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第26話 協会の仕事
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本日も協会に依頼された仕事に取り組む。舞い込む依頼の量も増えてきており、私も率先して取り組んでいた。トップの仕事は机の上だけじゃない。現場の仕事にも積極的に参加することで、みんなの負担を減らしたいと考えていた。
先日、町はずれの農場にモンスターの群れが押し寄せた。
夫と数名の作業員が必死で防戦するも、怪我を負ってしまったそうだ。モンスターは畑を荒らし、収穫間近だった農作物を踏みにじった。
一家の生活を支える大切な農作物が、一瞬にして台無しになってしまったのだ。
怪我を負った夫たちは、満足な治療も受けられない。妻は神殿に助けを求めたが、法外な報酬を要求されて途方に暮れた。
どうしようもなくなった妻は、協会を訪れた。
「モンスターを退治して、夫たちを助けてください。それから、できれば畑も。お支払いできるお金は少ないですが、どうかお願いします!」
妻は泣きながら協会に助けを求めてきた。この窮状を見過ごすことはできない。依頼を快諾する。
「モンスターは私たちに任せてください。怪我人の治療と、畑の修繕もします」
「本当ですか? ありがとうございます!」
妻は涙を流して、何度も頭を下げた。
ということで、農場に足を運んだ私達。モンスターの退治と怪我人の治療も完了した。
それから、お願いされた農地の修繕にも取り組む。
「これは……!」
荒らされた畑を見渡して、私は愕然とした。モンスターによって引き起こされた被害は、予想以上に酷かった。かなりの重労働になりそうだ。やるしかないわね。
「ノエラ様、そんな雑務は私たちにまかせてください!」
エミリーが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫よ、エミリー。私だって、みんなと一緒に汗を流したいの」
「でも......」
「何もかもを任せきりにするのは、リーダーとして失格よ。時には、こうやって体を動かす労働もしていかないと」
私はエミリーに笑顔を向けた。彼女の不安げな表情が、少しずつ和らいでいく。
「ノエラ様がそう言うなら、私も一緒にがんばります!」
「ええ、そうしましょう。こうして働いた後のご飯は、きっと最高においしいわよ」
私たちは力を合わせて、しばらく黙々と作業を進めていった。
「ノエラ、少し休憩しないか?」
ふとジャメルが近づいてきて、私に声をかける。
「ありがとう、ジャメル。でも、もう少しだけ続けさせて」
「無理するなよ。みんな、君の健康が何より心配なんだ」
ジャメルの優しい口調に、思わず頬が緩んでしまう。教会に居た頃も、いつも彼に心配されていた。でも、あの頃よりも言い方は柔らかくて優しい。前は、本当に大変だったから。いつまでも終わらない仕事を処理し続けて、ちょっとでも休んだら更に溜まってしまう。だから休めなかった。
でも今は、少し余裕がある。だからこそ、ちゃんと休んで心配させないように気をつけないといけないわね。
「わかったわ。じゃあ、少しだけ休憩させてもらうわね」
その言葉に、ナディーヌが駆け寄ってきた。
「ノエラ様、お茶を淹れてきました! これで疲れが和らぐと思います」
さっきまで一緒に作業していた彼女が休憩するのに飲み物を用意してくれたようだ。ありがたい。
「ありがとう、ナディーヌ。あなたの淹れてくれるお茶は、とっても美味しいのよ」
エミリーたちも一緒に休む。ほっと一息つきながら、私は改めて仲間たちの顔を見渡した。
こんなに温かく見守ってくれる仲間がいる。本当に幸せだと、心から思う。これからも協会のために、そしてみんなのために、全力で頑張ろう。
私は、そう心に誓うのだった。
先日、町はずれの農場にモンスターの群れが押し寄せた。
夫と数名の作業員が必死で防戦するも、怪我を負ってしまったそうだ。モンスターは畑を荒らし、収穫間近だった農作物を踏みにじった。
一家の生活を支える大切な農作物が、一瞬にして台無しになってしまったのだ。
怪我を負った夫たちは、満足な治療も受けられない。妻は神殿に助けを求めたが、法外な報酬を要求されて途方に暮れた。
どうしようもなくなった妻は、協会を訪れた。
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「本当ですか? ありがとうございます!」
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それから、お願いされた農地の修繕にも取り組む。
「これは……!」
荒らされた畑を見渡して、私は愕然とした。モンスターによって引き起こされた被害は、予想以上に酷かった。かなりの重労働になりそうだ。やるしかないわね。
「ノエラ様、そんな雑務は私たちにまかせてください!」
エミリーが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫よ、エミリー。私だって、みんなと一緒に汗を流したいの」
「でも......」
「何もかもを任せきりにするのは、リーダーとして失格よ。時には、こうやって体を動かす労働もしていかないと」
私はエミリーに笑顔を向けた。彼女の不安げな表情が、少しずつ和らいでいく。
「ノエラ様がそう言うなら、私も一緒にがんばります!」
「ええ、そうしましょう。こうして働いた後のご飯は、きっと最高においしいわよ」
私たちは力を合わせて、しばらく黙々と作業を進めていった。
「ノエラ、少し休憩しないか?」
ふとジャメルが近づいてきて、私に声をかける。
「ありがとう、ジャメル。でも、もう少しだけ続けさせて」
「無理するなよ。みんな、君の健康が何より心配なんだ」
ジャメルの優しい口調に、思わず頬が緩んでしまう。教会に居た頃も、いつも彼に心配されていた。でも、あの頃よりも言い方は柔らかくて優しい。前は、本当に大変だったから。いつまでも終わらない仕事を処理し続けて、ちょっとでも休んだら更に溜まってしまう。だから休めなかった。
でも今は、少し余裕がある。だからこそ、ちゃんと休んで心配させないように気をつけないといけないわね。
「わかったわ。じゃあ、少しだけ休憩させてもらうわね」
その言葉に、ナディーヌが駆け寄ってきた。
「ノエラ様、お茶を淹れてきました! これで疲れが和らぐと思います」
さっきまで一緒に作業していた彼女が休憩するのに飲み物を用意してくれたようだ。ありがたい。
「ありがとう、ナディーヌ。あなたの淹れてくれるお茶は、とっても美味しいのよ」
エミリーたちも一緒に休む。ほっと一息つきながら、私は改めて仲間たちの顔を見渡した。
こんなに温かく見守ってくれる仲間がいる。本当に幸せだと、心から思う。これからも協会のために、そしてみんなのために、全力で頑張ろう。
私は、そう心に誓うのだった。
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