20 / 37
第20話 謁見
しおりを挟む
エリック王子から呼び出された。アンクティワンにも知らせてから準備を整えて、3人の仲間を引き連れて城へ向かった。
城の門番に話しかけると、すんなり中へ案内される。事前に話が通っていたようで、待たされることは一切なかった。
私たちがその部屋に案内されてすぐ、彼は現れた。
「よく来てくれた! 会えるのを楽しみに待っていたよ」
満面の笑みで、大仰な身振りのエリック王子。彼と会うのは、あのパーティー会場以来かしら。また会うことになるとは、思っていなかったわね。
私も笑顔を浮かべて対応する。これも仕事だと思って、割り切る。
「お初にお目にかかります、エリック王子殿下」
礼を失しないように挨拶。神殿で習った礼儀作法を思い出しながら、丁寧に。それに対して彼は笑顔で応えているのだが、どこか胡散臭い顔だと感じる。
私が、見慣れていないだけなのかしら。聖女だった頃、そんな顔を彼は私に見せなかったから。
「どうぞ、座ってくれ」
「失礼します」
テーブルを間に挟んで、向かい合って座る私たち。彼の従者らしき人物が、私たちの前にお茶を運んできた。そして、護衛の騎士が部屋の壁際に立っている。なんとも物々しい雰囲気。
あれぐらいなら、なんとか対処できそうかしら。もしも逃げる場合は、彼らをどうにかしないといけないけれど。
ナディーヌにチラッと視線を向けると、大丈夫だというように小さく頷いていた。彼女の判断でも、問題なさそうね。
でも、部屋の外にも兵士が待機しているかもしれないから。迂闊なことは出来ないわね。万が一の場合は、全力でやる。
「君たちの評判は聞いているよ。とても優秀らしいね」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。まだまだ未熟者です」
謙遜する私の言葉に、楽しそうに笑うエリック王子。そんな反応を見ても、あまり良い印象を受けないのよね。
でも、ちゃんと記憶が消えていることを確認できてよかった。私と初めて出会ったという反応。あれが演技でなければ、魔法の効果はちゃんと発揮している。
思い出すような気配もないし、大丈夫そうね。確認しておきたかった事の一つは、無事に確認し終えた。
「ところで、ギルドを通して私たちを呼び出した理由は一体何でしょうか?」
もう一つの確認。彼と楽しくおしゃべりする気なんて一切ないので、さっさと本題に入らせてもらう。
「君は、最近の神殿の動きについて知っているかい?」
「……いえ、そんなに詳しくありませんわ」
急に神殿のことについて聞いてきたので、ドキッとした。私が聖女だった記憶を思い出した? でも、そういう素振りはない。
「実は、かなり不甲斐ない状況なんだよ。聖女も実力が落ちているようでね」
「はぁ、そうなのですか」
そういう話はジャメルから聞いている。神殿に依頼しても、なかなか動いてくれないとか何とか。特に最近は、依頼の成功率も下がり気味。でもどうしてエリック王子は、それを私に知らせるのか。
「神殿がそういう感じだから、彼女たちだけには任せておけない。そこで、代わりに別の頼れる人たちを探しているんだよ」
そう言って、エリック王子は私たちの顔をじーっと見てきた。私の反応を探るように、じっと。
城の門番に話しかけると、すんなり中へ案内される。事前に話が通っていたようで、待たされることは一切なかった。
私たちがその部屋に案内されてすぐ、彼は現れた。
「よく来てくれた! 会えるのを楽しみに待っていたよ」
満面の笑みで、大仰な身振りのエリック王子。彼と会うのは、あのパーティー会場以来かしら。また会うことになるとは、思っていなかったわね。
私も笑顔を浮かべて対応する。これも仕事だと思って、割り切る。
「お初にお目にかかります、エリック王子殿下」
礼を失しないように挨拶。神殿で習った礼儀作法を思い出しながら、丁寧に。それに対して彼は笑顔で応えているのだが、どこか胡散臭い顔だと感じる。
私が、見慣れていないだけなのかしら。聖女だった頃、そんな顔を彼は私に見せなかったから。
「どうぞ、座ってくれ」
「失礼します」
テーブルを間に挟んで、向かい合って座る私たち。彼の従者らしき人物が、私たちの前にお茶を運んできた。そして、護衛の騎士が部屋の壁際に立っている。なんとも物々しい雰囲気。
あれぐらいなら、なんとか対処できそうかしら。もしも逃げる場合は、彼らをどうにかしないといけないけれど。
ナディーヌにチラッと視線を向けると、大丈夫だというように小さく頷いていた。彼女の判断でも、問題なさそうね。
でも、部屋の外にも兵士が待機しているかもしれないから。迂闊なことは出来ないわね。万が一の場合は、全力でやる。
「君たちの評判は聞いているよ。とても優秀らしいね」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。まだまだ未熟者です」
謙遜する私の言葉に、楽しそうに笑うエリック王子。そんな反応を見ても、あまり良い印象を受けないのよね。
でも、ちゃんと記憶が消えていることを確認できてよかった。私と初めて出会ったという反応。あれが演技でなければ、魔法の効果はちゃんと発揮している。
思い出すような気配もないし、大丈夫そうね。確認しておきたかった事の一つは、無事に確認し終えた。
「ところで、ギルドを通して私たちを呼び出した理由は一体何でしょうか?」
もう一つの確認。彼と楽しくおしゃべりする気なんて一切ないので、さっさと本題に入らせてもらう。
「君は、最近の神殿の動きについて知っているかい?」
「……いえ、そんなに詳しくありませんわ」
急に神殿のことについて聞いてきたので、ドキッとした。私が聖女だった記憶を思い出した? でも、そういう素振りはない。
「実は、かなり不甲斐ない状況なんだよ。聖女も実力が落ちているようでね」
「はぁ、そうなのですか」
そういう話はジャメルから聞いている。神殿に依頼しても、なかなか動いてくれないとか何とか。特に最近は、依頼の成功率も下がり気味。でもどうしてエリック王子は、それを私に知らせるのか。
「神殿がそういう感じだから、彼女たちだけには任せておけない。そこで、代わりに別の頼れる人たちを探しているんだよ」
そう言って、エリック王子は私たちの顔をじーっと見てきた。私の反応を探るように、じっと。
357
お気に入りに追加
934
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
私が妊娠している時に浮気ですって!? 旦那様ご覚悟宜しいですか?
ラキレスト
恋愛
わたくしはシャーロット・サンチェス。ベネット王国の公爵令嬢で次期女公爵でございます。
旦那様とはお互いの祖父の口約束から始まり現実となった婚約で結婚致しました。結婚生活も順調に進んでわたくしは子宝にも恵まれ旦那様との子を身籠りました。
しかし、わたくしの出産が間近となった時それは起こりました……。
突然公爵邸にやってきた男爵令嬢によって告げられた事。
「私のお腹の中にはスティーブ様との子が居るんですぅ! だからスティーブ様と別れてここから出て行ってください!」
へえぇ〜、旦那様? わたくしが妊娠している時に浮気ですか? それならご覚悟は宜しいでしょうか?
※本編は完結済みです。
【完結】「財産目当てに子爵令嬢と白い結婚をした侯爵、散々虐めていた相手が子爵令嬢に化けた魔女だと分かり破滅する〜」
まほりろ
恋愛
【完結済み】
若き侯爵ビリーは子爵家の財産に目をつけた。侯爵は子爵家に圧力をかけ、子爵令嬢のエミリーを強引に娶(めと)った。
侯爵家に嫁いだエミリーは、侯爵家の使用人から冷たい目で見られ、酷い仕打ちを受ける。
侯爵家には居候の少女ローザがいて、当主のビリーと居候のローザは愛し合っていた。
使用人達にお金の力で二人の愛を引き裂いた悪女だと思われたエミリーは、使用人から酷い虐めを受ける。
侯爵も侯爵の母親も居候のローザも、エミリーに嫌がれせをして楽しんでいた。
侯爵家の人間は知らなかった、腐ったスープを食べさせ、バケツの水をかけ、ドレスを切り裂き、散々嫌がらせをした少女がエミリーに化けて侯爵家に嫁いできた世界最強の魔女だと言うことを……。
魔女が正体を明かすとき侯爵家は地獄と化す。
全26話、約25,000文字、完結済み。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
他サイトにもアップしてます。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
第15回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願いします。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄され、聖女を騙った罪で国外追放されました。家族も同罪だから家も取り潰すと言われたので、領民と一緒に国から出ていきます。
SHEILA
ファンタジー
ベイリンガル侯爵家唯一の姫として生まれたエレノア・ベイリンガルは、前世の記憶を持つ転生者で、侯爵領はエレノアの転生知識チートで、とんでもないことになっていた。
そんなエレノアには、本人も家族も嫌々ながら、国から強制的に婚約を結ばされた婚約者がいた。
国内で領地を持つすべての貴族が王城に集まる「豊穣の宴」の席で、エレノアは婚約者である第一王子のゲイルに、異世界から転移してきた聖女との真実の愛を見つけたからと、婚約破棄を言い渡される。
ゲイルはエレノアを聖女を騙る詐欺師だと糾弾し、エレノアには国外追放を、ベイリンガル侯爵家にはお家取り潰しを言い渡した。
お読みいただき、ありがとうございます。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる