Sub侯爵の愛しのDom様

東雲

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頬を淡く染め、愛らしく微笑むルノーの唇がそっと自身の唇に重なる。
彼の為のSubになりたい…その気持ちが伝わったのか、嬉しそうに頬を綻ばせるその表情を見ているだけで自分も嬉しくて、心が満たされていくのが分かった。
そのまま二度、三度と、触れるだけのキスを繰り返すと、ゆっくりと唇が離れていった。

「ベルは本当に良い子ですね。そんなベルに、ご褒美をあげましょう」
「…ご褒美?」

キスの甘い余韻が残る中、思いがけない発言にキョトリとすれば、彼がシャツのリボンタイをするりと解いた。

「ちょっとだけ頭を上げて下さい」
「ん…」

突然の行動を不思議に思いつつ、言われるがまま頭を浮かせば、しゅるりと首の後ろにリボンが回った。
何をするのだろう…と様子を伺っている間に、顎の下でそれが緩くリボン結びにされ、繊細なレースで縁取られた純白のリボンが首元を飾った。
全裸にリボン、というどこか倒錯的な格好に戸惑いつつ、首に巻かれた真白いそれに指先を伸ばすと、ルノーを見上げた。

「ルゥくん、これは…?」
「collarの代わりのリボンです」
「…collar…?」

初めて口にした単語に、僅かに声が上擦った。
『collar』、それはDomからSubに贈られる、特別な『首輪』のことだ。
ダイナミクス性にとって、それは婚姻の証と同義であり、多くは生涯を誓う相手に贈るのがほとんどだと言われている。

「本物を贈れないのが残念ですが、秘密の関係ですからね。…いつか本物を贈る日まで、それまでは、リボンで許して下さい」
「っ…」

リボンの端にそっと口づけながら、当然のようにcollarを贈ってくれようとするルノーの言葉に、泣きたくなるような感情が込み上げ、唇を噛んだ。
自分よりもずっと知識の豊富な彼が、collarを贈る意味を知らないはずがない。
その上で、『いつか本物を贈る日まで』と言ってくれたことが嬉しくて、でも少しだけ苦しくて、目頭がじんわりと熱くなった。

「やっぱりベルには、レースが似合いますね。とってもお可愛らしいですよ」
「……ありがとう。すごく、嬉しい…ん…」

ありふれた言葉しか言えない自分をもどかしく思いつつ、感謝の気持ちを伝えれば、再び唇が重なり、合わさった境界線から幸福感が溢れ出した。
首に巻かれたリボンは、着けていることを忘れてしまいそうなほど軽いのに、肌を擽るレースはその存在を強く主張する。
今にも解けてしまいそうな緩やかな拘束感と、上質な絹のさらりとした肌触りは、まるでルノーの愛情の形そのもののようで、歓喜に胸が高鳴った。
そのまま咥内を甘く溶かすような口づけに、うっとりと身を委ねること暫く、ふと下半身の違和感に気づき、視線を下げ───ドッと心臓が跳ねた。

視線を送った先、体の中心部では、剥き出しのまま寝ていたはずの性器が僅かに頭を擡げており、まさかの事態に、堪らず絡んでいた舌先を離した。

「っ…、なんで…!?」
「おや、おちんちん勃ってきちゃいましたね」
「やっ、み、見ないで…!」
「かまってあげないから、寂しくなっちゃったんですね。ベルのおちんちんは寂しん坊ですね」
「ち、ちが…っ」

それまでの穏やかな雰囲気から一変、羞恥を煽るような言葉と視線から逃げるように、慌てて股間に手を伸ばし、性器を隠した。
まさか首にリボンを巻かれただけで、嬉しくて勃起するなんて───!
信じられない状況に、顔面が焼けてしまいそうなほど熱くなる。
固くなった性器を必死に押さえ、隠すように太腿を閉じれば、ルノーのクスリと笑う声が聞こえた。
その声に気づき、ルノーに視線を戻したのと、彼がサイドテーブルに置かれていた小瓶を手に取ったのはほぼ同時だった。

「…? それは…?」
「潤滑剤です。ああ、普通に売られているものですから、ご安心下さい」
「潤滑剤…?」

耳に慣れない単語を復唱しながら、ルノーの手の平にすっぽりと収まる小瓶を見つめていると、彼がニコリと微笑んだ。

「それじゃあ、ご褒美もあげましたし、そろそろ続きをしましょうか。ベル、足を開いて、そのまま膝を立てて下さい」
「え…」

にこやかに告げられた一言に、一瞬固まる。
恐らく…いや確実に、局部がよく見えるように、という意味合いで言われたのだろうことは分かったが、それですぐに足を開けるかと言えば、それは別問題だ。
ただでさえ今は真逆の体勢なのだ。ルノーの言う通りにするには恥じらう気持ちが強く、もじりと股を擦り寄せれば、ルノーがすぅっと瞳を細めた。

「恥ずかしがってる姿も可愛らしいですが、言うことが聞けない子はお仕置きですよ?」
「う…」
「それとも、無理やり開かれたいですか? …なんなら、縛ってあげてもいいですよ?」
「しばっ…!?」

予想外の発言にギョッとする。が、もしもこれがプレイ中なら、言うことが聞けなかった罰として仕置きをされるか、本当に拘束されていたかもしれない。
有り得たかもしれない現実に、胸がドキドキと騒ぎだすが、『拘束』という未知の体験に耐えられるような自信など欠片もない。
…とどのつまり、今の自分にできることは、ルノーに言われた通り、大人しく足を開くことだけだった。

「ふ、く…」

羞恥を堪え、震える足を叱咤し、ゆっくりと股を開いていく。
じりじりと開いている様子も、金色の瞳にじっと見つめられ、体がどんどん熱くなる。
恥ずかしさに引きずられ、つい閉じてしまいそうになる太腿にグッと力を入れると、なんとか足を開ききり、膝を立てたまま静止した。

「ベル、おちんちんを隠すいけない手もどかしましょうね」
「うぅ…」

幼な子に言い聞かせる様な優しい言い方も、恥ずかしくて堪らない。
それなのに、ルノーの言葉に従う悦びを覚えてしまった体はひどく従順で、股間を隠す手をゆっくり引くと、濡れたままの性器を彼の前に晒した。
股の間、ぴくんと揺れるペニスに小さく悲鳴を漏らせば、一連の動作をずっと見ていたルノーが嬉しげに相好を崩した。

「よく頑張りました。偉いですよ」
「ん…」

優しい声に褒められ、ぞくりと肌が粟立つ。『恥ずかしい』と『嬉しい』が混じり合い、ときめく胸の高鳴りを抑えられない。
とはいえ、股を開いたまま、性器を自ら晒しているという現実は変わらず、必死に股間から意識を逸らすと、助けを求めるようにルノーを見上げた。

「ルゥくん…」
「そんなに不安そうなお顔をなさらないで。気持ち良いことをしてあげるだけですから、ね?」

安心させるように柔らかく笑んだルノーが、小瓶の蓋を開け、中身をタラリと手の平に垂らす。
ルノーの手の平の上、薄いウイスキー色のトロリとした液体が、光を反射してテラテラと輝いた。

「ベル、手を出して」
「…ん」

その一言だけで、彼のしたいことが分かり、大人しく片手を差し出せば、液体を乗せたルノーの手が自身の手の平にぴたりと重なった。

「ほら、怖いものじゃないでしょう?」
「あ…」

そう言いながら、ルノーが互いの手を密着させたまま、ゆっくりと手の平を動かした。
刹那、合わさった隙間から、くちゅり…と濡れた音が響き、一筋の液体が腕を伝って垂れていった。

「ま、まって、ルゥくん…!」

ぬるつく感触に思わず静止の声が漏れるも、ルノーの手の動きは止まらず、ぐちゅりと響いた卑猥な音に肩が跳ねた。
その音だけでも焦るというのに、合わさった手の平から伝わる感触は擽ったいような淡い快感を生み、更に焦りを加速させる。
ぬるり、ぬるりと肌同士が擦れ合う動きは緩慢なはずなのに、液体ですべらかになった肌の表面から伝わる感触は激しくて、ぞわぞわとした何かが走り抜けるような感覚に、反射的に手を引いてしまう。

「こら、どうして手を引くんです?」
「ひぅ…っ」

咎める口調に、手を引いたまま縮こまるも、ルノーの手の動きは止まらない。
粘着性の液体が、くちゅくちゅと音を立てながら手の平を撫で回す…ただそれだけのことが恥ずかしくて、気持ち良くて、落ち着いていた熱が一気にぶり返した。

「や…、ゃ…っ」
「どうしました? お顔が真っ赤ですよ?」
「だ、だって…」
「ああ、おちんちんも元気になっちゃいましたね」
「へ? えっ、あっ、うそ!」

笑うルノーの視線を辿れば、開いた足の間で性器が完全に屹立し、目を向けた瞬間に、先端からトロリと蜜を垂らした。

「なんで…!?」

視界に映った淫靡な光景に、半ばパニックになりながら反射的に股を閉じれば、繋いでいた手をぎゅうっと強く握られ、ハッと息を呑む。

「…いけない子」
「ご、ごめんなさ…っ」

静かな声に叱られ、慌てて股を開き直せば、ルノーが満足気に瞳を細めた。

「手だけで気持ち良くなっちゃうなんて…ベルは本当に、エッチな子ですね」
「ち、ちがうよ…!」
「違くないでしょう? エッチじゃない子は、手をくちゅくちゅされただけでおちんちん勃ちませんよ」
「うぐぅ…」

ルノーの言葉は正にその通りで、思わず唸り声が漏れる。
彼が触れているのは手だけなのに、どうしてこんなに気持ち良く、恥ずかしくなるのだろう。
戸惑い続ける間も、ルノーと繋がったままの手の平からは、いやらしい音が絶え間なく響き、熱で溶けたように温かくなった液体が、指先から肘までを淫らに濡らした。

「ルゥくん…っ、も、もぅや…っ」
「潤滑剤がどういうものか、分かりましたか?」
「ん、ん…!」

ルノーの問い掛けにコクコクと頷けば、濡れた手が雫を垂らしながら、ゆっくりと離れていった。

(終わった…?)

僅かに痺れる指先を解放されたことにホッとしたのも束の間、ルノーが手にした小瓶を逆さにし、中身が体のあらぬ部位にダパリと落ちた。

「ひっ!?」

潤滑剤の落ちた先は股間部───性器の真上だった。

「うそっ、まって…!」
「ベル、足を閉じたら、本当に縛ってしまいますよ」
「ひ…ゃ、や…」

戒める声に体の自由を奪われ、とぷとぷと零れ続ける液体から逃げることもできない。
そうこうしている内に、潤滑剤がペニスを伝い、睾丸から尻たぶの間をぐっしょりと濡らしていく。

「ふ、くぅ…っ」

ガウンまで滲んだ液体は、確実にベッドのシーツまで染みているだろうが、今はそんなことを気にしている余裕もない。
最後の数滴が、ポタリ、ポタリとペニスに落ちる感覚にすら震える中、空になった小瓶をルノーがサイドテーブルに戻した音で、ようやく強張っていた体から力が抜けた。が、それで安心していられるような状況ではない。

(待ってくれ……それを、にかけたってことは…)

直前まで、手の平の中で卑猥な音を立てていた液体。それが、ペニスから股までを濡らしているということは…

「ちゃんと足を開いたままでいられましたね」
「ル、ルゥく…」
「そのまま、閉じちゃダメですよ」
「やっ、まって、まってくれ! ルゥくん! ル…っ、ひっ、あぁぁっ!」

次に何が起こるかなんて、分かりきっていた。
縋るように傍らに座る彼の服の袖を掴むも既に遅く、くちゅり…という音と共にルノーの手が性器を包み込み、ゆっくりと扱き始めた。

「ひうっ!? やっ、まって! まってぇ…っ!」

やんわりと握られたペニスを、ゆっくりゆっくり、殊更丁寧な手つきで扱く指先に、性急さは微塵もない。
それでも、ぬるりとした液体にまみれた性器を熱い手で扱かれる感覚は、信じられないほど気持ち良くて、開いたままの内腿がブルブルと震えた。

「あぁぁ…っ、だめ…っ、ルゥくん…!」
「うん、何がダメなの?」
「やだ…っ、手…動かしちゃ…!」
「どうして? 気持ち良いでしょう?」
「きもちぃ、けど…っ!」

ルノーの手が性器を上下に扱くたび、くちゅん、くちゅんという音が響き、鼓膜を犯す。
射精するには弱い動きは、ぬるぬるとした感触がより強く伝わり、一層増した射精欲に体がビクビクと小刻みに跳ねた。

「あ、あ、あ、ダメ…ッ、ダメェ…!」
「ふふ、ダメしか言えなくなっちゃいましたね」
「ひっ!? やっ、いあぁぁっ!」

竿を包んでいた指先が、潤滑剤と先走りで濡れそぼった亀頭を撫で回し、敏感な先端を容赦なく責め立てた。
すべらかになった指の腹で尿道の穴を撫で回される感覚は強烈で、背筋をゾクゾクとした快感が駆け抜ける。
自慰行為すら必要最低限だった体には刺激が強すぎる快感に、視界は眩み、漏れてしまいそうな迫り上がる感覚に、いよいよ涙が溢れた。

「イッ…きゅぅ…っ、まって! ルゥくん、漏れちゃうっ、漏れちゃう…!」

足は閉じられない。腰を逃すこともできない。
ルノーに掴まれたままの性器を隠すことも防ぐこともできなくて、快感と混じりあった小さな恐怖に、涙がボロボロと零れた。

「それやだ…っ、漏れちゃう…!」
「…本当に、可愛すぎるのも困りものですね」
「ふはっ、はっ…、はぁ…っ」

吐息と共に呟かれた言葉と同時に、ペニスを扱いていたルノーの手がゆっくりと離れた。
指先からぬとりと垂れた液体は粘着性を増し、少しだけ濁っていた。その濁りが、尿道から漏れた自身の白濁によるものだとすぐに気づくも、恥ずかしがっている暇すらない。

「あ…ゃ…」

自分の意思と関係なく、「もっといじめて」と言わんばかりに勃起した性器が揺れる中、竿を扱いていたルノーの指先が股間の奥へと伸びた。

「ひっ!? やっ…!」

濡れた指先が臀部の隙間、肉の奥の窄まりまで伸びそうになり、堪らず腰を捩る。
まさか、そこに触れるつもりなのか…心の準備も何もできていない状況に、必死になってかぶりを振りながら、ルノーの服の袖を引っ張った。

「まって、ルゥくん…!」
「そんなお顔をしないで下さい。今日はまだ、お尻は弄りませんから、怖がらないで」

眉を下げて笑うルノーが身を屈め、その唇が頬に触れる。
リップ音を伴ったあやすようなキスは優しくて、一瞬の緊張で張り詰めていた空気がゆるりと解けた。
そのままチュッ、チュッと啄むようなキスが頬や目尻に降り注ぐ中、濡れたルノーの手の平がゆっくりと睾丸を撫で、ビクンと肩が跳ねた。

「あっ、や…」
「…嫌?」
「あ…ゃ、や…じゃない…」

刺激に過敏になっているせいか、反射的に言葉が漏れてしまう。
悲しげな表情に顔を曇らせたルノーに、慌てて首を振れば、その表情はすぐに晴れやかなものに変わった。

「怖がらないで。優しく撫でてあげるだけですから」
「ぅ、ん…」

その言葉の通り、睾丸を包み込むルノーの手は、表面をやわやわと優しく撫でるだけだった。
自分ですらまともに触れたことのない部位をルノーの手で撫でられ、羞恥と共になんとも言えない気持ち良さがじわりと広がった。
垂れた潤滑剤で濡れた丸い膨らみに、同じく濡れたルノーの手の平が心地良いほど吸い付く。
射精間近だった睾丸は膨れ上がり、丸々とした柔らかな肉が、彼の手の中で優しく優しく、可愛がるような手つきで遊ばれる。
そうして柔らかな玉を弄られること暫く、股間の付け根にじわじわと熱が集まり始め、もどかしさに立てたままの膝がゆらゆらと揺れた。

「あ…ぁ、ん…」
「ベル、ここ弄られるの気持ち良い?」
「ん…、きもちぃ…」
「! …ふふ、ベルは本当に、エッチな良い子ですね」

ふわふわとし始めた頭で素直に頷けば、ルノーが愛しげに破顔した。
ルノーが嬉しそうに笑っている。蕩けるような愛撫と彼の笑顔に、胸のがきゅうっと鳴き、まるで「嬉しい」と泣くように、勃起したペニスの先から蜜が溢れた。

「あ…」
「ああ…、本当に、気が狂いそうなほど可愛いですね。……これなら、こっちでも気持ち良くなれそうかな」
「…こっち?」

ポツリと落ちたルノーの呟きに、首を傾げる。
『こっち』とはなんのことだろうか…ぽぅっとしたままの頭でルノーを見上げれば、睾丸を擽っていた指先がそろそろと位置を変え、ある部分でぴたりと止まった。

「…?」

そこは睾丸の付け根と肛門の間、股の真ん中、と言えるであろう箇所だった。
性器でも後孔でもない部分に触れられていることを不思議に思うも、弱い力でやんわりと押される感覚は妙に気持ち良く、接した面から伝わるルノーの体温の心地良さも合わさって、ほぅっと熱い息が漏れた。

「気持ち良いですか?」
「ん…、きもちいい…」
「…やっぱり、ベルはエッチな子ですね」
「え?」

金色の瞳を一際輝かせて微笑むルノーに、パチリと目を瞬く。
その声音が、先ほどまでとはどこか違うことに呆けるも、それも一瞬のことだった。


「───ここで気持ち良くなることを覚えて、今日は終わりにしましょうね」


なに、と聞き返す間もなかった。
潤滑剤と自身の性器から垂れた体液でしとどに濡れた股の間───その表面を、ルノーの指先が容赦なく抉った。
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