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 学校に着いてからめばえを見つけた私たちは、駆け寄って声をかけた。

「おっはよ、萌!」
「ちょっと美酉! 今日学校来て大丈夫?」
「平気だって、よっぴが守ってくれるもん。ねっ?」
「ふぇっ!? あ、う、うん……」

 いきなり話を振られた夜羽はテンパって目を白黒させている。私よりこいつが大丈夫なんだか。

「へぇ~? まあ昨日の角笛君、すっごくかっこよかったもんねぇ。ファンになっちゃうかも」
「えー、ああいうのがいいの萌は?」
「あんた、助けてもらってその言い草は……」

 そこに琴亀君も合流したので、一緒に教室まで向かう。

「おっす、角笛。お前ってすげー強ぇのな。見直したぜ」
「あ、あうぅ……」

 どう答えていいのか反応に困っている夜羽に苦笑いしていると、琴亀君が耳打ちしてきた。

「なあ、昨日あいつの鞄持ってやったんだけど、すげー重かったしめっちゃ固ぇんだよ。ありゃ鉄板でも入ってるぜたぶん」
「……そう言えば炎谷ぬくたにさんがそんな事を言っていたような」


 そうして夜羽たちと分かれて教室に入り、お昼に待ち合わせ場所の食堂に向かったのだが。

「……何か御用ですか?」

 なんと、昨日の牧神ファンのお姉様がたにまたも取り囲まれたのだ。思わず身を固くする。

「そんな警戒しなくても、何もしねーよ。あたしら先公に謹慎食らって帰るとこなんだけど。ま、それは自業自得だからいいとして……その前にあんたに謝りたくてさ」
「へ……?」

 てっきり逆恨みされてると思いきや、どういう風の吹き回しだろう。

「例の天使クンのお付き? だか執事だかに牧村の本性を映した動画見せられてさ……さすがにあれはねーわって思ったの」
「ひょっとして、炎谷さん?」
「そう、そのおっさん」

 炎谷さん、そんな動画撮ってたんだ……いつの間に。

「あたしらは謹慎で済んだけど、あいつらとか牧村は退学って聞いたよ。だから報復とか心配しなくていいって事。あたしらもそろそろバカやってる場合じゃないしね」

 受験生ですからね……謹慎や退学はまずいだろう。まあ炎谷さんが説得してくれたようでよかった。
 私はみんなが席を取ってくれている場所に向かい、経緯を話した。

「ふーん、よかったじゃん。あ、でも先輩たち今度は角笛君に惚れたらどうする?」
「まさかぁ、牧神と全然タイプ違うよ?」
「いやいや、大人しそうに見えて実はワルってところが女心を擽るのよ。ギャップ萌えってやつね」

 実はも何も、暗示にかかってるだけで本性って訳では……ないよね? しかし母性本能の次は女心か。色んなところ擽りまくりだな、コイツは。ちょっとムカついてきた。

「あっ、僕の卵焼き! 酷いよミトちゃん」
「へーへー。帰りに奢ってあげるから、泣かないの」

 ……なんてやり取りがあった放課後。


 約束通り商店街の喫茶店に向かおうとする私たちの前に、見るからに気合い入ってそうな頭した兄ちゃんたちが二人、通せんぼしてきた。何か最近、こういう系と縁があるな私……

「夜羽さん、助けてください! もう夜羽さんしか頼れる人がいないんです」
「ふぇっ!?」
「ちょっと、何なんですかあなたたち!?」
「あっ、夜羽さんの愛人コレですか? さすがっすね!」

 誰がじゃ。ジロリと夜羽を睨むと、ブンブン頭を横に振っている。

「彼はあなたたちの事、知らないみたいだけど?」
「そりゃないっすよ! 舎弟の顔も忘れちゃったんすか!?」

 しゃ、舎弟……!? どうやらまた厄介事に巻き込まれたようだ。

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