27 / 42
第27話 遅すぎた危機感 ※王国王子視点
しおりを挟む
そのまま私は牢屋に放り込まれた。王子である私に、こんな仕打ちをして許されるはずがない。兵士も監視している。なぜ、このような扱いを受けねばならないのだ。
怒りが湧いてくる。だが、何もできない。今は、大人しく待つしかないのか。
アルメルのことも心配だった。兵士に拘束されたあと、何処かへ連れて行かれた。私とは別の場所へ。その後、どうなったのかわからない。彼女が酷い目に遭わされていないか、それがとても気がかりだった。
アルメルに何かしたら、ただではおかない。その意思を込めて兵士を睨みつけるが、まったく相手にされない。
早くこの牢屋を出て、彼女を助けに行きたいのに。アルメルの身を案じながら、私は静かに待った。時間が経てば、友人の誰かが助けに来てくれるかも。国王である父が来てくれるかも。
きっと誰かが助けに来てくれる。そして、すぐにここから出られるはず。希望はある。
どのくらいの時間が経っただろう。牢屋の外で、足音が聞こえてきた。誰か来たようだ。足音が聞こえるほうに視線を向けて、じっと見つめる。薄暗い中に、顔が見えた。
「父上ッ!」
やって来たのは、苦い顔をした父上だった。ようやく、話が出来る相手が来てくれたな。父に頼んで、ここに居る兵士を全員処刑してもらう。
「……」
父上は、私の姿を見たのに何も言わない。ただ、こちらをじっと見下ろしてくる。この手にある物が、父上には見えていないのか。
「父上! この手枷を外すように命じてください! アルメルのことも今すぐ――」
「それは、出来ない」
「な!?」
父上は、私の言葉を遮るようにして言った。静かな口調だが、有無を言わせぬ迫力があった。出来ないとは、どういうことなんだ。何かの冗談か? 冗談だったとしたら笑えない。
しかし、父はそれ以外に何も言わない。ただ俺を睨んでくるだけ。その目を見て、背筋がゾクリとした。下手なことを言ったら、マズい。だが、そのこのまま引き下がるわけにはいかない。
「どうしてですか? なぜ私は、このような仕打ちを受けねばならないのですか! 早く、私を牢屋から出してください!」
「だから、それは無理な話だ」
「どうして!」
私は、叫ぶように言った。国王である父なら、無理なんかない。それなのに、私を冷たい目のまま見下ろしてくる。
どれぐらいの時間が流れたのか。沈黙が続いて、先に口を開いたのは父だった。
「こんな事態になるまで何も気付かなかった儂は愚か者だ。愚か者なりに責任を取らねばならない」
「責任? 一体、何の話ですか。それよりもアルメルのことを――」
早く彼女の安全を確認しないと。しかし、父は続けて言った。
「息子の死刑執行を命じるのは、胸が張り裂ける思いだ。だが、こうなってしまったからには仕方あるまい」
「はぁ? 何を……」
何を言っているのか、さっぱりわからない。死刑? どうして。私は何もしていないのに。本気、なのか。
「死刑執行の日まで、そこで大人しく過ごすが良い」
怒りが湧いてくる。だが、何もできない。今は、大人しく待つしかないのか。
アルメルのことも心配だった。兵士に拘束されたあと、何処かへ連れて行かれた。私とは別の場所へ。その後、どうなったのかわからない。彼女が酷い目に遭わされていないか、それがとても気がかりだった。
アルメルに何かしたら、ただではおかない。その意思を込めて兵士を睨みつけるが、まったく相手にされない。
早くこの牢屋を出て、彼女を助けに行きたいのに。アルメルの身を案じながら、私は静かに待った。時間が経てば、友人の誰かが助けに来てくれるかも。国王である父が来てくれるかも。
きっと誰かが助けに来てくれる。そして、すぐにここから出られるはず。希望はある。
どのくらいの時間が経っただろう。牢屋の外で、足音が聞こえてきた。誰か来たようだ。足音が聞こえるほうに視線を向けて、じっと見つめる。薄暗い中に、顔が見えた。
「父上ッ!」
やって来たのは、苦い顔をした父上だった。ようやく、話が出来る相手が来てくれたな。父に頼んで、ここに居る兵士を全員処刑してもらう。
「……」
父上は、私の姿を見たのに何も言わない。ただ、こちらをじっと見下ろしてくる。この手にある物が、父上には見えていないのか。
「父上! この手枷を外すように命じてください! アルメルのことも今すぐ――」
「それは、出来ない」
「な!?」
父上は、私の言葉を遮るようにして言った。静かな口調だが、有無を言わせぬ迫力があった。出来ないとは、どういうことなんだ。何かの冗談か? 冗談だったとしたら笑えない。
しかし、父はそれ以外に何も言わない。ただ俺を睨んでくるだけ。その目を見て、背筋がゾクリとした。下手なことを言ったら、マズい。だが、そのこのまま引き下がるわけにはいかない。
「どうしてですか? なぜ私は、このような仕打ちを受けねばならないのですか! 早く、私を牢屋から出してください!」
「だから、それは無理な話だ」
「どうして!」
私は、叫ぶように言った。国王である父なら、無理なんかない。それなのに、私を冷たい目のまま見下ろしてくる。
どれぐらいの時間が流れたのか。沈黙が続いて、先に口を開いたのは父だった。
「こんな事態になるまで何も気付かなかった儂は愚か者だ。愚か者なりに責任を取らねばならない」
「責任? 一体、何の話ですか。それよりもアルメルのことを――」
早く彼女の安全を確認しないと。しかし、父は続けて言った。
「息子の死刑執行を命じるのは、胸が張り裂ける思いだ。だが、こうなってしまったからには仕方あるまい」
「はぁ? 何を……」
何を言っているのか、さっぱりわからない。死刑? どうして。私は何もしていないのに。本気、なのか。
「死刑執行の日まで、そこで大人しく過ごすが良い」
463
お気に入りに追加
3,519
あなたにおすすめの小説
私は悪役令嬢なの? 婚約破棄して悪役にならない道を選びました
hikari
恋愛
エマニュエル王太子から婚約破棄されたその晩、アレクシアは夢を見た。そして気づいた。自分はある乙女ゲーの悪役令嬢に転生した事を。とはいえ、ゲームの内容とは少し違う。だったら、自分は平民のモブキャラを好きになれば良いのね。
本当の悪役はエマニュエル王太子を略奪したジェシカだった。
好きになったモブキャラは実は行方不明の隣国のアルキューオネ帝国の皇子だった!!
転生大井亜里沙であることを理解してくれたのは無二の親友ヴィクトリアだった。
ヒロインはジェシカと仲が良くない。だったら、悪役にならなければ良いんだ! とアレクシアは思った。ヒロインに協力し、ヒロインの意中の彼を射止めることにする。ヒロインが好きなのは実はスポーツマンのゲイルだった。
極めつけはエマニュエルはアレクシアと婚約中にジェシカと交際していた事が国王に知られ、ジェシカ共々国を追われる最高なスッキリざまぁ。
ざまあの回には★がついています。
悪役令嬢ものは今作で最後になる予定です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど『相手の悪意が分かる』から死亡エンドは迎えない
七星点灯
恋愛
絶対にハッピーエンドを迎えたい!
かつて心理学者だった私は、気がついたら悪役令嬢に転生していた。
『相手の嘘』に気付けるという前世の記憶を駆使して、張り巡らされる死亡フラグをくぐり抜けるが......
どうやら私は恋愛がド下手らしい。
*この作品は小説家になろう様にも掲載しています
【完結】貴族社会に飽き飽きした悪役令嬢はモブを目指すが思わぬ事態に遭遇してしまう
hikari
恋愛
クララは王太子と婚約していた。しかし、王太子はヴァネッサというクララのクラスメイトと浮気をしていた。敢え無く婚約は破棄となる。
クララはある日夢を見た。そして、転生者である事や自分が前世プレーしていた乙女ゲーム『今宵は誰と睦まじく』の悪役令嬢に転生していた事を知る。さらに、ヒロインは王太子を奪ったヴァネッサであった。
クララは前世、アラフォー独身社畜だった。前世で結婚できなかったから、今世ではしあわせになると決めた。
所詮、王太子とは政略結婚。貴族社会に嫌気が差し、平民のトールと一緒になろうとしたが、トールは実は原作とは違ったキャラだった。
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!
ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。
気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる