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第25話 期待外れ ※エリック王子
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例の冒険者たちが新たな組織を立ち上げた。協会と名乗り、活動をスタートさせたようだ。そんな新たな組織に、神殿から追い出された者を受け入れさせる。俺が間に入り、人材の移動を手助けしてやった。彼女も、ありがたく思っただろう。感謝しているはず。
協会が大きくなるのは良いことだ。どんどん大きくなってほしい。いずれは、俺の力になるはずだから。傲慢で資金を無駄にする神殿と違う、新たな頼りにできる組織が必要だった。
手を組んでおいて良かった。最初の謁見の場での選択は、間違いではなかったな。苛ついたけれど、あの時に交渉をダメにしなくて良かった。焦って彼女に接近したい気持ちを抑えて正解だった。
この先、安泰だと思っていた。これから王になる俺にとって、心強い味方が出来たと思っていたのに。
しばらく協会との付き合いが続いて、不満が出てきた。俺が気になっている彼女が、話し合いの場に一度も出てこない。来るのは、あの年老いた男。しかも、非常に手強い男だ。交渉を任せている大臣が、簡単に手玉に取られていた。
いつの間にか相手に有利な条件ばかり引き出されて、その内容で承諾してしまった大臣。彼は無能すぎる。だが、他に任せられる奴が居ない。どうにかして、この状況を打開してもらわないと困る。そうしてくれると信じて任せているというのに。
庶民の間でも、協会の人気が上がっているらしい。
神殿から流してやった人員についても、なぜか全て協会の手柄になっていた。俺の動きは話題にならず、捨てられそうになっていた神官は協会で保護されたことに感謝していた。
協会は人道的な行いであると、庶民からの評価が上がる結果に。だが王国は、特に得るものはなかった。俺が動いてやったのに、感謝しているものが居ないだと。
いや、協会のトップになったという彼女は感謝を感じているはず。それだけでも、動いてやった価値があったはず。まずは、トップとの繋がりを深める。そのために。
「どうにかして、彼女を交渉の場に引っ張り出してこい。手段なら、いくらでもあるだろう」
「ですが、協会は今とても忙しいそうで。組織のトップであるノエラ殿を連れてくるのは難しいと。ジャメル殿には全権を委任されていると言っております」
「ジャメルなんて男と、交渉する意味などない!」
交渉を任せている大臣に、彼女を連れてくるように言う。しかし、彼は俺の要望を叶えるのは無理だと言ってきやがった。次期王である俺の願いを断るとは。
お前の得意だという交渉で、なんとかしろ。これまでに成果を一つも出していないというのに、断るなんてどういうつもりだ。言い訳をする前に、まずは王国のために働け。
そう言いたい気持ちをぐっと抑えて、俺はもう一度命令する。
「とにかく、彼女と話がしたい。王国の将来にも関係あるかもしれない、大事なことなんだ」
「……わかりました、もう一度ジャメル殿に話してみます」
そう言い残して、大臣は去っていった。
くそっ。どうして、こうなってしまったのか。協会の力を手にれて、神殿に対する抑止力を持つ。問題が起きたときに対処させる。そういう考えだったのに。
期待していたような結果を、まだ得られていない。早く、なんとかしないと。
協会が大きくなるのは良いことだ。どんどん大きくなってほしい。いずれは、俺の力になるはずだから。傲慢で資金を無駄にする神殿と違う、新たな頼りにできる組織が必要だった。
手を組んでおいて良かった。最初の謁見の場での選択は、間違いではなかったな。苛ついたけれど、あの時に交渉をダメにしなくて良かった。焦って彼女に接近したい気持ちを抑えて正解だった。
この先、安泰だと思っていた。これから王になる俺にとって、心強い味方が出来たと思っていたのに。
しばらく協会との付き合いが続いて、不満が出てきた。俺が気になっている彼女が、話し合いの場に一度も出てこない。来るのは、あの年老いた男。しかも、非常に手強い男だ。交渉を任せている大臣が、簡単に手玉に取られていた。
いつの間にか相手に有利な条件ばかり引き出されて、その内容で承諾してしまった大臣。彼は無能すぎる。だが、他に任せられる奴が居ない。どうにかして、この状況を打開してもらわないと困る。そうしてくれると信じて任せているというのに。
庶民の間でも、協会の人気が上がっているらしい。
神殿から流してやった人員についても、なぜか全て協会の手柄になっていた。俺の動きは話題にならず、捨てられそうになっていた神官は協会で保護されたことに感謝していた。
協会は人道的な行いであると、庶民からの評価が上がる結果に。だが王国は、特に得るものはなかった。俺が動いてやったのに、感謝しているものが居ないだと。
いや、協会のトップになったという彼女は感謝を感じているはず。それだけでも、動いてやった価値があったはず。まずは、トップとの繋がりを深める。そのために。
「どうにかして、彼女を交渉の場に引っ張り出してこい。手段なら、いくらでもあるだろう」
「ですが、協会は今とても忙しいそうで。組織のトップであるノエラ殿を連れてくるのは難しいと。ジャメル殿には全権を委任されていると言っております」
「ジャメルなんて男と、交渉する意味などない!」
交渉を任せている大臣に、彼女を連れてくるように言う。しかし、彼は俺の要望を叶えるのは無理だと言ってきやがった。次期王である俺の願いを断るとは。
お前の得意だという交渉で、なんとかしろ。これまでに成果を一つも出していないというのに、断るなんてどういうつもりだ。言い訳をする前に、まずは王国のために働け。
そう言いたい気持ちをぐっと抑えて、俺はもう一度命令する。
「とにかく、彼女と話がしたい。王国の将来にも関係あるかもしれない、大事なことなんだ」
「……わかりました、もう一度ジャメル殿に話してみます」
そう言い残して、大臣は去っていった。
くそっ。どうして、こうなってしまったのか。協会の力を手にれて、神殿に対する抑止力を持つ。問題が起きたときに対処させる。そういう考えだったのに。
期待していたような結果を、まだ得られていない。早く、なんとかしないと。
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