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第5話 顔合わせ
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新たな婚約相手が決まって、顔合わせを行うことになった。
お父様が付き添いで一緒に来てくれて、私は緊張しながら王宮へ向かう。
「大丈夫、何も心配することはないよ」
「はい、お父様」
優しく微笑みながら、私の頭を撫でてくれるお父様に安心して、少し肩の力が抜けた。
馬車から降りると、すぐに案内係の方が来て謁見の間まで案内された。扉を潜ると国王陛下が待ち構えていて、その横に青年が立っていた。
あの方が、私の新しい婚約相手のオディロン様。会話を交わしたことはないけれど、お見かけしたことはある。
「よく来てくれた、アルベール」
「お招きいただき、ありがとうございます」
お父様が国王陛下に挨拶をして、私もそれに倣う。すると陛下は、私の方に視線を向けてきて、申し訳ないという気持ちが伝わってくるような表情を浮かべた。
「エレオノール嬢には、私の愚かな息子が申し訳ないことをした。改めて謝罪させてほしい」
「いえ、そんな! どうぞ、お気になさらないでください」
私がそう言うと、国王陛下は安堵したように息を吐いた。それから、ちらりと横に居るオディロン様を見た。
「オディロン、挨拶しなさい」
「はい、父上」
国王陛下に促され、オディロン様が一歩前に出た。私よりも背が高く、整った顔立ちをしている金髪碧眼の美男子だった。体も鍛えていているようで、がっしりとした体型をしていた。目の前に立たれると、かなりの威圧感がある。
「初めまして、エレオノール嬢。オディロンと申します」
「こちらこそ、初めましてオディロン様」
簡単な挨拶を終えた後すぐに、私とオディロン様の2人は別の部屋に案内された。侍女と執事が数名ほど控えている部屋で、向かい合って座る。お茶が用意させれて、それを飲んで一息つく。
2人きりにされて何を話そうか考えていたら、先に口を開いたのはオディロン様の方だった。
「婚約の話を受けてくれて、ありがとう。兄があんなことをして、君には酷いことをしたと聞いている。そんな奴の弟と、再び婚約するなんて嫌じゃなかったかい?」
「いいえ、そんなことはございませんわ」
そう答えると、オディロン様はホッとした様子で笑った。そして私のことをジッと見つめる。その視線が少し恥ずかしくて、つい目を逸らせてしまった。
視線を戻せないまま、私は彼との会話を続ける。聞いておきたいことがあった。
「オディロン様も、私のような女と婚約するのは、不本意ではないのですか?」
「いいや、そんなことはないさ。君のような可愛らしい女性と婚約できて嬉しいよ」
「……ッ!」
私の質問に彼は即答してくれた。嘘偽りを感じない、本心だと思えるような力強い言葉。だけど、
可愛いなんて言われて、顔が熱くなった。もっと、目を合わせられない気持ちに。きっと、私の顔は真っ赤になっていると思う。そんなストレートに言ってくるなんて予想外だった。だけど、嫌じゃない。
雰囲気は悪くなさそうな人だと思う。心配していたようなことはなさそうなので、良かった。
お父様が付き添いで一緒に来てくれて、私は緊張しながら王宮へ向かう。
「大丈夫、何も心配することはないよ」
「はい、お父様」
優しく微笑みながら、私の頭を撫でてくれるお父様に安心して、少し肩の力が抜けた。
馬車から降りると、すぐに案内係の方が来て謁見の間まで案内された。扉を潜ると国王陛下が待ち構えていて、その横に青年が立っていた。
あの方が、私の新しい婚約相手のオディロン様。会話を交わしたことはないけれど、お見かけしたことはある。
「よく来てくれた、アルベール」
「お招きいただき、ありがとうございます」
お父様が国王陛下に挨拶をして、私もそれに倣う。すると陛下は、私の方に視線を向けてきて、申し訳ないという気持ちが伝わってくるような表情を浮かべた。
「エレオノール嬢には、私の愚かな息子が申し訳ないことをした。改めて謝罪させてほしい」
「いえ、そんな! どうぞ、お気になさらないでください」
私がそう言うと、国王陛下は安堵したように息を吐いた。それから、ちらりと横に居るオディロン様を見た。
「オディロン、挨拶しなさい」
「はい、父上」
国王陛下に促され、オディロン様が一歩前に出た。私よりも背が高く、整った顔立ちをしている金髪碧眼の美男子だった。体も鍛えていているようで、がっしりとした体型をしていた。目の前に立たれると、かなりの威圧感がある。
「初めまして、エレオノール嬢。オディロンと申します」
「こちらこそ、初めましてオディロン様」
簡単な挨拶を終えた後すぐに、私とオディロン様の2人は別の部屋に案内された。侍女と執事が数名ほど控えている部屋で、向かい合って座る。お茶が用意させれて、それを飲んで一息つく。
2人きりにされて何を話そうか考えていたら、先に口を開いたのはオディロン様の方だった。
「婚約の話を受けてくれて、ありがとう。兄があんなことをして、君には酷いことをしたと聞いている。そんな奴の弟と、再び婚約するなんて嫌じゃなかったかい?」
「いいえ、そんなことはございませんわ」
そう答えると、オディロン様はホッとした様子で笑った。そして私のことをジッと見つめる。その視線が少し恥ずかしくて、つい目を逸らせてしまった。
視線を戻せないまま、私は彼との会話を続ける。聞いておきたいことがあった。
「オディロン様も、私のような女と婚約するのは、不本意ではないのですか?」
「いいや、そんなことはないさ。君のような可愛らしい女性と婚約できて嬉しいよ」
「……ッ!」
私の質問に彼は即答してくれた。嘘偽りを感じない、本心だと思えるような力強い言葉。だけど、
可愛いなんて言われて、顔が熱くなった。もっと、目を合わせられない気持ちに。きっと、私の顔は真っ赤になっていると思う。そんなストレートに言ってくるなんて予想外だった。だけど、嫌じゃない。
雰囲気は悪くなさそうな人だと思う。心配していたようなことはなさそうなので、良かった。
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