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08.妹
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予想に反して、私のもとに婚約の申し込みが殺到した。1週間に数十もの貴族から婚約を検討してほしいという連絡があったそうだ。
連絡は父親が対応して、全て断ったらしい。
そして私は、将来や結婚について気にせずに休んでいなさいと言われた。
どうやら、トルステン王子が婚約の件について父親と話したらしい。
一体、いつの間に。私が知らない間に、話し合いが行われたようだ。おそらく私が婚約を破棄されて、トルステン王子に話を聞いた後だと思うけど。
別に、休みが必要なほどのショックは受けていない。なぜか、腫れ物を扱うような気の使われ方をしていた。でも、せっかくなので休ませてもらうことにする。
というわけで、しばらく私は屋敷の自室に引きこもって休んでいた。
本を読んだり、お茶を飲んだり。自由な時間を楽しむ。久し振りに、何も考えずにゆっくりと休めていた。
ただし、家族は会いに来れるわけで。
「お姉さまッ!」
「……どうしたの、シャルリーヌ?」
騒ぎながら部屋の中に乱入してきたのは、妹のシャルリーヌだ。
「聞いて下さい! イローナが意地悪してくるんですよ!」
「そうなの」
「それで、ランベルト様と会わせないように妨害してくるんですのよ! こんなの、酷くないですか?」
「そうね。酷いわね」
適当に返事する。それで彼女は満足していた。というか、そんな話を私にするのは何故なのか。妹の目的は、すぐに判明した。
「お姉さま! 以前のように、ランベルト様との密会をセッティングしてくださいよ!」
ランベルト王子を放置していたら好き勝手に色々な女性と愛し合うので、裏で私が女性たちとの逢引をコントロールしていた。そっちのほうが、色々と面倒が少なくて楽だったから。
でも今は、そんな事をする必要がなくなった。妹にお願いされても無理だ。
「私はもう、ランベルト様の婚約者じゃないわ。だから、頼むなら新しい婚約相手のアメリという令嬢に頼んでみたら?」
「そうでした! まだ新しい婚約相手とは認めていませんが、彼女に頼むというのもアリですね! 行ってきます!」
「え?」
皮肉を込めてアドバイスすると、それを本気にして妹は部屋から出ていった。
部屋が静かになったから良かったけれど、色々と心配になった。妹って、あんなに頭の弱い子だったかしら。
普通は、そんな事を婚約者の女性に頼むなんてありえない。私が少し特殊だった。妹は、それが普通だと思っているのか。
ランベルト王子のことを好きになり、彼と会ったりしているうちに、どんどん酷くなっていったような気がする。
いや。婚約者がいる相手に思いを寄せるような子だから、元からなのかしら。
あんな子だから、気にするのも馬鹿らしくなってくる。イローナと揉めているようだし、アメリという令嬢ともトラブルを起こしそうだ。いつか勝手に自滅するかな。
それなら、別に放置してもいいか。わざわざ私が、手を汚す必要も無いかな。
部屋に乱入してきた妹のことについて考えるのを止めて、私は読書を再開した。
連絡は父親が対応して、全て断ったらしい。
そして私は、将来や結婚について気にせずに休んでいなさいと言われた。
どうやら、トルステン王子が婚約の件について父親と話したらしい。
一体、いつの間に。私が知らない間に、話し合いが行われたようだ。おそらく私が婚約を破棄されて、トルステン王子に話を聞いた後だと思うけど。
別に、休みが必要なほどのショックは受けていない。なぜか、腫れ物を扱うような気の使われ方をしていた。でも、せっかくなので休ませてもらうことにする。
というわけで、しばらく私は屋敷の自室に引きこもって休んでいた。
本を読んだり、お茶を飲んだり。自由な時間を楽しむ。久し振りに、何も考えずにゆっくりと休めていた。
ただし、家族は会いに来れるわけで。
「お姉さまッ!」
「……どうしたの、シャルリーヌ?」
騒ぎながら部屋の中に乱入してきたのは、妹のシャルリーヌだ。
「聞いて下さい! イローナが意地悪してくるんですよ!」
「そうなの」
「それで、ランベルト様と会わせないように妨害してくるんですのよ! こんなの、酷くないですか?」
「そうね。酷いわね」
適当に返事する。それで彼女は満足していた。というか、そんな話を私にするのは何故なのか。妹の目的は、すぐに判明した。
「お姉さま! 以前のように、ランベルト様との密会をセッティングしてくださいよ!」
ランベルト王子を放置していたら好き勝手に色々な女性と愛し合うので、裏で私が女性たちとの逢引をコントロールしていた。そっちのほうが、色々と面倒が少なくて楽だったから。
でも今は、そんな事をする必要がなくなった。妹にお願いされても無理だ。
「私はもう、ランベルト様の婚約者じゃないわ。だから、頼むなら新しい婚約相手のアメリという令嬢に頼んでみたら?」
「そうでした! まだ新しい婚約相手とは認めていませんが、彼女に頼むというのもアリですね! 行ってきます!」
「え?」
皮肉を込めてアドバイスすると、それを本気にして妹は部屋から出ていった。
部屋が静かになったから良かったけれど、色々と心配になった。妹って、あんなに頭の弱い子だったかしら。
普通は、そんな事を婚約者の女性に頼むなんてありえない。私が少し特殊だった。妹は、それが普通だと思っているのか。
ランベルト王子のことを好きになり、彼と会ったりしているうちに、どんどん酷くなっていったような気がする。
いや。婚約者がいる相手に思いを寄せるような子だから、元からなのかしら。
あんな子だから、気にするのも馬鹿らしくなってくる。イローナと揉めているようだし、アメリという令嬢ともトラブルを起こしそうだ。いつか勝手に自滅するかな。
それなら、別に放置してもいいか。わざわざ私が、手を汚す必要も無いかな。
部屋に乱入してきた妹のことについて考えるのを止めて、私は読書を再開した。
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