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第28話 王子たちの罪 ※王国王子視点
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「ま、待ってくださいッ!」
牢屋から立ち去ろうとした父上を必死で呼び止める。まだ話は終わりじゃない! 死刑なんて納得できない。
「お前が、あの女との婚約を発表すると準備を始めたから。それで、もう後戻りはできなくなった」
「……あの女とは、アルメルことですか?」
私は、父上が何を言っているのか理解できなかった。なぜ、私とアルメルの婚約の話が、牢屋で拘束される理由につながるというのか。
「私は、彼女のことを本気で愛しています。だからこそ、婚約を公表するんです!」
「……」
父上は何も言わず、黙って聞いていた。
「彼女は私にとって大切な女性です。将来を共にしたいと思っています! それは今も変わりません!!」
「……」
私がどれだけ言葉を尽くしても、父上は表情一つ変えなかった。ただ、じっとこちらを見つめている。どうして、そんな目で見るのか。理解が出来ない。
「馬鹿者が。言いたいことは、それだけか?」
「えっ?」
父上は、感情のない声で言った。
「お前は、あの女が王国にどれだけの損害をもたらしたのか知らないのか?」
「損害とは、何の話ですか?」
私が尋ねると、父上は舌打ちをした。苛立っているようだ。
「改めて思う。儂は今まで、本当にどうかしていた。こんな状況になるまで静観するなんて。別の誰かに操られていたような、最悪な気分だ」
「何の話ですか、父上ッ! 一体何の話をしているのですか!」
父上は、私の言葉を無視して続ける。
「しかし、ようやく意識が正常に戻った。そして、あの女がどれだけ危険なのか理解できた。あの女は、王国の脅威だ。過去は、どうにもできない。ならば、王国の未来のために今、排除せねば」
「そんなことは、ありません! アルメルは、私に必要な存在です! 彼女の癒やしが、私には必要なんだ!」
なんで、父上は理解してくれないのか!
「なるほど。お前も、狂わされたのだな。あの女の毒牙に」
「父上ッ! もう一度だけ、チャンスを下さい! どうにかします! だから!」
この牢屋を出してもらえないと、何もできない。父上だって、本心では私を処刑したくないはずだ。それに、アルメルが今までどれだけの貢献をしてきたのか説明すれば、きっと父上は考えを改めてくれる。
アルメルを排除するなんて、そんな馬鹿な考えをやめてくれるはずだ。
「……」
再び黙って、俺の顔をじっと見つめてから、父上はため息をついた。そして、くるっと背を向ける。
「お前の死は無駄にしない。せめて最期は、有効に活用してやる」
「待ってください!」
そのまま二度と立ち止まることなく、父上は行ってしまった。残されたのは、檻に縋り付く私だけ。
牢屋から立ち去ろうとした父上を必死で呼び止める。まだ話は終わりじゃない! 死刑なんて納得できない。
「お前が、あの女との婚約を発表すると準備を始めたから。それで、もう後戻りはできなくなった」
「……あの女とは、アルメルことですか?」
私は、父上が何を言っているのか理解できなかった。なぜ、私とアルメルの婚約の話が、牢屋で拘束される理由につながるというのか。
「私は、彼女のことを本気で愛しています。だからこそ、婚約を公表するんです!」
「……」
父上は何も言わず、黙って聞いていた。
「彼女は私にとって大切な女性です。将来を共にしたいと思っています! それは今も変わりません!!」
「……」
私がどれだけ言葉を尽くしても、父上は表情一つ変えなかった。ただ、じっとこちらを見つめている。どうして、そんな目で見るのか。理解が出来ない。
「馬鹿者が。言いたいことは、それだけか?」
「えっ?」
父上は、感情のない声で言った。
「お前は、あの女が王国にどれだけの損害をもたらしたのか知らないのか?」
「損害とは、何の話ですか?」
私が尋ねると、父上は舌打ちをした。苛立っているようだ。
「改めて思う。儂は今まで、本当にどうかしていた。こんな状況になるまで静観するなんて。別の誰かに操られていたような、最悪な気分だ」
「何の話ですか、父上ッ! 一体何の話をしているのですか!」
父上は、私の言葉を無視して続ける。
「しかし、ようやく意識が正常に戻った。そして、あの女がどれだけ危険なのか理解できた。あの女は、王国の脅威だ。過去は、どうにもできない。ならば、王国の未来のために今、排除せねば」
「そんなことは、ありません! アルメルは、私に必要な存在です! 彼女の癒やしが、私には必要なんだ!」
なんで、父上は理解してくれないのか!
「なるほど。お前も、狂わされたのだな。あの女の毒牙に」
「父上ッ! もう一度だけ、チャンスを下さい! どうにかします! だから!」
この牢屋を出してもらえないと、何もできない。父上だって、本心では私を処刑したくないはずだ。それに、アルメルが今までどれだけの貢献をしてきたのか説明すれば、きっと父上は考えを改めてくれる。
アルメルを排除するなんて、そんな馬鹿な考えをやめてくれるはずだ。
「……」
再び黙って、俺の顔をじっと見つめてから、父上はため息をついた。そして、くるっと背を向ける。
「お前の死は無駄にしない。せめて最期は、有効に活用してやる」
「待ってください!」
そのまま二度と立ち止まることなく、父上は行ってしまった。残されたのは、檻に縋り付く私だけ。
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