私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~

キョウキョウ

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第4話 そうすれば彼女も泣いて縋るはず ※フェリベール王子視点

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 パーティーの最中、レティシアに婚約破棄を言い渡した時のことがずっと俺の頭の中で繰り返されていた。

 彼女の冷めた反応は、一体何故なんだろう。彼女は、俺のことを愛していなかったというのか。いやまさか、そんなハズがない。

 婚約破棄を言い渡した後、彼女を愛人として迎えようと思っていたのに。計画した通りには出来なかった。

 彼女の愛情を、軽く試してみるだけのつもりだった。それと、自分の立場について叩き込んでやろうと考えていた。

 結婚する前に、俺達の上下関係をハッキリさせておくために。もちろん俺が上で、レティシアが下。ロザリーをイジメていたという情報を利用して、婚約を破棄すると言ってやれば彼女は焦って下手に出るだろうと予想をしていたのに。

 それが、裏目に出た。

 まさか、あんなにあっさりと引き下がるなんて思っていなかった。イジメを行ったことを、強く否定した。気付いた時には既に、彼女は会場から立ち去っていたのだ。



 ようやくパーティーが終わり、落ち着いて考える時間が出来た。ロザリーと一緒に自室へと戻ってきた俺は、ベッドに腰掛けて考える。

「なんなの、あの人! もうちょっと悔しがったりすればいいのにッ!!」

 レティシアの淡白な反応に、不満そうなロザリー。イジメられていた相手なのに、何故そんなに強気になれるのか。ロザリーの態度と言動に、少し違和感を覚える。

 いや、今までイジメられてきた鬱憤が、かなり溜まっていたのだろうな。それを、予想外な反応で発散しきれなかったから、苛立っているのかもしれない。

 しかし、レティシアの扱いについて、どうしようか。しばらく時間を置いてから、彼女と話し合う場を設ける必要があるかな。

 イジメの件について否定していたけれど、実際はどうなのか。調査をすれば事実が分かると、彼女は言っていたが。

 本気で婚約破棄を受け入れるつもりなのか。抵抗する気は、ないのだろうか。王族との繋がりが断たれてしまうのに、惜しくないのか。

 最近は、関係も良くなってきたと感じていたのに。俺が他に親しくしている女性に嫉妬してイジメてしまうほど、レティシアは俺のことが好きだったんじゃないのか。

 今後、身の振り方について考えているのだろうか。婚約相手が居なくなってから、彼女はどうするつもりなのか。新しい相手を探すのか? 彼女ほどの美貌があれば、すぐ相手が見つかってしまいそうだ。それは、ダメだろう。

 相手が決まってしまう前に、彼女と話しておきたい。そんな時に、ロザリーが何か思いついたらしい。先程まで不機嫌そうだった表情を一変させ、ニヤリと笑う。

「そうだわ! あの人、まだ婚約破棄が本気だって信じてないのよ。フェリベール様が、冗談で言ってるって思ってるんだわ」
「……冗談のつもりは無いが」

 思わず反論してしまう。すると、ロザリーは呆れたように肩をすくめる。そして、こんな提案をしてきた。

「それなら、本気だって信じさせてあげましょうよ」
「信じさせるって、どうやって?」
「新しい婚約相手を見繕ってあげるのよ。そうすれば、あの人も理解するでしょう」
「……いや、しかし」

 美しい彼女を他の誰かに譲り渡すつもりはない。他の女をイジメるような奴らしいけれど、見てくれは王になる自分に相応しい最高級な女性。性格が駄目だとしても、容姿は高く評価できる。そんな女性を、他の誰かに与えるのは勿体なかった。

「スタンレイ辺境伯なんて、彼女にお似合いだと思いませんか?」
「スタンレイ? あの醜男で有名な?」
「そうです!」
「ふむ」

 1度だけ見たことがある。あまりに女性受けの悪い容姿をしているので、辺境から出てくるなと王に命令された男。そんな人物を、レティシアの婚約相手に指名するというのか。

 レティシアも、スタンレイ辺境伯のことを知っているはず。そんな相手を、新たな婚約相手として受け入れるはずがない。きっと、彼女は断るだろう。

 そこまで考えてから、分かった。

 なるほど、そうか。レティシアが断ることを見越して、新しい婚約相手を見繕うということだな。今回の件も平気な顔をして受け入れたが、流石の彼女も慌てるはず。

 絶対に結婚したくないと思うような相手を用意してやれば、俺との婚約破棄の件を撤回してくれと、向こうから言ってくるはずだな。

 そうなれば、レティシアを俺の婚約相手に戻すための話もスムーズに進みそうだ。騒動を起こしたという負い目をチラつかせて、前よりも言うことを聞かせるのが楽になると思う。上下関係もハッキリするし、良いこと尽くめじゃないか。

「わかった。彼女の新しい婚約相手は、スタンレイ辺境伯を指名させる。そのように手配しよう」
「えぇ、そうしましょう!」

 こうして、レティシアの新しい婚約相手が決まった。すぐに彼女は俺に会いに来るだろう。そして今度こそ、泣いて縋るはずだ。
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