芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

46話

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 衝撃の事実に蓮花が驚いていると、圧をかける雲嵐に触れることなく飛は口を開いた。

「それより、どうしてここに?」
「ああ、そうでした。貴方に会いたいと言う方がいらっしゃいまして」
「そうか。そろそろ次が来る頃かと思っていた」

 本来の用事を思い出した雲嵐は先程までの圧をなくし切り替える。雲嵐の言葉を聞いた飛は白の頭を撫でて椅子から立ち上がる。

「蓮花を送ったらすぐに行く。先に向かっててくれ」
「分かりました。――それでは蓮花さん、失礼します」
「あ、はい!」

 雲嵐に声を掛けられた蓮花は開いた口を閉じて返事をする。雲嵐は二人に軽く一礼すると踵を返して行った。


「急に誘ったのにこちらの都合で終わらせてすまない」
「いえ! 白と遊べて私も楽しかったです。うちは動物を飼う余裕はなかったので」

 蓮花は白を撫でながら幼い頃捨て犬を拾って来た時のことを思い出した。昔から家計に余裕がなかったので両親に諭された蓮花は諦めて希望するご近所さんへとその犬を任せた。
 弟妹ができてからは自分が諭す側になり一緒に飼い主を探したものだ。

「王琳の苦労話は私も耳にしたことがある。ご両親がなかなかの曲者だったと」
「お祖母様もお祖父様も悪気がないのが余計にタチが悪いんですよね、全く。」

 亡くなった人を悪く言うのは良くないというが、柳家が被った苦労を考えるとこれくらいは許してもらわなければ割に合わない。

 飛と蓮花は並んでここへ来るまでの道を逆に辿って歩き始める。

 
「父様の話を聞いてたってことは、うちにずっと借金があったって言うのもご存知ですか?」
「ああ、そう簡単に返せない額だということも」

 飛は神妙な面持ちで頷く。蓮花も軽く頷き話を続ける。

「私が生まれた時から借金があるのが当たり前で、どうにかこうにか生活してきました。ここで働き始めたのも少しでも返済の足しになればと思って」
「……そうだったのか」
「この前父様からあと三ヶ月で返済が終わるって言われたんです。――借金が無くなればここで働く理由もなくなります」

 蓮花がそういうと、となりを歩いていた飛の足が止まった。蓮花は少しして気付いて立ち止まる。

「辞めるのか?」
「辞めた方がいいっていうのはわかってるんです。私ももうそろそろ結婚相手を探さないと、いつまでも家に居座ってちゃ邪魔ですし」
「――辞めないでくれ」

 蓮花は飛から出た言葉に驚き彼を見る。飛自身も自分の発した言葉に驚いているようだった。

「あ、いや、できるなら残ってくれれば嬉しい。蓮花とはまだ話し足りないからな」
「飛様……」

 蓮花は飛の言葉が嬉しかった。自分と同じように思っていてくれたのだと。
 

 
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