上 下
3 / 49

2

しおりを挟む
 私が私立原磯高校のアイドル、牧神まきがみヒロシ先輩の彼女になったのは、去年の文化祭後に行われたキャンプファイアーがきっかけだった。それに誘われた時は確か、彼女と別れてばっかりで落ち込んでたんだっけ……こんな素敵な先輩をフるなんて見る目ない、と憤る私に、一緒に踊らないかと誘ってくれた先輩。
 そこからアドレス交換して、たまーにデートなんかしたりして。学校じゃ嫉妬の嵐が怖くて付き合ってるのは内緒だけど、たまに廊下ですれ違う時にこっそり目配せとか秘密の合図を送ったりするのが、こそばゆくてたまんないんだよね。
 この頃はだんだん、スキンシップも多くなってきたし、そろそろ……キスとかされるのかな。

 ドキドキしつつも浮かれて事故らないよう注意しながら私は駐輪場に自転車を止め、待ち合わせ場所まで小走りで向かった。うん、五分前……まだメールはしなくていっか。

「そうそう、今バイト中だから。ごめんね? 大丈夫だって、俺には朱里だけだから」

 ん? ヒロシ先輩の声だ。待ち合わせ場所の像の前にはいなかったので、こっそり裏を覗いてみると、頭が見えた。電話中か……今、声かけちゃまずいよね。って言うか、バイト中って言ってなかった??

 プルルル……ピッ

「もしもーし。おう、お前か。うん、今デートの待ち合わせしてんの。何人目って、一応原磯じゃ一人だけだよ。しかもチューすらまだだし。
何かウブっつーかお堅いっつーか……いい体してっから速攻やりたいとこだけど、中身お子様なんだよな。まあ適度に夢見せてその気にさせるからよ、飽きたらお前んとこにも回してやんよ。その代わり、栄子ちゃん紹介してくれよ?」

 ――え?

 プルルル……ピッ

「もしもし? あ、舞奈? 久しぶりじゃーん、あん時は最高だったからまた誘ってくれよ。えっ、今度の合コンは女子大生? しかもお持ち帰りOKって……マジで!? そりゃやりまくりだろ、うんまた大学生のふりして行くから適当に合わせといて。そんじゃ」

 ピッ

「おっせーな、もう十分過ぎてんぞ。何してんだアイツ……上手くラブホまで持ち込む計画台無しだろ、ったくよ」

 プルルル……ピッ

「もしも……美酉!? 何やってんだよ、今日がデートなの忘れてたんじゃねーだろうな?」
『ごめーん、うっかり忘れてた。こんな私、もう彼女失格だよね?』
「いや、遅刻くらいでそんな……今からでも来れねぇの?」
『それが慌ててたせいで、自転車のサドル盗まれてるの気付かずに、飛び乗った時にブッスリ刺さっちゃって、今病院なの。てへ♪』
「てへ♪ じゃなくてよー……どこのジャッキーだよ? 仕方ねぇな、診てもらって何ともなかったらまた連絡しろよな」
『うん、今日はラブホ行けなくて本当ごめんね? それじゃ』

 ピッ

「ったく、どんな慌て方して……って、今アイツなんつった?」
「あら? 病院帰りに偶然通りかかったけど、奇遇ねヒロシ先輩」
「み……美酉!? お前まさか……」
「何が彼女いない、よ。何股かけてんのよこの最低男!! じゃあね、着拒するからもう別れましょう私たち。朱里さんと栄子さんと舞奈さんと、えーっと……その他合コンのメンバーによろしく、さよなら!」
「ちょ、待……」

 ヒロシ先輩が何かを言いかける前に、私はしっかりサドルの付いた自転車でその場を猛スピードで去った。
 バ――カ!!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

泥々の川

フロイライン
恋愛
昭和四十九年大阪 中学三年の友谷袮留は、劣悪な家庭環境の中にありながら前向きに生きていた。 しかし、ろくでなしの父親誠の犠牲となり、ささやかな幸せさえも奪われてしまう。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?

かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。 主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。 ここでの男女比は狂っている。 そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。 この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。 投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。 必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。 1話約3000文字以上くらいで書いています。 誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。

処理中です...