11 / 34
11 共感定期便1
しおりを挟む
今日は『共感遷移』訓練の最終日だ。
「最後に最終確認の試験だ。これにパスすれば、お前は正式な『共感エージェント』だ」
意次は俺に向かって宣言した。
共感エージェントって何? アルバイトじゃなかったっけ?
「『共感エージェント』になったら、いよいよちゃんと仕事をして貰うことになる」
意次は満足そうに言う。
「ヤバイ仕事人ですか?」
「そんな訳ないだろ。法律に触れるようなことはしないぞ」
ヤバイ仕事人ではないらしい。そういや、波風立てないんだもんな。
「俺たちは、波風が立ちそうなのを食い止めるのが仕事だからな」
意次は小声で言った。なんで小声なんだ?
「波風が立ってしまったら、その時点で俺たち的には失敗なんだ。だから、人知れず実行する必要がある」それ、やっぱり仕事人っぽいんだけど?
あの力は法律で禁止されてはいないが、ちょっとズルい力だとは思う。使い方は気を付けないとな。
「正規のミッションを受けられるかどうかも、この最終試験で分かるだろう」
「そうなんですか?」
そういや、一族に入るかどうかの決断もしなくちゃならないんだったな。
「最終試験は、共感定期便だ」意次が言った。
* * *
共感定期便というのは神海一族内のミッションだ。
神海一族の連絡手段の一つなのだが、もちろん通常の通信設備を使ったものではない。
共感定期便とは共感能力で過去から未来へ飛び、仕事の依頼を受けることだ。
つまり、未来で解決困難な問題が発生した場合、過去で対策して貰うのだ。
ただ、俺たちの共感能力は未来へは行けるが過去には行けない。
過去に仕事を依頼するには、過去から依頼を取りに来て貰わなければならない。
そこで『共感定期便』である。
定期的に未来へ依頼を取りに行くのだ。
* * *
今の俺は、過去から共感遷移されることはない。
始めたばかりなので未来へ行くだけだ。十年後の朝9時を目指して遷移して依頼を受けるのが俺の仕事だ。
ただし、確実に到着する保証はなく、かなりアバウトな方式である。
もちろん、緊急の案件などには対応できない。まぁ、そういう依頼は元々ないし受け付けていないとのことだが。
昨日までは神海意次がやっていたので、今日から俺が担当することになった。
「まぁ、御用聞きみたいなもんだが、これしかやりようがない」と意次は言う。
確かに、能力の性質上こうなるよな。
「未来と直接通信は出来ないんでしょうか?」
「そうだな。俺達のような存在がいるんだから、出来そうなものだよな。実際情報は移動している訳だし不可能ではない筈だ」
「ですよね」
「ただ、未来は不安定だからな」
ああ、確かに未来を知った時点で歴史が変わるだろうな。
「一応、研究はしているようだが、実用化出来るかどうかは怪しいようだ」
「なるほど。難しそうですね。むしろ別の世界との通信のほうが簡単かも」
別世界なら依存関係はないからな。
「ああ、そっちもそうだな」
「俺達も、複数の世界間で情報交換は多少するんだが、こっちはかなり難しい」
別の世界と情報交換? どうするんだろう? 共感能力で出来るのか?
「そうなんですか?」
「まぁ、いつまで相手の世界があるか分からないけどな」と意次は怖いことを言った。
確かに、他の世界のことまでは、面倒見切れない。
この世界だって、結構危ないようなことを言ってたしな。まぁ、消されたりするのは特殊なケースなんだろうけど。
「とにかく、まずは共感定期便だ。最後の試験として十年後の神海探偵社へ行って、ボスから依頼を聞いてきてくれ」
「ボスって、神海意次さんですよね」
「その筈だな」と意次。
ただ、違う可能性はある。
っていうか、いつの日か違うボスになる日が来る筈だ。ちょっと怖い。
「じゃ、行ってきます」
「うむ。頼む! エージェント神岡!」
おお、なんかそれっぽい。
「あれ? 起動装置は?」
「行った先で貰うことになってる。未来にある最新の起動装置だ」
最新か! えっ? どゆこと? 共感遷移は意識だけ飛ぶんだから、貰えないよ?
「それは……」
「行けば分かる」と意次。
「わかるのよ」と麗華。
行けば分かるって、行きつくまで不安なんだけど? ドッキリなのか?
そうして、俺は麗華に見守られて仮眠室から共感遷移した。
「最後に最終確認の試験だ。これにパスすれば、お前は正式な『共感エージェント』だ」
意次は俺に向かって宣言した。
共感エージェントって何? アルバイトじゃなかったっけ?
「『共感エージェント』になったら、いよいよちゃんと仕事をして貰うことになる」
意次は満足そうに言う。
「ヤバイ仕事人ですか?」
「そんな訳ないだろ。法律に触れるようなことはしないぞ」
ヤバイ仕事人ではないらしい。そういや、波風立てないんだもんな。
「俺たちは、波風が立ちそうなのを食い止めるのが仕事だからな」
意次は小声で言った。なんで小声なんだ?
「波風が立ってしまったら、その時点で俺たち的には失敗なんだ。だから、人知れず実行する必要がある」それ、やっぱり仕事人っぽいんだけど?
あの力は法律で禁止されてはいないが、ちょっとズルい力だとは思う。使い方は気を付けないとな。
「正規のミッションを受けられるかどうかも、この最終試験で分かるだろう」
「そうなんですか?」
そういや、一族に入るかどうかの決断もしなくちゃならないんだったな。
「最終試験は、共感定期便だ」意次が言った。
* * *
共感定期便というのは神海一族内のミッションだ。
神海一族の連絡手段の一つなのだが、もちろん通常の通信設備を使ったものではない。
共感定期便とは共感能力で過去から未来へ飛び、仕事の依頼を受けることだ。
つまり、未来で解決困難な問題が発生した場合、過去で対策して貰うのだ。
ただ、俺たちの共感能力は未来へは行けるが過去には行けない。
過去に仕事を依頼するには、過去から依頼を取りに来て貰わなければならない。
そこで『共感定期便』である。
定期的に未来へ依頼を取りに行くのだ。
* * *
今の俺は、過去から共感遷移されることはない。
始めたばかりなので未来へ行くだけだ。十年後の朝9時を目指して遷移して依頼を受けるのが俺の仕事だ。
ただし、確実に到着する保証はなく、かなりアバウトな方式である。
もちろん、緊急の案件などには対応できない。まぁ、そういう依頼は元々ないし受け付けていないとのことだが。
昨日までは神海意次がやっていたので、今日から俺が担当することになった。
「まぁ、御用聞きみたいなもんだが、これしかやりようがない」と意次は言う。
確かに、能力の性質上こうなるよな。
「未来と直接通信は出来ないんでしょうか?」
「そうだな。俺達のような存在がいるんだから、出来そうなものだよな。実際情報は移動している訳だし不可能ではない筈だ」
「ですよね」
「ただ、未来は不安定だからな」
ああ、確かに未来を知った時点で歴史が変わるだろうな。
「一応、研究はしているようだが、実用化出来るかどうかは怪しいようだ」
「なるほど。難しそうですね。むしろ別の世界との通信のほうが簡単かも」
別世界なら依存関係はないからな。
「ああ、そっちもそうだな」
「俺達も、複数の世界間で情報交換は多少するんだが、こっちはかなり難しい」
別の世界と情報交換? どうするんだろう? 共感能力で出来るのか?
「そうなんですか?」
「まぁ、いつまで相手の世界があるか分からないけどな」と意次は怖いことを言った。
確かに、他の世界のことまでは、面倒見切れない。
この世界だって、結構危ないようなことを言ってたしな。まぁ、消されたりするのは特殊なケースなんだろうけど。
「とにかく、まずは共感定期便だ。最後の試験として十年後の神海探偵社へ行って、ボスから依頼を聞いてきてくれ」
「ボスって、神海意次さんですよね」
「その筈だな」と意次。
ただ、違う可能性はある。
っていうか、いつの日か違うボスになる日が来る筈だ。ちょっと怖い。
「じゃ、行ってきます」
「うむ。頼む! エージェント神岡!」
おお、なんかそれっぽい。
「あれ? 起動装置は?」
「行った先で貰うことになってる。未来にある最新の起動装置だ」
最新か! えっ? どゆこと? 共感遷移は意識だけ飛ぶんだから、貰えないよ?
「それは……」
「行けば分かる」と意次。
「わかるのよ」と麗華。
行けば分かるって、行きつくまで不安なんだけど? ドッキリなのか?
そうして、俺は麗華に見守られて仮眠室から共感遷移した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
無限回廊/多重世界の旅人シリーズIII
りゅう
SF
突然多重世界に迷い込んだリュウは、別世界で知り合った仲間と協力して元居た世界に戻ることができた。だが、いつの間にか多重世界の魅力にとらわれている自分を発見する。そして、自ら多重世界に飛び込むのだが、そこで待っていたのは予想を覆す出来事だった。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
多重世界の旅人/多重世界の旅人シリーズII
りゅう
SF
とある別世界の日本でごく普通の生活をしていたリュウは、ある日突然何の予告もなく違う世界へ飛ばされてしまった。
そこは、今までいた世界とは少し違う世界だった。
戸惑いつつも、その世界で出会った人たちと協力して元居た世界に戻ろうとするのだが……。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
原初の星/多重世界の旅人シリーズIV
りゅう
SF
多重世界に無限回廊という特殊な空間を発見したリュウは、無限回廊を実現している白球システムの危機を救った。これで、無限回廊は安定し多重世界で自由に活動できるようになる。そう思っていた。
だが、実際には多重世界の深淵に少し触れた程度のものでしかなかった。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
セルリアン
吉谷新次
SF
銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、
賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、
希少な資源を手に入れることに成功する。
しかし、突如として現れたカッツィ団という
魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、
賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。
人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。
各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、
無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。
リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、
生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。
その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、
次第に会話が弾み、意気投合する。
だが、またしても、
カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。
リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、
賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、
カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。
カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、
ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、
彼女を説得することから始まる。
また、その輸送船は、
魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、
妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。
加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、
警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。
リップルは強引な手段を使ってでも、
ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる