12 / 60
第12話 願望と現実 ※市本花怜視点
しおりを挟む
男の人と恋愛をしたい。そんな、夢が私にあった。自分の夢を叶えるために私は、学生の頃から死ぬ気で勉強して医者になった。そして一生懸命に仕事をして、地位と名誉と財産を手に入れた。
これだけあれば、夢も叶うはずだ。良い男性と巡り合って、楽しい恋愛ができる。そう思っていた。
けれど、現実はそんなに甘くはなかった。今までの人生で、一切モテることはなく今まで来てしまった。
何度か、男性患者の手術を担当したこともある。しかし、それでも恋愛に発展する機会は皆無。患者からは、異性として見られていないようだった。それは、仕方ないことなのかもしれないけれど。
職場では出会いなんてない。プライベートでも男性と出会うことは出来なかった。仕事も忙しいので、さらに出会う機会を失い続けてきたのだろうと思う。
恋愛するような関係を築くことは出来なかったし、せっかく地位と財産を手に入れたというのに、夢を叶えることは不可能だと感じていた。
普段どおりに過ごし続けたら、このまま死ぬまで出会うことなど出来ないだろう。そう考えた私は、公共サービスを利用することにした。
施設の職員との面談を何度か繰り返して、条件とステータスをアピールしていく。
「市本さんと同じぐらいの年頃で仲良くしてくれるような相手を求めている、ということですか」
「はい。できれば、その条件に合うような相手を紹介していただけると」
ここには、数多くの男性が登録しているらしい。それなら、条件に合うような男の人も居るかもしれない。最初の頃は、少しだけ希望があった。
私の求める条件を聞いた職員の表情は、とても険しかった。やはり、難しいということだろうか。職員の反応を見て、私は察してしまった。
「市本さんのプロフィールを確認しましたが、年齢や職業などは特に問題ありませんでした。しかし、この条件で探すとなると……」
ううっ。やはり、キツイ。色々と指摘されて、正直落ち込んでしまった。こんなに厳しいとは思っていなかった。やはり、男性との出会いは難しいのか。親しくなろうとするのは、夢のまた夢のような話だというのか。
職員のアドバイスを聞いて、条件を変えたり緩くしたり、とにかく出会うことから優先していく。何人か男性を紹介してもらって、子作りに挑戦してみた。その後に、どうにかして親しくなろうと努力したのだが、全く上手くいかない。
紹介してもらった男性は、全員が義務的に接してくるだけ。仲良くなるようなチャンスなんて、全くない。
「本日は、よろしくお願いします」
「えっと、はい。よろしくお願いします」
施設の一部屋で簡単な挨拶をした後、行為を始める。数十分ほどで終わる。とても単調で、あっさりとしたものだった。
「お疲れ様でした」
そう言って、すぐに部屋から出ていく彼。それで終わり。こんなの、仲良くなるなんて不可能。
やっぱり、男性と恋愛して、デートをして、一緒に食事を楽しんで、イチャイチャするなんて夢は叶わないのだろうか。諦めるしかないのか。
夢を諦めて、子供を作る。これからは、子育てと仕事に集中する。もしかすると、男の子が生まれてきてくれるかもしれない。そんなことを考えていた。
そんなときに紹介されたのが、彼だった。
「七沢直人さん、ですか……?」
「はい! 彼なら、市本さんの希望を満たしてくれますよ!」
職員から紹介されたのは、私よりもずいぶんと年下の若い男の子だった。
「でも、こんなに若い子だと私のような年上は嫌がるんじゃありませんか? 彼は、まだ学生でしょう? いくらなんでも無理ですよね?」
プロフィールの年齢が本当なのであれば、まだ彼は学生という年頃だ。特に女性に対して拒否反応が強い歳だということを知っている。だから今まで、優先的に条件から外してきた年下の男性。絶対に無理だろうなと思っていたから。それを、職員から猛プッシュされる。
「大丈夫ですよ。彼は女性に対して非常に優しい人なので。それに、年齢差とか気にしませんから安心してください」
「本当に、そうなんですか?」
「大丈夫です。きっと、満足していただけるかと思います」
自信満々に言い切る職員。そこまで言うのであれば、挑戦だけはしてみようかな。今までの経験から、あまり期待はできない。これで駄目なら、きっぱり諦められそうだ。そう思って、思い切って紹介してもらうことにした。
これが最後になるだろう。私は、そう思っていた。
これだけあれば、夢も叶うはずだ。良い男性と巡り合って、楽しい恋愛ができる。そう思っていた。
けれど、現実はそんなに甘くはなかった。今までの人生で、一切モテることはなく今まで来てしまった。
何度か、男性患者の手術を担当したこともある。しかし、それでも恋愛に発展する機会は皆無。患者からは、異性として見られていないようだった。それは、仕方ないことなのかもしれないけれど。
職場では出会いなんてない。プライベートでも男性と出会うことは出来なかった。仕事も忙しいので、さらに出会う機会を失い続けてきたのだろうと思う。
恋愛するような関係を築くことは出来なかったし、せっかく地位と財産を手に入れたというのに、夢を叶えることは不可能だと感じていた。
普段どおりに過ごし続けたら、このまま死ぬまで出会うことなど出来ないだろう。そう考えた私は、公共サービスを利用することにした。
施設の職員との面談を何度か繰り返して、条件とステータスをアピールしていく。
「市本さんと同じぐらいの年頃で仲良くしてくれるような相手を求めている、ということですか」
「はい。できれば、その条件に合うような相手を紹介していただけると」
ここには、数多くの男性が登録しているらしい。それなら、条件に合うような男の人も居るかもしれない。最初の頃は、少しだけ希望があった。
私の求める条件を聞いた職員の表情は、とても険しかった。やはり、難しいということだろうか。職員の反応を見て、私は察してしまった。
「市本さんのプロフィールを確認しましたが、年齢や職業などは特に問題ありませんでした。しかし、この条件で探すとなると……」
ううっ。やはり、キツイ。色々と指摘されて、正直落ち込んでしまった。こんなに厳しいとは思っていなかった。やはり、男性との出会いは難しいのか。親しくなろうとするのは、夢のまた夢のような話だというのか。
職員のアドバイスを聞いて、条件を変えたり緩くしたり、とにかく出会うことから優先していく。何人か男性を紹介してもらって、子作りに挑戦してみた。その後に、どうにかして親しくなろうと努力したのだが、全く上手くいかない。
紹介してもらった男性は、全員が義務的に接してくるだけ。仲良くなるようなチャンスなんて、全くない。
「本日は、よろしくお願いします」
「えっと、はい。よろしくお願いします」
施設の一部屋で簡単な挨拶をした後、行為を始める。数十分ほどで終わる。とても単調で、あっさりとしたものだった。
「お疲れ様でした」
そう言って、すぐに部屋から出ていく彼。それで終わり。こんなの、仲良くなるなんて不可能。
やっぱり、男性と恋愛して、デートをして、一緒に食事を楽しんで、イチャイチャするなんて夢は叶わないのだろうか。諦めるしかないのか。
夢を諦めて、子供を作る。これからは、子育てと仕事に集中する。もしかすると、男の子が生まれてきてくれるかもしれない。そんなことを考えていた。
そんなときに紹介されたのが、彼だった。
「七沢直人さん、ですか……?」
「はい! 彼なら、市本さんの希望を満たしてくれますよ!」
職員から紹介されたのは、私よりもずいぶんと年下の若い男の子だった。
「でも、こんなに若い子だと私のような年上は嫌がるんじゃありませんか? 彼は、まだ学生でしょう? いくらなんでも無理ですよね?」
プロフィールの年齢が本当なのであれば、まだ彼は学生という年頃だ。特に女性に対して拒否反応が強い歳だということを知っている。だから今まで、優先的に条件から外してきた年下の男性。絶対に無理だろうなと思っていたから。それを、職員から猛プッシュされる。
「大丈夫ですよ。彼は女性に対して非常に優しい人なので。それに、年齢差とか気にしませんから安心してください」
「本当に、そうなんですか?」
「大丈夫です。きっと、満足していただけるかと思います」
自信満々に言い切る職員。そこまで言うのであれば、挑戦だけはしてみようかな。今までの経験から、あまり期待はできない。これで駄目なら、きっぱり諦められそうだ。そう思って、思い切って紹介してもらうことにした。
これが最後になるだろう。私は、そう思っていた。
1
お気に入りに追加
450
あなたにおすすめの小説
男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?
かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。
主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。
ここでの男女比は狂っている。
そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。
この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。
投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。
必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。
1話約3000文字以上くらいで書いています。
誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる