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第4話 屋敷で大人しくしながら

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 お父様に命じられた通り、私は屋敷から出ないで静かに過ごしていた。どうやら、婚約破棄の件で他にも色々と問題が起きているらしくて、その事態が落ち着くまではしばらく大人しくしていなさいとのことだった。

 屋敷の中で私は、王妃教育で学んだことを復習していた。

 せっかく習得した技術や知識を無駄にしたくないと思って、空いた時間を有効活用することにしたのだ。あれだけ辛く苦しい授業の数々を頑張って乗り越えてきたのだから、学習を止めて腕を衰えさせて、失うなんてことはしたくなかった。

 王太子から婚約破棄された私が今後、習得した技術や知識を活用する機会が訪れるのかどうか、分からないけれど。

 幼い頃から今まで必死に学んできたというのに、全て意味がなくなってしまうのは辛すぎる。耐えられそうにない。あんなに頑張ってきたのに、無駄になるなんて。

 暗くなりそうな気持ちを振り払うためにも集中して、腕を鈍らせないように復習を続けた。いつか、活用する機会が巡ってくるはずだと信じて。



 そうして、しばらく経った頃。色々な噂が耳に入ってきた。

 王族や大貴族の婚約関係が見直されることになり調査が行われた結果、何十人もの不適切な関係が発覚したそうだ。婚約を結んだまま不誠実なことをしているような者が、ジェラルド様以外にも居たらしい。

 そんなに多くの人達が、婚約者以外の異性と不誠実な行為をしていただなんて驚きだった。

 皆、よく浮気するような余裕があるわね、と思った。私は、王妃教育が大変だったので、そんな余裕なんてない。余裕があったとしても、浮気なんて絶対にしたくないけれど。浮気するような者の気持ちが理解できなかった。

 そんなに恋って、良いものなのかしら。自分の家や立場を犠牲にして、婚約相手の人生も狂わせるようなことをしてまで、したいものなの?

 私には理解できない感覚。理解したくもない感情。けれども万が一、そんなことに狂わないよう私も気を付けないと。今回の件を目の当たりにして、そう感じた。



 そんな事がありながら、更に月日が経って――。

 私の新しい婚約相手が決まったそうだ。その相手というのが、継承権第三位であるオディロン様。私よりも一つ年下の男性。

 オディロン様にも婚約相手が居たらしいのだけれど、例の件により解消されたそうだ。それで、次の婚約者を早急に決めることになり、私に白羽の矢が立った。

 私なんかで良いのかしら。もっと若くて経歴に傷のない、相応しい相手が居そうだけれど。

 もしくは、酷い相手なのかもしれない。例えば、性格の悪い人とか。今まで何度かお見かけすることはあったけれど、言葉を交わしたことは一度もない。だから実際に顔を合わせて、話してみないとどんな相手なのか分からない。悪い噂は聞いたことがないけれど、不安ではある。

 ジェラルド様と比べて酷くなければ、別に構わないのだけれど……。
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