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第1話 幼馴染から伝えられた婚約破棄
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カナリニッジ侯爵家には、一人娘しか居なかった。それが私、シャロットである。
弟が生まれず、この先も生まれないのであれば跡継ぎ問題をどうするか、誰に家を継がせるのか、何度も話し合いが行われた。
その結果、私が爵位を相続して婿を迎える事に。
ただ、女当主だと他の貴族に低く見られてしまう傾向がある。侯爵家として舐められない為にも、早く実績を作っておく必要があった。
カナリニッジ侯爵家には、優秀な家臣が揃っている。彼らに助けてもらいながら、私は領内を発展させるための仕事に励んでいた。
そして今日も書類の処理に追われている。仕事は大変だが、将来のためにも今から頑張っていた。そんな、ある日のこと。
誰かが、ノックもせず無遠慮に部屋へ入ってきた。そんなことをするのは一人しかいない。私は書類から顔を上げて無礼な人物の正体を確かめた。
「シャロットさん、ちょっといいかしら?」
私の予想した通りの人物が立っていた。私の婚約者であるデーヴィスが連れてきた、ローレインという名の幼馴染の女性。
私は、手元にある書類が見えないように隠しながら答える。
「ローレインさん。何度も言っていますが、部屋に入る前には必ずノックをしてください」
「えー、いいじゃない。それぐらい」
悪びれずに言うローレインを見て、私は溜息をつく。何度注意しても、彼女は聞かないのだ。
ここにあるのは、機密情報ではないけれど重要な書類。見られて困るものでもある。それを、デーヴィスの幼馴染でしかない女に見せるわけにはいかない。
いえ、むしろ見せつけて、情報漏洩を防ぐためを理由に彼女を処分してしまいましょうか。
後々を考えると面倒なことになりそうだから、やりませんけど。
「そんなことよりも、大事な話があるの」
仕事を邪魔しておいて、そんなこと扱いですか。本当に腹が立ちますわね。
苛立ちを隠しながら、私は冷静に対応する。
「大事な話とは?」
「貴女に、お願いを聞いてもらいにきたの」
「はぁ、お願い……?」
こちらの注意は聞かないのに、お願いだけは聞いてほしいんですか。一体どういうつもりなんだろう。呆れている私の反応など気にせず、彼女は言葉を続けた。
「私の大事な幼馴染であるデーヴィスからの婚約破棄を、受け入れてほしいの」
「……はぁ?」
思わず声が出てしまった。ローレインの言葉の意味がよく理解できなかったからだ。
受け入れてほしい、ということは彼が言っているの? 婚約を破棄したい、と。
「デーヴィスとの婚約を破棄、ですか? 彼からは、何も聞いておりませんが」
「いいえ! デーヴィスは、貴女との婚約を破棄したいと言っていたわよ」
「だから、私は何も」
「デーヴィスは言ってたの!」
話を遮るように叫んだローレインの声が大きくて、耳がキーンとなる。
急に、そんな大きな声を出さないでよ。もっと小さな声で話しなさい。迷惑でしょ。
それに、何を勘違いしているのかしら、この女は。
私の屋敷に居候しているだけの女が、一体何の権限があってそんな事を言っているのだろうか。理解不能だった。
婚約の話は、家同士の大事な取り決めであり、関係ない奴が口を挟む権利などない。
私の婚約相手であるデーヴィスの名前を、親しげに呼ぶローレイン。そんな彼女は、デーヴィスの幼馴染だった。彼とは古くからの関係で、とても仲が良いらしい。2人が、友達以上の関係であることも知っていた。それを私は、どうでもいいと放置していた。
私がデーヴィスと婚約した理由は、子作りであって恋愛ではなかったから。跡継ぎ問題を解決する為だけに結んだ縁だと考えている。
だから、ローレインと恋愛しようが男女の交わりをしようが構わないと思っていた。
でも、婚約を破棄するなんて言い出すなら話は別。しかも、それを伝えに来たのがローレイン。
「それは、本当ですか?」
「えぇ、もちろん。嘘じゃないわよ」
ライトナム侯爵家の三男であるデーヴィス。上にいる兄がライトナム侯爵家を継ぐので、デーヴィスは家を出る予定だった。そして、カナリニッジ侯爵家に婿入りするために私と婚約した。
そんな男が、婚約を破棄したいと言い出すなんて。婚約を破棄した後、どうするつもりなのかしら。ライトナム侯爵家に戻っても、彼の居場所はないと思うけれど。
自信満々に語るローレインを見ていると、嘘を言っている様子もない。本当のことかもしれないけど、だとしたらデーヴィス本人から言うべきよね。
自分の幼馴染を使って、婚約者の私に婚約破棄を言い出させるなんて情けないわ。とにかく、本人に事情を聞かないと。
私は、執務室に婚約相手のデーヴィスを呼び出すことにした。
弟が生まれず、この先も生まれないのであれば跡継ぎ問題をどうするか、誰に家を継がせるのか、何度も話し合いが行われた。
その結果、私が爵位を相続して婿を迎える事に。
ただ、女当主だと他の貴族に低く見られてしまう傾向がある。侯爵家として舐められない為にも、早く実績を作っておく必要があった。
カナリニッジ侯爵家には、優秀な家臣が揃っている。彼らに助けてもらいながら、私は領内を発展させるための仕事に励んでいた。
そして今日も書類の処理に追われている。仕事は大変だが、将来のためにも今から頑張っていた。そんな、ある日のこと。
誰かが、ノックもせず無遠慮に部屋へ入ってきた。そんなことをするのは一人しかいない。私は書類から顔を上げて無礼な人物の正体を確かめた。
「シャロットさん、ちょっといいかしら?」
私の予想した通りの人物が立っていた。私の婚約者であるデーヴィスが連れてきた、ローレインという名の幼馴染の女性。
私は、手元にある書類が見えないように隠しながら答える。
「ローレインさん。何度も言っていますが、部屋に入る前には必ずノックをしてください」
「えー、いいじゃない。それぐらい」
悪びれずに言うローレインを見て、私は溜息をつく。何度注意しても、彼女は聞かないのだ。
ここにあるのは、機密情報ではないけれど重要な書類。見られて困るものでもある。それを、デーヴィスの幼馴染でしかない女に見せるわけにはいかない。
いえ、むしろ見せつけて、情報漏洩を防ぐためを理由に彼女を処分してしまいましょうか。
後々を考えると面倒なことになりそうだから、やりませんけど。
「そんなことよりも、大事な話があるの」
仕事を邪魔しておいて、そんなこと扱いですか。本当に腹が立ちますわね。
苛立ちを隠しながら、私は冷静に対応する。
「大事な話とは?」
「貴女に、お願いを聞いてもらいにきたの」
「はぁ、お願い……?」
こちらの注意は聞かないのに、お願いだけは聞いてほしいんですか。一体どういうつもりなんだろう。呆れている私の反応など気にせず、彼女は言葉を続けた。
「私の大事な幼馴染であるデーヴィスからの婚約破棄を、受け入れてほしいの」
「……はぁ?」
思わず声が出てしまった。ローレインの言葉の意味がよく理解できなかったからだ。
受け入れてほしい、ということは彼が言っているの? 婚約を破棄したい、と。
「デーヴィスとの婚約を破棄、ですか? 彼からは、何も聞いておりませんが」
「いいえ! デーヴィスは、貴女との婚約を破棄したいと言っていたわよ」
「だから、私は何も」
「デーヴィスは言ってたの!」
話を遮るように叫んだローレインの声が大きくて、耳がキーンとなる。
急に、そんな大きな声を出さないでよ。もっと小さな声で話しなさい。迷惑でしょ。
それに、何を勘違いしているのかしら、この女は。
私の屋敷に居候しているだけの女が、一体何の権限があってそんな事を言っているのだろうか。理解不能だった。
婚約の話は、家同士の大事な取り決めであり、関係ない奴が口を挟む権利などない。
私の婚約相手であるデーヴィスの名前を、親しげに呼ぶローレイン。そんな彼女は、デーヴィスの幼馴染だった。彼とは古くからの関係で、とても仲が良いらしい。2人が、友達以上の関係であることも知っていた。それを私は、どうでもいいと放置していた。
私がデーヴィスと婚約した理由は、子作りであって恋愛ではなかったから。跡継ぎ問題を解決する為だけに結んだ縁だと考えている。
だから、ローレインと恋愛しようが男女の交わりをしようが構わないと思っていた。
でも、婚約を破棄するなんて言い出すなら話は別。しかも、それを伝えに来たのがローレイン。
「それは、本当ですか?」
「えぇ、もちろん。嘘じゃないわよ」
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そんな男が、婚約を破棄したいと言い出すなんて。婚約を破棄した後、どうするつもりなのかしら。ライトナム侯爵家に戻っても、彼の居場所はないと思うけれど。
自信満々に語るローレインを見ていると、嘘を言っている様子もない。本当のことかもしれないけど、だとしたらデーヴィス本人から言うべきよね。
自分の幼馴染を使って、婚約者の私に婚約破棄を言い出させるなんて情けないわ。とにかく、本人に事情を聞かないと。
私は、執務室に婚約相手のデーヴィスを呼び出すことにした。
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