32 / 60
第32話 お試しデート1
しおりを挟む
「お待たせしました」
「い、いえ! 全然、待っていないですよ!」
待ち合わせしていた有加里さんと合流する。声をかけると、彼女は緊張した様子で返事をした。
顔を少し赤くして、興奮した様子だ。慣れていないのだろう。そんな彼女の表情を見て、僕は可愛らしいと思った。
「まずは、映画を見に行くんですよね」
「えっと、えっと。そうですね」
今日の予定について聞いてみると、有加里さんが手持ちのメモ帳を確認して答えてくれた。そこに、一日のスケジュールについて書かれているのだろう。
これから僕たちは、有加里さんが動画で話していたデートプランに沿って行動してみる。妄想デートプランというものを実際にやってみて、どう感じるのか試してみることになった。一体どうなるのか。
「これが、今日見ようと思っている映画のチケットです」
「ありがとうございます。じゃあ早速、行きましょうか」
「は、はい!」
有加里さんが事前に用意してくれていた今日のチケットを受け取る。聞いたことがあるタイトル。たしか、今話題になっている恋愛映画かな。普段はラブストーリーの映画を全然見ないから楽しみだな。
映画鑑賞が趣味の麻利恵と一緒に見たりするのは、アクションの映画とかが多い。この前、2人で見に行った映画もアクションの映画だったな。だから今日は、新鮮な気持ちで見れそうだ。
上映時間まで、まだ余裕がある。彼女と並んで歩いて、映画館に向かう。ここから彼女と一緒に電車に乗って、映画館のある街へ向かう予定だ。
まずは近くの駅まで。一緒に歩きながら、僕は彼女の姿をチラリと眺める。
今日のデートのためにお洒落してきてくれたのだろう、有加里さんの服装を見る。白いワンピース姿で、清楚な感じがよく似合っていると思う。長身の女性が多いこの世界で、珍しく僕より身長の低い彼女はとても可愛らしい。見ていて癒されるような雰囲気もある。
「今日の服、とっても似合っていて素敵ですね」
「ほ、本当ですか? 嬉しい……ありがとうございます」
そう言うと、有加里さんはとても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。僕の褒め言葉を聞いて喜んでくれる彼女が愛しく思えた。
「直人くんも、その服すごく似合っていて可愛いと思います」
「ありがとうございます! この新しい服、とても気に入ってるんですよ」
今度は逆に、有加里さんが僕の服装を褒めてくれた。この前、チーさんから買ってもらった新しい服だ。すごく似合うと言われて嬉しかった。
そんな会話を交わしながら、僕らは駅に向かって歩いた。
駅のホームへやってきたところで、隣にいる有加里さんが小さく息をつく。さっきまでは楽しげだった彼女は、申し訳無さそうな顔を浮かべている。
「ごめんなさい。私、車の免許を持ってなくて。電車で移動するなんて面倒よね」
「全然、大丈夫ですよ。学校に通う時とか、電車に乗っているんで」
「あっ、そっか。……でも、近いうちに運転免許は取るつもりだから」
「いいですね。実は僕も、免許を取ろうと思っていて」
「えっ? 直人くんが運転するの?」
「そうですよ。その時は、有加里さんを横に乗せてドライブに行きたいな」
「それは、とっても楽しみ! そっか、そういうドライブデートもアリか……」
有加里さんの表情が明るくなった。楽しい未来について思い描きながら、僕たちはホームに到着した電車に乗り込む。休日の電車は、朝から少し混んでいた。だけど、僕が乗り込むと周りの女性客が遠慮してスペースをあけてくれる。かなり楽に、車両内で過ごすことができた。
「あの、座りますか?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。すぐ近くの駅なので」
「あ、はい」
近くに座っている人が、わざわざ席を譲ってくれようとした。だけど、僕はそれを断る。有加里さんと並んで立ち、駅に到着するのを静かにして待った。
しばらくすると、電車が速度を落としていく。やがて停車してドアが開いた。僕は有加里さんと一緒に電車から降りる。改札を出て、駅の外へと出た。
そこから数分歩くと、目的地である映画館に到着。
「予定の時間、バッチリですね」
「上映時間に遅れなくて、良かった」
上映開始時刻の10分前に到着していた。チケットは既に購入してあるので、見る前の準備をしてからシアターに入場すれば丁度いい時間になるはず。
ここまでスケジュール通りバッチリ進んでいることに、僕は驚いた。これを考えた有加里さんは、遅れなかったことに安堵している。本編が始まる前には予告とかあるだろうから、少しぐらいなら遅れても大丈夫そうだけど。
「飲み物を買ってくるけど、直人くんは何が良い?」
「じゃあ僕は、コーラでお願いします」
「あと、ポップコーンは食べる?」
「はい、食べたいです!」
売店が近くにあるので、そこで飲み物を買うことに。有加里さんから欲しい物を聞かれて、僕はコーラとポップコーンをお願いする。やっぱり、その2つは欲しいよね。麻利恵に教えてもらってから、それが映画を見る時の当たり前になっていた。
これから映画を見る準備を完了して、シアターに入場する。座っている客は、全て女性のようだった。いつも通りで僕以外に、男性の姿は見当たらない。よく見る光景だった。
指定された座席に座り、隣に有加里さんも座る。
「ポップコーンは、えっと、ここに置いて大丈夫?」
「はい、そこで大丈夫ですよ」
僕と有加里さんが座っている2人の間に、購入したポップコーンを置いてもらう。これで、映画を見ている最中に2人で一緒に食べることが出来るだろう。飲み物は、それぞれの座席のドリンクホルダーに置いた。
これで準備は完了だ。これから映画を存分に楽しもう。本編が開始するのを、僕はワクワクしながら待った。
「い、いえ! 全然、待っていないですよ!」
待ち合わせしていた有加里さんと合流する。声をかけると、彼女は緊張した様子で返事をした。
顔を少し赤くして、興奮した様子だ。慣れていないのだろう。そんな彼女の表情を見て、僕は可愛らしいと思った。
「まずは、映画を見に行くんですよね」
「えっと、えっと。そうですね」
今日の予定について聞いてみると、有加里さんが手持ちのメモ帳を確認して答えてくれた。そこに、一日のスケジュールについて書かれているのだろう。
これから僕たちは、有加里さんが動画で話していたデートプランに沿って行動してみる。妄想デートプランというものを実際にやってみて、どう感じるのか試してみることになった。一体どうなるのか。
「これが、今日見ようと思っている映画のチケットです」
「ありがとうございます。じゃあ早速、行きましょうか」
「は、はい!」
有加里さんが事前に用意してくれていた今日のチケットを受け取る。聞いたことがあるタイトル。たしか、今話題になっている恋愛映画かな。普段はラブストーリーの映画を全然見ないから楽しみだな。
映画鑑賞が趣味の麻利恵と一緒に見たりするのは、アクションの映画とかが多い。この前、2人で見に行った映画もアクションの映画だったな。だから今日は、新鮮な気持ちで見れそうだ。
上映時間まで、まだ余裕がある。彼女と並んで歩いて、映画館に向かう。ここから彼女と一緒に電車に乗って、映画館のある街へ向かう予定だ。
まずは近くの駅まで。一緒に歩きながら、僕は彼女の姿をチラリと眺める。
今日のデートのためにお洒落してきてくれたのだろう、有加里さんの服装を見る。白いワンピース姿で、清楚な感じがよく似合っていると思う。長身の女性が多いこの世界で、珍しく僕より身長の低い彼女はとても可愛らしい。見ていて癒されるような雰囲気もある。
「今日の服、とっても似合っていて素敵ですね」
「ほ、本当ですか? 嬉しい……ありがとうございます」
そう言うと、有加里さんはとても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。僕の褒め言葉を聞いて喜んでくれる彼女が愛しく思えた。
「直人くんも、その服すごく似合っていて可愛いと思います」
「ありがとうございます! この新しい服、とても気に入ってるんですよ」
今度は逆に、有加里さんが僕の服装を褒めてくれた。この前、チーさんから買ってもらった新しい服だ。すごく似合うと言われて嬉しかった。
そんな会話を交わしながら、僕らは駅に向かって歩いた。
駅のホームへやってきたところで、隣にいる有加里さんが小さく息をつく。さっきまでは楽しげだった彼女は、申し訳無さそうな顔を浮かべている。
「ごめんなさい。私、車の免許を持ってなくて。電車で移動するなんて面倒よね」
「全然、大丈夫ですよ。学校に通う時とか、電車に乗っているんで」
「あっ、そっか。……でも、近いうちに運転免許は取るつもりだから」
「いいですね。実は僕も、免許を取ろうと思っていて」
「えっ? 直人くんが運転するの?」
「そうですよ。その時は、有加里さんを横に乗せてドライブに行きたいな」
「それは、とっても楽しみ! そっか、そういうドライブデートもアリか……」
有加里さんの表情が明るくなった。楽しい未来について思い描きながら、僕たちはホームに到着した電車に乗り込む。休日の電車は、朝から少し混んでいた。だけど、僕が乗り込むと周りの女性客が遠慮してスペースをあけてくれる。かなり楽に、車両内で過ごすことができた。
「あの、座りますか?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。すぐ近くの駅なので」
「あ、はい」
近くに座っている人が、わざわざ席を譲ってくれようとした。だけど、僕はそれを断る。有加里さんと並んで立ち、駅に到着するのを静かにして待った。
しばらくすると、電車が速度を落としていく。やがて停車してドアが開いた。僕は有加里さんと一緒に電車から降りる。改札を出て、駅の外へと出た。
そこから数分歩くと、目的地である映画館に到着。
「予定の時間、バッチリですね」
「上映時間に遅れなくて、良かった」
上映開始時刻の10分前に到着していた。チケットは既に購入してあるので、見る前の準備をしてからシアターに入場すれば丁度いい時間になるはず。
ここまでスケジュール通りバッチリ進んでいることに、僕は驚いた。これを考えた有加里さんは、遅れなかったことに安堵している。本編が始まる前には予告とかあるだろうから、少しぐらいなら遅れても大丈夫そうだけど。
「飲み物を買ってくるけど、直人くんは何が良い?」
「じゃあ僕は、コーラでお願いします」
「あと、ポップコーンは食べる?」
「はい、食べたいです!」
売店が近くにあるので、そこで飲み物を買うことに。有加里さんから欲しい物を聞かれて、僕はコーラとポップコーンをお願いする。やっぱり、その2つは欲しいよね。麻利恵に教えてもらってから、それが映画を見る時の当たり前になっていた。
これから映画を見る準備を完了して、シアターに入場する。座っている客は、全て女性のようだった。いつも通りで僕以外に、男性の姿は見当たらない。よく見る光景だった。
指定された座席に座り、隣に有加里さんも座る。
「ポップコーンは、えっと、ここに置いて大丈夫?」
「はい、そこで大丈夫ですよ」
僕と有加里さんが座っている2人の間に、購入したポップコーンを置いてもらう。これで、映画を見ている最中に2人で一緒に食べることが出来るだろう。飲み物は、それぞれの座席のドリンクホルダーに置いた。
これで準備は完了だ。これから映画を存分に楽しもう。本編が開始するのを、僕はワクワクしながら待った。
8
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
女男の世界
キョウキョウ
ライト文芸
仕事の帰りに通るいつもの道、いつもと同じ時間に歩いてると背後から何かの気配。気づいた時には脇腹を刺されて生涯を閉じてしまった佐藤優。
再び目を開いたとき、彼の身体は何故か若返っていた。学生時代に戻っていた。しかも、記憶にある世界とは違う、極端に男性が少なく女性が多い歪な世界。
男女比が異なる世界で違った常識、全く別の知識に四苦八苦する優。
彼は、この価値観の違うこの世界でどう生きていくだろうか。
※過去に小説家になろう等で公開していたものと同じ内容です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる