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#9 マナヒコの異能
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綾蔵家乗っ取りを決意するきっかけの一つでもあった俺の異能と言うのは本当に地味でしょうもないのだが、有り体に言えば超直感だ。
自分の行く末が、自分の目的のために何を為すべきかがわかる。
そう言うと大層なもののようにも思えるが、実際、未来予知やサイコメトリーなんかとも違う、かなり曖昧な能力だ。
目的のために避けるべき事象があればなんとなくいやーな気持ちになるし、必要な事象があれば何かを閃いた時のような電撃が走る。それが能力によるものか生理現象なのかは俺の感覚のさじ加減だ。ただ的中率は今のところ9割で、便利に使っているのも確か。
殺しの依頼を受けた時は、その殺しの依頼を成就するために必要な危険は出来る限り避けることができる。
陳のところに行ったのもそう。陳の部下の攻撃や気配を縫って避け、必要な場所に向かう。
ウルフレディが誰でもなく、俺に依頼をしたのもこの能力のためだ。
殺す対象がはっきりしているのであれば、俺以外にも腕の立つ殺し屋や暗殺者はいくらでもいる。
だが、殺す相手が誰かわからなくても、俺はそれが暗殺対象であれば、直感する。
裏付けや証拠は必要ない。直接の下手人でなかったとしても、その対象と関係する人間を見れば、それも直感できる。
必要な情報がありそうなところに行けば、必要な情報を探り当てる。
今回の件について言えば、テキーラ・ウルフの死に関与している人間に会えば直感するし、死に直接関与はせずとも、その死について何か情報を持っている人間に会えばそれもビビッと直感できる、はずだ。
「しかし全て空振り。大丈夫か? 体調不良か」
「ねえよ。仮に風邪だとしても、直感を感じる感度に問題はねえ」
とは言え、ウルフレディの言葉に首をひねるのも事実だった。
「マスターのとこもマフィアもシロ。ヒーロー会社もシロ。銀狼組内部もシロ。……ほんとに自然死なんじゃねえのか」
俺もテキーラ・ウルフが死んだと聞いた時は疑ったことだが、これだけ何も手応えがないと、そうも思う。
「誰かに殺された。それは確かのはずだ……」
心なしかウルフレディの言葉にもキレがない。
「……とりあえず今日のところは私も仕事がある。また何かあれば連絡を寄越せ」
「わかった。俺もちょっと考え直す。陳たち以外の海外組織だとか、警察や公安組織とか……これはザ・ロワイヤルがシロだからないとは思うんだが」
「……任せる。ではまたな」
ウルフレディはそう言って、ボディガードに守られながら車に乗る。
「ふーむ」
俺は伸びをして、携帯端末から自分が調査に当たる前に殴り書いたメモを見直した。
ウルフが死ぬ前と死んで後、何か気になるような動きがないかをニュースなどを見返していたが、特に何か気になるところはなかった。
自然死ねえ。こちらもないとは、言い切れない。ウルフレディは他殺だと言い切ったが、もしかしたら彼女とて、祖父の死を信じたくないだけなのかもしれない。
「……ねえか」
ヒーローコミュニティの連絡板も確認する。ヒーロー達もここ数日は、忙しそうにお互いの活動報告をしている。
ウルフが死んで、小さな犯罪が増えた。確かにウルフは巨悪ではあったが、巨悪ゆえに小さな悪の防波堤になっていたことが事実であったことも痛感する。
「……あ?」
少しだけ、コミュニティの活動報告を見ていて違和感を覚えた。
紅ヤマトの発言が、ここ数日ない。いや、ヒーローの報告に対して激励の言葉をかけたり、日々の事件に対しての提言をしたりはしている。だが、言ってしまえばそんな些事は自動botだってできることだし、本人の保証にはならない。
「……ウルフに続いて、紅ヤマトも姿を消してんのか?」
冗談でつぶやいた独り言だが、それは少し背筋の凍る妄想でもあった。
自分の行く末が、自分の目的のために何を為すべきかがわかる。
そう言うと大層なもののようにも思えるが、実際、未来予知やサイコメトリーなんかとも違う、かなり曖昧な能力だ。
目的のために避けるべき事象があればなんとなくいやーな気持ちになるし、必要な事象があれば何かを閃いた時のような電撃が走る。それが能力によるものか生理現象なのかは俺の感覚のさじ加減だ。ただ的中率は今のところ9割で、便利に使っているのも確か。
殺しの依頼を受けた時は、その殺しの依頼を成就するために必要な危険は出来る限り避けることができる。
陳のところに行ったのもそう。陳の部下の攻撃や気配を縫って避け、必要な場所に向かう。
ウルフレディが誰でもなく、俺に依頼をしたのもこの能力のためだ。
殺す対象がはっきりしているのであれば、俺以外にも腕の立つ殺し屋や暗殺者はいくらでもいる。
だが、殺す相手が誰かわからなくても、俺はそれが暗殺対象であれば、直感する。
裏付けや証拠は必要ない。直接の下手人でなかったとしても、その対象と関係する人間を見れば、それも直感できる。
必要な情報がありそうなところに行けば、必要な情報を探り当てる。
今回の件について言えば、テキーラ・ウルフの死に関与している人間に会えば直感するし、死に直接関与はせずとも、その死について何か情報を持っている人間に会えばそれもビビッと直感できる、はずだ。
「しかし全て空振り。大丈夫か? 体調不良か」
「ねえよ。仮に風邪だとしても、直感を感じる感度に問題はねえ」
とは言え、ウルフレディの言葉に首をひねるのも事実だった。
「マスターのとこもマフィアもシロ。ヒーロー会社もシロ。銀狼組内部もシロ。……ほんとに自然死なんじゃねえのか」
俺もテキーラ・ウルフが死んだと聞いた時は疑ったことだが、これだけ何も手応えがないと、そうも思う。
「誰かに殺された。それは確かのはずだ……」
心なしかウルフレディの言葉にもキレがない。
「……とりあえず今日のところは私も仕事がある。また何かあれば連絡を寄越せ」
「わかった。俺もちょっと考え直す。陳たち以外の海外組織だとか、警察や公安組織とか……これはザ・ロワイヤルがシロだからないとは思うんだが」
「……任せる。ではまたな」
ウルフレディはそう言って、ボディガードに守られながら車に乗る。
「ふーむ」
俺は伸びをして、携帯端末から自分が調査に当たる前に殴り書いたメモを見直した。
ウルフが死ぬ前と死んで後、何か気になるような動きがないかをニュースなどを見返していたが、特に何か気になるところはなかった。
自然死ねえ。こちらもないとは、言い切れない。ウルフレディは他殺だと言い切ったが、もしかしたら彼女とて、祖父の死を信じたくないだけなのかもしれない。
「……ねえか」
ヒーローコミュニティの連絡板も確認する。ヒーロー達もここ数日は、忙しそうにお互いの活動報告をしている。
ウルフが死んで、小さな犯罪が増えた。確かにウルフは巨悪ではあったが、巨悪ゆえに小さな悪の防波堤になっていたことが事実であったことも痛感する。
「……あ?」
少しだけ、コミュニティの活動報告を見ていて違和感を覚えた。
紅ヤマトの発言が、ここ数日ない。いや、ヒーローの報告に対して激励の言葉をかけたり、日々の事件に対しての提言をしたりはしている。だが、言ってしまえばそんな些事は自動botだってできることだし、本人の保証にはならない。
「……ウルフに続いて、紅ヤマトも姿を消してんのか?」
冗談でつぶやいた独り言だが、それは少し背筋の凍る妄想でもあった。
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