノックの仕方を教えている、名前は向こうが偽る可能性があるので、判断材料にはできないと書かれていた。
その忠告通り、メイドの全員がリバージュ様からの推薦を名乗り、ベアトリス様からの手紙を差し出してきたのだった。
普通にノックをしてきたメイドたちから受け取った手紙の内容は、それぞれチャールズ様への思慕だったり、第一王子派貴族への悪口、自分を含む信用できると主張するメイドの名前、こっそり会おうと言う呼び出しまであった。
そして独自のノック音のメイドたちの手紙を繋ぎ合わせると、本物のベアトリス様からのメッセージになった。
【親愛なる従妹、アイシャ=ゾーン様へ。
直接会う事も堂々と手紙を出す事もできず、こんな形でしか助力できないわたくしをどうか許してね。貴女はあの時、追い詰められていたわたくしの心を救ってくれた恩人。でき得る限りの事はしてあげたいと思っています。
今まで、自分の境遇に理不尽さを感じた事はないかしら? 貴女のお母様から聞き及んでいるでしょうが、わたくしはその黒幕とでも言うべき人の孫。先代侯爵を始めとして、ルージュ侯爵家に連なる者は誰もお祖母様には逆らえない。例外と言えば家を飛び出した叔父くらいかしら。とにかく、貴女が選んだ道はお祖母様にとって目障りだと言えるでしょう。
今回、チャールズ様がメイドを全員解雇した事で、お祖母様は手駒を五人そちらに送り込むようです。なのでリブと相談して、信頼できる者たちを同人数付ける事にしました。彼女たちが何か危険な動きをしないか、見張る事はできます。と言っても他の勢力からの回し者までは手が回らないのですが……そこはチャールズ様に責任を取ってもらいなさい。
殿下もようやく公爵家へフォローに向かうと言う話でしたし、あちらからも助っ人が来るでしょう。わたくしはともかく、殿下がチャールズ様を見捨てる事だけはないので、そこは信用しても良いと思います。
貴女にとって、この数ヶ月が一番大事な時期。どうかどうか危機を乗り越えて。そして無事に子供を産んでね。元気な姿の貴女にまた会える事を祈っています。
貴女の従姉、ベアトリス=ローズ】
一見回りくどい方法で、手紙一通分で収まりそうな内容を五つに分けている。だがここまでしないと、誰が味方か判別できないのだろう。事実、ネメシス様の回し者だったメイドの手紙は、リバージュ様のメモを事前に読んでいなければ普通に騙されていた。
(恐ろしい所だわルージュ侯爵家……いや、ネメシス様)
母や叔父の話を通してしか知らなかった影の大ボスが、今は私を標的にしている。その恨みはチャールズ様の親衛隊や使用人たちの嫌がらせの比ではない。
私が何をした、と言いたいけど逆なのだ。母はネメシス様の標的から逃れるために父と結婚させられた。恨みの結果が、私なのだ。
(怖い…親が犯した罪は、子や孫も背負わなくてはならないの? 私の子も、狙っているの…? 嫌だ、逃げたい! 助けてベアトリス様……助けて……)
まだ会った事のない女の情念に中てられ、お腹を抱えて蹲る。しっかりしなくては、私がこの子を守らなくてはと思えば思うほど、不安がかき立てられていく。
その時、先程退室したばかりの新人メイド、エイダが戻ってきてドアを叩いた。
「アイシャ様、旦那様がお帰りになりました」
「…! すぐにお迎えに上がるわ」
たった三日間だけだったのに、随分と離れていたような気がする。その間にクララが階段から落ちたり物置が部屋になったり殿下が来られたり……色々あって心細かったのかもしれない。チャールズ様が帰ってきてくれて、安心している自分がいる。…単にこの屋敷の主人だからと言うのもあるが。
「お帰りなさいませ、公爵様」
玄関で出迎えると、チャールズ様は少し首を傾げて意外そうな目で私を見た。つられて私も首を傾ける。
「あの、何か…?」
「いや……何だか、置き去りにされて途方に暮れた犬のような目をしていたから」
言ってから、レディーにこれは失礼だったかと訂正したが、割とそのまんまな境遇にいたので間違いではない。様々な手助けが入って何とかなっただけだ。
「新しいメイドが入ったと聞いている。慣れないのに留守を任せて悪かったな」
「いいえ、この家の事はロバートやマーゴットが仕切っていますので、私は特に何も……」
「そうか。寂しい思いをさせたか?」
「それも特に……」
言いかけてチャールズ様を苦笑させているのに気付く。しまった、もっとこう可愛げのある態度にするべきだった。チャールズ様がいなくても全然問題ないとか、バカ正直に答えたら、明日から嫌がらせが倍増する。
「あ、あの…公爵様がお帰りになられてホッとしました。これは本当です…」
フォローになってるのか分からないが、しどろもどろになりながら答えると、チャールズ様が屈んできて私の頬にキスをしたので一瞬で固まった。
(うひゃっ!)
これがあるのをすっかり忘れていた私が硬直していると、チャールズ様の背後から咳払いが聞こえる。
「仲良くしているところすまんが、玄関で待たされっぱなしは堪える」
「あ、わっ! 申し訳ありません、お客様ですか?」
「マックウォルト先生だよ、アイシャ。定期健診のためにお連れした」
彼の腕から抜け出そうとして、聞き覚えのある声に顔だけチャールズ様の背中の向こうに出す。そこにいたのは確かにマックウォルト先生だった。
診察は私の部屋で揃ってしたいと言う先生が二階に上がろうとするのを慌てて止める。もうメイドたちによって拭き取られているだろうが、クララに怪我を負わせたあの階段はもう怖くて上れそうにない。
「あのっ、公爵様にお伝えするのが遅れましたが、私の部屋が変わったんです」
部屋のドアを叩くノックの音にドアを開けると、そこにはリバージュ様が連れてきたメイドの一人が立っていた。
「いらっしゃい。早速面談を行うわね」
「あ、あの……この廊下でですか?」
「そうよ、カビ臭くて埃っぽいけど、一階で空いている部屋はここしかなかったの。これから掃除するのも貴女たちの役割になると思うんだけど…」
信じられない、と言う顔をするメイドに構わず、私は面談を開始する。まだ公爵夫人ではないものの、チャールズ様が帰ってくる前に顔合わせぐらいは必要だと思ったのだ。
「ルイセと申します。私はリバージュお嬢様に雇って頂きまして…」
「あら、先代侯爵夫人ではないのね。分かったわルイセ。これからよろしく」
「それから……これはベアトリス様からお預かりしている物です。アイシャ様にお渡しするようにと」
「まあ、ベアトリス様から! 嬉しいわ、ありがとう」
ルイセから差し出された手紙を受け取り、次のメイドを呼んでくるよう伝えると、何故か立ち去らずにチラチラとドアの方を見ている。
「あの…廊下だけではなく、お部屋の方も綺麗にしたいのですが、入室許可を頂けますか」
「中はクララが掃除する事になっているのだけど……そう? だったら開けるけど、汚いからって驚かないでね」
ハンカチで口を押さえ、ドアノブに手をかけ半分ほど開ける。メイドはあんぐりと口を開け、次の瞬間咳き込んだかと思うと顔を真っ赤にして立ち去った。
それを見送り、鍵穴に鍵を差し込んで部屋に戻って数分。
コン、コココン、コン
独特なノック音に再びドアを開けば、さっきとは違うメイド。私はにっこり笑うと、彼女を中に招き入れた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
リバージュ様から託されたメモには、自分が選んだ部下たちには独自のノックの仕方を教えている、名前は向こうが偽る可能性があるので、判断材料にはできないと書かれていた。
その忠告通り、メイドの全員がリバージュ様からの推薦を名乗り、ベアトリス様からの手紙を差し出してきたのだった。
普通にノックをしてきたメイドたちから受け取った手紙の内容は、それぞれチャールズ様への思慕だったり、第一王子派貴族への悪口、自分を含む信用できると主張するメイドの名前、こっそり会おうと言う呼び出しまであった。
そして独自のノック音のメイドたちの手紙を繋ぎ合わせると、本物のベアトリス様からのメッセージになった。
【親愛なる従妹、アイシャ=ゾーン様へ。
直接会う事も堂々と手紙を出す事もできず、こんな形でしか助力できないわたくしをどうか許してね。貴女はあの時、追い詰められていたわたくしの心を救ってくれた恩人。でき得る限りの事はしてあげたいと思っています。
今まで、自分の境遇に理不尽さを感じた事はないかしら? 貴女のお母様から聞き及んでいるでしょうが、わたくしはその黒幕とでも言うべき人の孫。先代侯爵を始めとして、ルージュ侯爵家に連なる者は誰もお祖母様には逆らえない。例外と言えば家を飛び出した叔父くらいかしら。とにかく、貴女が選んだ道はお祖母様にとって目障りだと言えるでしょう。
今回、チャールズ様がメイドを全員解雇した事で、お祖母様は手駒を五人そちらに送り込むようです。なのでリブと相談して、信頼できる者たちを同人数付ける事にしました。彼女たちが何か危険な動きをしないか、見張る事はできます。と言っても他の勢力からの回し者までは手が回らないのですが……そこはチャールズ様に責任を取ってもらいなさい。
殿下もようやく公爵家へフォローに向かうと言う話でしたし、あちらからも助っ人が来るでしょう。わたくしはともかく、殿下がチャールズ様を見捨てる事だけはないので、そこは信用しても良いと思います。
貴女にとって、この数ヶ月が一番大事な時期。どうかどうか危機を乗り越えて。そして無事に子供を産んでね。元気な姿の貴女にまた会える事を祈っています。
貴女の従姉、ベアトリス=ローズ】
一見回りくどい方法で、手紙一通分で収まりそうな内容を五つに分けている。だがここまでしないと、誰が味方か判別できないのだろう。事実、ネメシス様の回し者だったメイドの手紙は、リバージュ様のメモを事前に読んでいなければ普通に騙されていた。
(恐ろしい所だわルージュ侯爵家……いや、ネメシス様)
母や叔父の話を通してしか知らなかった影の大ボスが、今は私を標的にしている。その恨みはチャールズ様の親衛隊や使用人たちの嫌がらせの比ではない。
私が何をした、と言いたいけど逆なのだ。母はネメシス様の標的から逃れるために父と結婚させられた。恨みの結果が、私なのだ。
(怖い…親が犯した罪は、子や孫も背負わなくてはならないの? 私の子も、狙っているの…? 嫌だ、逃げたい! 助けてベアトリス様……助けて……)
まだ会った事のない女の情念に中てられ、お腹を抱えて蹲る。しっかりしなくては、私がこの子を守らなくてはと思えば思うほど、不安がかき立てられていく。
その時、先程退室したばかりの新人メイド、エイダが戻ってきてドアを叩いた。
「アイシャ様、旦那様がお帰りになりました」
「…! すぐにお迎えに上がるわ」
たった三日間だけだったのに、随分と離れていたような気がする。その間にクララが階段から落ちたり物置が部屋になったり殿下が来られたり……色々あって心細かったのかもしれない。チャールズ様が帰ってきてくれて、安心している自分がいる。…単にこの屋敷の主人だからと言うのもあるが。
「お帰りなさいませ、公爵様」
玄関で出迎えると、チャールズ様は少し首を傾げて意外そうな目で私を見た。つられて私も首を傾ける。
「あの、何か…?」
「いや……何だか、置き去りにされて途方に暮れた犬のような目をしていたから」
言ってから、レディーにこれは失礼だったかと訂正したが、割とそのまんまな境遇にいたので間違いではない。様々な手助けが入って何とかなっただけだ。
「新しいメイドが入ったと聞いている。慣れないのに留守を任せて悪かったな」
「いいえ、この家の事はロバートやマーゴットが仕切っていますので、私は特に何も……」
「そうか。寂しい思いをさせたか?」
「それも特に……」
言いかけてチャールズ様を苦笑させているのに気付く。しまった、もっとこう可愛げのある態度にするべきだった。チャールズ様がいなくても全然問題ないとか、バカ正直に答えたら、明日から嫌がらせが倍増する。
「あ、あの…公爵様がお帰りになられてホッとしました。これは本当です…」
フォローになってるのか分からないが、しどろもどろになりながら答えると、チャールズ様が屈んできて私の頬にキスをしたので一瞬で固まった。
(うひゃっ!)
これがあるのをすっかり忘れていた私が硬直していると、チャールズ様の背後から咳払いが聞こえる。
「仲良くしているところすまんが、玄関で待たされっぱなしは堪える」
「あ、わっ! 申し訳ありません、お客様ですか?」
「マックウォルト先生だよ、アイシャ。定期健診のためにお連れした」
彼の腕から抜け出そうとして、聞き覚えのある声に顔だけチャールズ様の背中の向こうに出す。そこにいたのは確かにマックウォルト先生だった。
診察は私の部屋で揃ってしたいと言う先生が二階に上がろうとするのを慌てて止める。もうメイドたちによって拭き取られているだろうが、クララに怪我を負わせたあの階段はもう怖くて上れそうにない。
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