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王子ハヤト
しおりを挟むレオさんとハヤト王子が結ばれてから二週間。
レオさん達は僕にハヤト王子との件を隠すのをやめたようで、毎日のように惚気話を聞かせてくる。
「リク。今日、ハヤトが初めて自分からキスしてきたんだ」
「へ、へぇ~。そうなんですか」
「......ところで、お前の周りにハヤトのことを好きって言ってるやつ居ないか?」
「......もし居たら、どうするつもりなんですか?」
そう尋ねるとレオさんはとびきりの笑顔を見せた。
「もちろん、見せつけるに決まってるだろ?」
「やっぱそうですよね......」
「で? 居るのか? 居ないのか?」
「えっと、僕の知ってる限りでは居ないかと」
「......そうか。居たら教えてくれよ? 直ちにな」
「り、了解です」
この二週間で、レオさんに対する評価は地に落ちた。
前は尊敬していたし、いつかレオさんのような人になりたいとすら思っていた。
でも、今は違う。
なりたくない大人は?
と聞かれたら直ぐにレオさんと答えるだろう。
「ねぇ、そこの君」
一人でトボトボと歩いていると、不意に声を掛けられた。
「ハヤト王子!?」
振り向くと、そこにはハヤト王子が立っていた。相変わらず美しい人だ。
「君、名前は?」
「リ、リクです」
「ふぅん、良い名前だね」
「ありがとうございます......?」
なんで話しかけてきたんだろう。……なんか、嫌な予感がする。
「リク君の上司ってさ、レオだよね?」
「は、はい。そうですけど......なにか?」
「レオは、さ。良い体してるんだよ」
「へ?」
突然何を言い出すんだろう、この人は。
「手先も器用だし優しいし、ずっと好きって言ってくれるし」
「は、はぁ」
「だからさぁ、レオは僕の物なんだよ。君が付け入る隙は無いわけ」
......もしかして、牽制されてる?
「あ、あの。僕別にレオさんのこと狙ってるわけじゃないです」
「え?」
「僕、付き合ってる人いますし」
本当はいないけど、こうでも言わなきゃ俺がレオさんを好きだと誤解されたままかもしれないし。そういうことにしておこう。
「ふ~ん、そうなんだぁ」
あ、この目。まだ疑ってるな。
「あ、あの! 僕がレオさんと一緒にいるのはハヤト王子について色々聞いてるからで! 本当にやましい事はないです」
「僕のこと......? レオが君に?」
「はい、今日はハヤト王子からキスしてくれたって。そう言ってました」
「そ、そっか......」
ハヤト王子は顔を赤らめる。
「なんかごめんね。勘違いして」
「いえ、全然大丈夫です」
「でもこれからも、レオのこと絶対好きになっちゃダメだよ」
そう言ってハヤト王子は去っていった。
レオさんに愛されてるハヤト王子のこと、可哀想だとか思ってたけど、この人もこの人だ......
まぁ、うん。幸せならオッケーです。
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