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第2話 ストラス国

元魔法少女は最強になる為に旅に出る

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ハルト様と一緒に離れの中を探検する。

「お~、畳がある。寝室はベッドなんだ……あ、温泉っ露天風呂ありますよハルト様!」

すごい、露天風呂ついてる!

「うん、良い雰囲気の良い風呂だな。一緒に入ろうな?」

「いえ……パスで」

「ちゃんと湯着を着るぞ?」

湯着…服着て入るのか。

「それならアリ…?でもどうやって体とか洗うんですか?」

「別室のシャワーで洗った後湯着を着て風呂かな」

「透けたりとかないです?ちょっと湯着どんなのかみたい」

部屋に畳んで置いてあった湯着をチェックしてみたら、水着素材な下着を着て上に甚平みたいの着るみたい。これなら大丈夫そう。

「今日はずっと座っていたから体が固まってないか?俺はマッサージを頼みたい。サクラも侍女を呼ぼうか」

「パンフに書いてる本館内の店のがいいなぁ、蒸し風呂とか入れるみたいですよ。私そっち行きたいです」

「じゃあ俺もそこへ行く。蒸し風呂か、初めてだな」

空きがあるか聞こうと思ったら、今日は貸切だから大丈夫だってハルト様が言うので廊下にいた侍女さんに声だけかけて本館に行く準備をはじめる。

「貸切にしてたんですね、部屋いっぱい余ってそう」

「危ない人間が居ないとは限らないしな、旅館内なら好きに歩ける。よし、行こうか」

本館に繋がる廊下を二人で歩きながら、和風な庭を眺める。

「ここは立派すぎるけど、私の世界大体こんな感じなんですよ。懐かしい」

「明日は温泉街を歩いてみるか?ここより雑多で色々ある」

「行きたいです!わー、絶対懐かしい」

温泉饅頭とか食べたい。思いっきり温泉街なんだろうな。

「懐かしいか。サクラのために世界を渡る術を探すべきなんだろうが探したくない」

「うーん、そんなのあるかもわからないし…指輪が魂を見つけたんですよね?こっちから向こうに繋がる何か思い入れのあるものって何もないし、万が一帰れてもなんか殺人犯に狙われてる可能性もゼロじゃないし」

そんなのあるわけないだろうけど。でも時間軸もめちゃくくちゃっぽいしなぁ。

「パパとママにもう会えないのは悲しいけど、あのまま居たら結局死んで悲しませちゃったわけだしわりと割り切ってます」

「……ごめんサクラ。我儘でごめんなさい」

繋いだ手に力が加えられて、庭からハルト様に視線を移す。
めっちゃシュンとしてる。今にも泣きそう。そんなに悪いことしてるって思うなら、ウソでも帰る方法探してるとか言って誤魔化せばいいのに。


「ここはここで楽しいです、死ななくて良かったな~としか思ってないですよ。ホラ、着いた!はい入ってくださーい、じゃあまた後で!マークスさんもまた」

「ハイハイ、あとでね~サクラちゃん」

中に入ったら先客にマークスさんが居たからハルト様をぐいぐい押して預けて女性更衣室に行った。

「なんで私が慰めるハメになっちゃったんだろ」

店員さんに案内されて蒸し風呂に入って、ボケっと疑問に思ったけどマッサージが気持ち良すぎて途中から寝ちゃった。

終わってから起こされて、浴衣に着替えてから外に出る。ハルト様は上手いことマークスさんが誘導したみたいですっかり元どおり、浴衣が可愛い愛してるとうるさかった。


夕食は部屋食でのんびり食べて、小休憩の後露天風呂へ。

「うあ~すごい、夜の露天風呂圧巻」

お風呂のまわりに庭がある。薄暗くライトアップされてて落ち着く感じ。
ハルト様はもう入ってたから、ちょっと離れて私もお風呂に浸かった。服着てるとはいえ二人で入るのって恥ずかしいな。


「外が寒いから長く浸かれて気持ちいいな」

「そうですねぇ……あ~、ホント気持ちいい」

「近くには来てくれない?」

いくら服着てるとはいえ湯船から出てるとこ肌にピタって張り付いてるしなぁ…ピタピタ服のハルト様見るのも恥ずかしい。これで近くに行って抱きしめられたりキスされたら恥ずか死ぬ。

「絶対くっついたりしないから、手だけ繋ぎたい」

「まぁ、そのくらいなら」

嬉しそうにハルト様が近づいてきて、手を繋ぐ。
頭をお風呂のふちにのせて空を見上げて、お湯が流れる音を聞きながらのんびりする。

夜空が綺麗で、顔に当たる冷たい風が気持ち良くて、恥ずかしいなんて気持ちもなくなってきた。


「マークスに言われた」

結構な時間二人とも無言でいたけど、ハルト様が掠れた声で喋りだした。

「謝るのは狡いって。我儘で呼んで、帰す気が全くないんだからそのまま図々しく偉そうにしとけって」

マッサージの時の話?蒸し返すのか。

「誘拐された張本人に気を使わせるなと」

「まぁ…それはその通りかも」

「サクラに悪いと思うのは本当だけど、それを吐露してはいけなかったな。これももう言わない。間違って駄目なことばかり言ってしまって情けない、精進する」

「ん~、言われて嫌な気分になるわけじゃないけど、反応に困るのは確かです」

見上げたまま目を瞑って、ふぅと息を吐く。

「でも、ハルト様思ったこと全部言うじゃないですか。言って、それ違うよってなったら思ってても言わないじゃなくて、本当にもうそう思わなくなるんだろうなって感じだし」

「そうかな…出来ているかな」

「図々しく偉そうに、探したくないから帰す手段探さないってなるハルト様に想像つきます」

くすくす笑いながら横を向いたら、うるうるハルト様もこっちを見てた。

「結局サクラに慰められてるな。甘やかしたいのに、幸せにしたいのにいつも俺ばかりが貰っている」

「えぇー、逆だと思うけど。でも私ハルト様に甘いみたいです」

「甘いな、有難い。そのまま、大らかで甘いサクラでいて欲しい……愛してるサクラ」


そう言ってハルト様は繋いでいた手を上げ、私の手の裏と表両方長めにキスをして、のぼせそうだから先に出ると言ってお風呂を出て行った。


「誘拐問題はこれでとりあえず解決?」

死ぬとこだったこともあってもともとあんまり気にしてなかったけど、まぁ一件落着てことにしとこう。
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