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03.彼女が居なくなって ※ランベルト王子視点
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「これでようやく、私とランベルト様は婚約できるのですね!」
「そうだよ。エリザベートとの婚約は、破棄された。そして新たに、君と婚約関係を結ぶことになった」
「やった!」
俺の目の前で、可愛らしく飛び跳ねて喜ぶアメリ。
エリザベートとの婚約が破棄されて、アメリと俺が新たに婚約することとなった。それを嬉しく思いながら、モヤモヤとした気持ちが残っていた。
彼女は最後、俺のことを愛していないと言って部屋から出ていった。あれは彼女の本音なのだろうか。いや、本音ではないはずだ。今までずっと一緒に居たんだから、心が通ってない、なんてことは無いと思う。
おそらく、拗ねているのだと思う。婚約者の立場を快く譲ってくれた彼女だけど、やっぱり嫌だったのかな。後で機嫌を伺う必要がある。頭の片隅に記憶しておく。
今は、目の前にいるアメリを優先してあげないと。
「ランベルト様が、婚約の手続きをしてくれたんですか?」
「いや、エリザベートが全てやってくれたよ」
そういえば、と先日のことを振り返る。アメリとの婚約について、何か言っていただろうか。何も聞いていないような気がする。
いやでも、エリザベートが忘れるはずない。今まで頼りになっていた彼女だから、ちゃんと手続きをしてくれているはずだ。俺は、エリザベートを信じている。
「ちょっと! ランベルトさまッ!」
「きゃっ!?」
「びっくりした。なんだ?」
突然、部屋に乱入者が現れた。エリザベートの妹である、シャルリーヌだ。
「お姉さまとの婚約を破棄したんですって?」
「え? あ、あぁ。彼女との婚約は破棄したよ」
「なぜ、私に教えてくれなかったのですか?」
「あ、うん。すまない。君にも、ちゃんと伝えるべきだったかな」
姉のエリザベートが既に伝えていると思ったが、彼女は聞いていなかったようだ。でも確かに、俺の口から伝えるべきだったな。
「ランベルト様はフリーってことですよね。それなら、私と婚約してください!」
「ちょっと待ちなさいよ、シャル!」
また、別の女性の声が聞こえてきた。彼女の名前は、イローナ。幼馴染で、昔から仲良くしている令嬢だった。
「何を勝手に、抜け駆けしようとしているの?」
「勝手? 私には、婚約を申し込む正当な理由がありますよ」
「正当な理由? そんなもの、有るはずないわ」
「私がお姉さまの妹、ってことですよ。王族は、ファシュ家との関係を強くするために婚約したのですよ。お姉さまが婚約を破棄された今、ファシュ家の令嬢である私がランベルト様と婚約する理由があるのです」
「そんなの理由にならないわよ。エリザベートが婚約を破棄した時点で、関係の強化どうのこうのは、一旦白紙に戻したということでしょう?」
「それこそ、貴女の勝手な推測です。婚約を破棄したから白紙に戻すだなんて、誰も言っていませんわ」
「常識的に考えて、そうなるのよ!」
部屋に入ってくるなり、いきなり喧嘩を始める2人の令嬢。なぜそんなに荒々しいのか。普段、2人はそんなに仲が悪かっただろか。最近は喧嘩もせず、穏やかな関係だったイメージだけど。
そのまま放置すれば、取っ組み合いの喧嘩に発展しそうなほど敵対していた。
だから俺は、慌てて2人を止める。
「ちょ、ちょっと待て。2人とも」
「でもぉ、ランベルトさまッ!」
「ちょっと言ってやってよ、ランベルト」
「幼馴染だからといってイリーナは、いつもランベルト様に馴れ馴れしいのよ!」
「別に馴れ馴れしくても文句を言われる筋合いはないわ。それに、嫌じゃないわよねライベルト?」
「だから待て、って! 2人とも!!」
止めようとしても、止まらない。そもそも、どちらとも婚約することは出来ない。既に、相手が決まっていたから。今の状況について説明しようとした時に、また別の女性が現れた。
「ランベルト様。エリザベート様との婚約を破棄したという噂を耳にしたのですが、詳しく話を聞かせて下さい」
どんどん騒がしくなっていく。無意識のうちに、俺はエリザベートを探していた。彼女に頼んだら、この騒がしい状況を収めてくれるかもしれない。
だけど彼女は、見当たらない。頼れるエリザベートは、近くに居なかった。
「そうだよ。エリザベートとの婚約は、破棄された。そして新たに、君と婚約関係を結ぶことになった」
「やった!」
俺の目の前で、可愛らしく飛び跳ねて喜ぶアメリ。
エリザベートとの婚約が破棄されて、アメリと俺が新たに婚約することとなった。それを嬉しく思いながら、モヤモヤとした気持ちが残っていた。
彼女は最後、俺のことを愛していないと言って部屋から出ていった。あれは彼女の本音なのだろうか。いや、本音ではないはずだ。今までずっと一緒に居たんだから、心が通ってない、なんてことは無いと思う。
おそらく、拗ねているのだと思う。婚約者の立場を快く譲ってくれた彼女だけど、やっぱり嫌だったのかな。後で機嫌を伺う必要がある。頭の片隅に記憶しておく。
今は、目の前にいるアメリを優先してあげないと。
「ランベルト様が、婚約の手続きをしてくれたんですか?」
「いや、エリザベートが全てやってくれたよ」
そういえば、と先日のことを振り返る。アメリとの婚約について、何か言っていただろうか。何も聞いていないような気がする。
いやでも、エリザベートが忘れるはずない。今まで頼りになっていた彼女だから、ちゃんと手続きをしてくれているはずだ。俺は、エリザベートを信じている。
「ちょっと! ランベルトさまッ!」
「きゃっ!?」
「びっくりした。なんだ?」
突然、部屋に乱入者が現れた。エリザベートの妹である、シャルリーヌだ。
「お姉さまとの婚約を破棄したんですって?」
「え? あ、あぁ。彼女との婚約は破棄したよ」
「なぜ、私に教えてくれなかったのですか?」
「あ、うん。すまない。君にも、ちゃんと伝えるべきだったかな」
姉のエリザベートが既に伝えていると思ったが、彼女は聞いていなかったようだ。でも確かに、俺の口から伝えるべきだったな。
「ランベルト様はフリーってことですよね。それなら、私と婚約してください!」
「ちょっと待ちなさいよ、シャル!」
また、別の女性の声が聞こえてきた。彼女の名前は、イローナ。幼馴染で、昔から仲良くしている令嬢だった。
「何を勝手に、抜け駆けしようとしているの?」
「勝手? 私には、婚約を申し込む正当な理由がありますよ」
「正当な理由? そんなもの、有るはずないわ」
「私がお姉さまの妹、ってことですよ。王族は、ファシュ家との関係を強くするために婚約したのですよ。お姉さまが婚約を破棄された今、ファシュ家の令嬢である私がランベルト様と婚約する理由があるのです」
「そんなの理由にならないわよ。エリザベートが婚約を破棄した時点で、関係の強化どうのこうのは、一旦白紙に戻したということでしょう?」
「それこそ、貴女の勝手な推測です。婚約を破棄したから白紙に戻すだなんて、誰も言っていませんわ」
「常識的に考えて、そうなるのよ!」
部屋に入ってくるなり、いきなり喧嘩を始める2人の令嬢。なぜそんなに荒々しいのか。普段、2人はそんなに仲が悪かっただろか。最近は喧嘩もせず、穏やかな関係だったイメージだけど。
そのまま放置すれば、取っ組み合いの喧嘩に発展しそうなほど敵対していた。
だから俺は、慌てて2人を止める。
「ちょ、ちょっと待て。2人とも」
「でもぉ、ランベルトさまッ!」
「ちょっと言ってやってよ、ランベルト」
「幼馴染だからといってイリーナは、いつもランベルト様に馴れ馴れしいのよ!」
「別に馴れ馴れしくても文句を言われる筋合いはないわ。それに、嫌じゃないわよねライベルト?」
「だから待て、って! 2人とも!!」
止めようとしても、止まらない。そもそも、どちらとも婚約することは出来ない。既に、相手が決まっていたから。今の状況について説明しようとした時に、また別の女性が現れた。
「ランベルト様。エリザベート様との婚約を破棄したという噂を耳にしたのですが、詳しく話を聞かせて下さい」
どんどん騒がしくなっていく。無意識のうちに、俺はエリザベートを探していた。彼女に頼んだら、この騒がしい状況を収めてくれるかもしれない。
だけど彼女は、見当たらない。頼れるエリザベートは、近くに居なかった。
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