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第10話 足りない人員 ※次期騎士団長候補の視点
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「ふぅ」
いつもの訓練を終える。本当はアルメルと一緒に過ごしたいのだが、訓練を怠るわけにはいかない。強い俺が好きだと言ってくれた彼女に相応しい俺でいるためにも、俺は努力し続けなければならない。
俺も強くなりたいと常々思っているので、この訓練は苦ではない。望んでやっていること。
「しかし、まだまだ鍛え方が足りないな……」
もっともっと強くならなければ、彼女に見合う男にはなれない。もっと、もっとだ。
ひたすらに自分を磨いて、いつかは王国最強の騎士と呼ばれるように。彼女の隣に立つのにふさわしい男になる!
この後は、執務室に行って仕事をしなければならない。こっちは面倒だが、強い俺でいるために必要なこと。騎士団長の地位を早く受け継ぐためには、実績の積み重ねが重要だ。
部屋に戻ってきて、机に向かう。
遠征任務も近いので、その準備のための手続きをしなければならない。計画内容について確認していると早速、問題点を発見した。
やれやれ、こんな簡単なことを見落としているとはな。情けない。
「おい」
「はい、どうかなさいましたか?」
部下を呼んで、問題点を指摘する。
「この遠征に出す人員の数が間違っているぞ。これじゃあ、人手が足りない」
俺の関わっている計画で、作戦の失敗なんて許されない。すぐに訂正させないと。しかし、部下の男は堂々とした態度。
「いいえ、その数で間違いはありません」
「何? どういうことだ?」
「今回の任務で出せる最大の人数が、今はそれだけしか居ませんので」
「なんだと?」
いつもの遠征任務と比べてみたら、動かす予定が半分ほどの人数。確かに、いつもは余裕を持って人数多めで任務にあたっている。ちょっとぐらい減らしても大丈夫ではある。だが、人数を半分にしたら明らかに足りない。
なのに、出せる人数がこれで最大とは意味がわからない。
「居ないとは、どういうことだ?」
「ラウンド家の兵士が、今回は出せないということらしいです」
「なんだと? どうして?」
「別の任務に出ているとかで、拒否されました」
「……別の任務? 勝手なことを」
事前に許可もなく、勝手に別の任務で兵士を動かすなんて。とりあえずラウンド家の当主を呼び出して、事情を確認しないと。
別の任務があるなんて、嘘だろうな。王国の安全に関係する大事な任務よりも、優先すべき任務なんてないはず。嘘だと判明した場合、制裁が必要だろう。ちゃんと事実を確かめないと。
「今すぐ、ラウンド家の当主を呼び出してくれ」
「了解しました」
部下に命じて、ラウンド家の当主を呼び出す。しかし、ラウンド家の当主は来なかった。王都の屋敷には、代理人しかいないという。
当主は、どこに行っているのか。代理人に聞いても、当主の行き先は教えてもらえなかったらしい。それから、今回の遠征任務には兵士を出せないことを改めて伝えられた。完全に拒否されている。
俺は侮辱されているのか。ふざけるなよ。
「くそっ。面倒な」
婚約者だったルシールに頼めば、当主の居場所がわかるかもしれない。だが、彼女との婚約は破棄してしまった。こちらから連絡を取るのは嫌だった。
「まさか……!」
この嫌がらせは、ルシールとの婚約を破棄したことに対する報復なのか。ちゃんと話し合って婚約は破棄した。向こうも納得していたはず。それなのに、このタイミングで仕返しをしてくるなんて。俺が困るような場面を狙っていたのか。
「こんな手段を使ってくるとはな……」
遠征任務のために用意できる人員は足りないが、出るしかない。予定を延期すれば、俺の評価も下がってしまうかもしれない。そうすると、騎士団長の就任が遠のいてしまうかも。それは嫌だ。
今ある戦力で、任務にあたるしかない。そして、任務を必ず成功させないと。
「それから」
「まだ、何かあるのか?」
「ラウンド家から、今回の任務について援助金は出せないと」
「……」
とんでもないことを言い出す部下。絶句してしまった。兵士だけでなく、金も出さないなんて。それじゃあ、もっと色々と足りなくなる。
「……わかった。足りなくなった分は、俺が出す。必要になる額がどれくらいか計算して報告してくれ」
「了解しました」
部下に指示を出して、遠征任務の準備を急いで進める。今回の任務が終わった後にラウンド家へ出向いて、ちゃんと話し合わなければいけないな。これは、大問題だ。
婚約を破棄しただけで、こんな嫌がらせをされるとは思わなかった。もしかしたら、ルシールが裏で手を回しているのかもしれない。そうだとしたら、本当に厄介な女だ。婚約を破棄して、アルメルを選んだのは間違いでなかったことを再確認した。
この件については、後で絶対にラウンド家とルシールに抗議してやる。
いつもの訓練を終える。本当はアルメルと一緒に過ごしたいのだが、訓練を怠るわけにはいかない。強い俺が好きだと言ってくれた彼女に相応しい俺でいるためにも、俺は努力し続けなければならない。
俺も強くなりたいと常々思っているので、この訓練は苦ではない。望んでやっていること。
「しかし、まだまだ鍛え方が足りないな……」
もっともっと強くならなければ、彼女に見合う男にはなれない。もっと、もっとだ。
ひたすらに自分を磨いて、いつかは王国最強の騎士と呼ばれるように。彼女の隣に立つのにふさわしい男になる!
この後は、執務室に行って仕事をしなければならない。こっちは面倒だが、強い俺でいるために必要なこと。騎士団長の地位を早く受け継ぐためには、実績の積み重ねが重要だ。
部屋に戻ってきて、机に向かう。
遠征任務も近いので、その準備のための手続きをしなければならない。計画内容について確認していると早速、問題点を発見した。
やれやれ、こんな簡単なことを見落としているとはな。情けない。
「おい」
「はい、どうかなさいましたか?」
部下を呼んで、問題点を指摘する。
「この遠征に出す人員の数が間違っているぞ。これじゃあ、人手が足りない」
俺の関わっている計画で、作戦の失敗なんて許されない。すぐに訂正させないと。しかし、部下の男は堂々とした態度。
「いいえ、その数で間違いはありません」
「何? どういうことだ?」
「今回の任務で出せる最大の人数が、今はそれだけしか居ませんので」
「なんだと?」
いつもの遠征任務と比べてみたら、動かす予定が半分ほどの人数。確かに、いつもは余裕を持って人数多めで任務にあたっている。ちょっとぐらい減らしても大丈夫ではある。だが、人数を半分にしたら明らかに足りない。
なのに、出せる人数がこれで最大とは意味がわからない。
「居ないとは、どういうことだ?」
「ラウンド家の兵士が、今回は出せないということらしいです」
「なんだと? どうして?」
「別の任務に出ているとかで、拒否されました」
「……別の任務? 勝手なことを」
事前に許可もなく、勝手に別の任務で兵士を動かすなんて。とりあえずラウンド家の当主を呼び出して、事情を確認しないと。
別の任務があるなんて、嘘だろうな。王国の安全に関係する大事な任務よりも、優先すべき任務なんてないはず。嘘だと判明した場合、制裁が必要だろう。ちゃんと事実を確かめないと。
「今すぐ、ラウンド家の当主を呼び出してくれ」
「了解しました」
部下に命じて、ラウンド家の当主を呼び出す。しかし、ラウンド家の当主は来なかった。王都の屋敷には、代理人しかいないという。
当主は、どこに行っているのか。代理人に聞いても、当主の行き先は教えてもらえなかったらしい。それから、今回の遠征任務には兵士を出せないことを改めて伝えられた。完全に拒否されている。
俺は侮辱されているのか。ふざけるなよ。
「くそっ。面倒な」
婚約者だったルシールに頼めば、当主の居場所がわかるかもしれない。だが、彼女との婚約は破棄してしまった。こちらから連絡を取るのは嫌だった。
「まさか……!」
この嫌がらせは、ルシールとの婚約を破棄したことに対する報復なのか。ちゃんと話し合って婚約は破棄した。向こうも納得していたはず。それなのに、このタイミングで仕返しをしてくるなんて。俺が困るような場面を狙っていたのか。
「こんな手段を使ってくるとはな……」
遠征任務のために用意できる人員は足りないが、出るしかない。予定を延期すれば、俺の評価も下がってしまうかもしれない。そうすると、騎士団長の就任が遠のいてしまうかも。それは嫌だ。
今ある戦力で、任務にあたるしかない。そして、任務を必ず成功させないと。
「それから」
「まだ、何かあるのか?」
「ラウンド家から、今回の任務について援助金は出せないと」
「……」
とんでもないことを言い出す部下。絶句してしまった。兵士だけでなく、金も出さないなんて。それじゃあ、もっと色々と足りなくなる。
「……わかった。足りなくなった分は、俺が出す。必要になる額がどれくらいか計算して報告してくれ」
「了解しました」
部下に指示を出して、遠征任務の準備を急いで進める。今回の任務が終わった後にラウンド家へ出向いて、ちゃんと話し合わなければいけないな。これは、大問題だ。
婚約を破棄しただけで、こんな嫌がらせをされるとは思わなかった。もしかしたら、ルシールが裏で手を回しているのかもしれない。そうだとしたら、本当に厄介な女だ。婚約を破棄して、アルメルを選んだのは間違いでなかったことを再確認した。
この件については、後で絶対にラウンド家とルシールに抗議してやる。
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