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第5話 誰が屋敷の主なのか

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「はぁ? 何言ってるの。なんで私たちが、屋敷を出ていかないといけないのよ?」

 ローレインが私を睨みながら大声で叫ぶ。本気で理解していない様子の彼女に呆れながら、丁寧に説明する。自明の事実を。

「この屋敷は、私のものですから」
「は? 違うわよ! ここは、デーヴィスの屋敷でしょ!」

 馬鹿にした表情で、私の言葉を即座に否定してくるローレイン。どうやら彼女は、それを本気で信じているらしい。まさか、彼が屋敷の主だと思っていたなんて、ね。どういう勘違いなのかしら。

 デーヴィスに視線を向けると、こんな事を言い出した。

「いや、でも……。いずれ、俺のものになるのだろう? だから、ちょっとした言い間違いというか、彼女の勘違いなんだよ。だからシャロット、落ち着いて話し合おうじゃないか。な」

 なぜか私が錯乱しているような物言いで、宥めようとしてくるデーヴィス。彼のそんな態度に腹が立った。

 ローレインもデーヴィスも、どうして人を怒らせるような事を言ってくるのか。ある意味、2人はお似合い。だから、別のところで勝手にすればいい。

「そんなわけないでしょう。この屋敷は、これから先も変わらず私の所有物ですよ」

 将来、この屋敷が自分のものになると思い込んでいたデーヴィスに、そんなわけないと教えてあげる。

 すると彼は、目を大きく見開いて驚きの表情を見せた。

「ど、どういことだ!? 婚約したら、俺がカナリニッジ侯爵家の次期当主になる、って約束じゃなかったのか!? だから、この屋敷も俺のものになるはず……!」
「……ん? そんなこと、約束した覚えはないんですけど」

 また別の勘違い? どれだけ私たちは、情報を共有していなかったのか。それは、私も反省するべき部分ね。面倒だと思ってデーヴィスを放置してきたから。

 でも、そんなライトナム侯爵家だけに有利な条件、普通に考えたら飲むわけないと思うけれど。

 たとえ、カナリニッジ侯爵家に男の後継者が居ないという問題を抱えていたとしても。血が途絶えたわけではないのだから。

 まだ、私がいる。

「し、しかし父上が言っていた! カナリニッジ侯爵家には一人娘しか居ないから、爵位を継承するのは婚約者である俺だと!」

 あぁ、なるほど。そういう理由で勘違いしていたのね。ようやく理解した。勘違いの原因が分かって、私はスッキリした。

 だけど、別の疑念が生まれてしまった。三男を婿として送り込んできたライトナム侯爵家は、カナリニッジ侯爵家を乗っ取るつもりだったのかしら。
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