魔物のお嫁さん

東雲

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(…こう、び……?)

頭がまともに働かない。
『交尾』という単語の意味を正しく理解するより早く、目の前に無数のイボで覆われた触手が現れ、ビクリと肩が跳ねた。

「先ほどまで、お前の雌孔を掻き混ぜていたワタシの手だ。こちらと、、どちらで慣らしてほしい?」
「…は……ぇ…?」
「初めての様だしな。人間達は、夫婦の初めての交尾を初夜と言うのだろう?…ん?違ったか?まぁいい。初めての交尾なのだ、せめてもう少しくらい慣らしてやろう。さぁ、どちらが良い?」

ニコニコと嬉しそうに微笑む魔物の言葉は、理解の範疇を超えていた。
勝手に夫婦にされていることも、当たり前のように性交を求められていることも、そこに選択肢など無いことにも絶句する。

───拒否権が無い。

下手に拒絶したらどうなるか、嫌でも分かる。
延々と蹂躙され、絶頂することを恐怖として叩き込まれた体は怯え、吐く息は震えた。

「っ…、や…まって、くれ……ゃだ…」

だが頭では分かっていても、気持ちは別だ。
咄嗟に口から出てしまった言葉に、魔物がピクリと反応した。

「……嫌?ワタシと交尾するのは嫌か?」
「…っ、あ…ぅ……」

『違う』と言えない。
決して望んでいる訳ではない行為を、強要されているのだということを否定できなかった。
いっそ魔物の毒に犯されて、理性など飛んでしまえば楽だったろうに…そう思ってしまうほど、自分の意思というものが残っていた。

「……そうか。それは残念だ」
「ひっ…!?♡やっ…!まって!!まってく…んあ"ぁ"ぁぁっ!!♡♡♡」

冷えた魔物の声と共に、一度は解放されたはずの手足に再び触手が絡み付き、痛いほどの力で押さえつけられ、足を開かれた。
直後、解れきったアナルに、先ほど目にしたばかりの触手が奥まで入り込み、乱暴に腸壁を擦り始めた。

「ひゅっ!?♡♡あ"っ!♡♡やだ!!やらっ…っ!♡♡まっひぇ…まっでぇ"ぇ!!♡♡♡」

グポッ♡ジュボッ♡と卑猥な音を立てながら腸の奥を叩き、腹の中を引きずり出すように勢いよく引かれ、潰すように前立腺を捏ねる。あまりにも唐突な強い快感に、腰がカクカクと跳ねた。
ジュポッジュポッ♡と一切の手加減がない触手の動きから、魔物の怒りが伝わってきて、快楽とは違う悪寒に体が震えた。

「や"だっ!あ"っ!♡イグ…ッ!♡やだ…っ、やだ!!♡♡ごめんなしゃ…っ♡♡ヒッ…♡ごめんなひゃい…っ!!♡♡♡」
「どうした?嫌なものは仕方ないからな。残念だが、お前にはこのままワタシの餌になってもらおう」
「嫌だっ!イヤ…ッ、まっへ…、お"っ…!♡♡まっひぇ…!ぐちょぐちょ、しないでぇ"っ!!♡♡」

ゾリュゾリュ♡と無数のイボに腹のナカを擦られるたび、何度も絶頂に襲われる。
粘着質な液体がぬるぬると腸壁を滑り、触手が抜き差しされるたび、後孔からぼたぼたと溢れ出す淫猥な液体が羞恥を煽り、『自分は卑猥な行為をしている』のだと強く意識させられた。

「まっで…!♡♡ほんとに…っ、ごめんなさ…っ♡ごめんなしゃい…っ!」
「どうして謝る?ワタシと交尾するのは嫌なんだろう?」
「…ぅ、ひっ…♡嫌じゃにゃ…っ、嫌じゃ、ないぃ…っ!♡♡」

…ああ、本当に理性など飛んで、快楽に忠実なただの獣になれたなら、どれほど楽だっただろう。

「嫌じゃないのか?ワタシと交尾したいか?」
「っ…、する…っ♡ひっ、したい、です…っ!♡♡」
「ナニがしたいのか、ちゃんと言えるか?」
「あ"っ♡♡…交尾っ♡交尾したいっ…!♡♡交尾したいぃ、から…っ、触手でっ、いじめるの、ぉ"っ♡やめてくだひゃっ…んお"っ!?♡♡♡」

ぬぽぬぽと抜き差しを繰り返していた触手が、ぢゅぽんっ♡と乱暴に引き抜かれた。
蕩け切ったアナルの縁がくぱくぱと酸素を取り込むように口を開け、束の間とも言える休息に、腹のナカがピクピクと痙攣する。

「ふぅーっ…、ふぅー…っ、ふぅーっ…♡」
「…素直でないところも可愛らしいが、あまりワタシを怒らせたらダメだぞ?加減が分からなくなってしまうからな」
「はぁ……、は、はぃ…♡」
「もう充分解れている様だが……どうする?ワタシの指でも掻き混ぜてほしいか?」

(…選ばせるつもりなど、ないくせに…)

言外に「それを望め」と言われていることくらい、馬鹿でも分かる。
どうしてそこまで執拗に求めるのか、真意も分からないまま、断れば間違いなく受ける陵辱と拷問から逃げたくて、魔物の望む答えを口にした。

「かき、混ぜて…♡指…指で、かき混ぜて、下さい…っ♡」

羞恥と屈辱に唇を噛む…が、それも一瞬だった。

「『旦那様』だ」
「…え…?」
「お前の夫になるのだから、旦那様と呼べ。名前でもいいが……いや、やはり旦那様が良いな。ほれ、もう一度。『旦那様の指で雌孔掻き混ぜて下さい』と強請ってみせろ」
「…っ!」

顔が、全身が、熱くなる。
自ら淫交を強請らなければ終わらない…いや、強請ったが最後、───理性は「嫌だ!」と叫ぶが、同時に拒む気力は折れ、拒絶したが最後、拷問の末に待っている末路を天秤に掛け、諦めるように言葉を吐いた。

「……くだ、さい…、だ…旦那様の…指で、雌孔掻き混ぜて、下さぃ…っ」

悔しさか羞恥か、もう後戻りできない後悔からか、堪えきれなかった涙が溢れたが、その雫を魔物が驚くほど優しい手つきで拭った。

「泣くな。ほら、ゆっくり掻き混ぜてやるから」
「は…ひっ、は…あぁぁっ…♡♡」

言葉と共に、魔物の指がぬくくっ♡と三本まとまってアナルに埋め込まれ、背が仰け反った。
とろとろに溶けた蜜壺は魔物の長い指をあっさりと飲み込み、柔らかな肉は媚びるようにその指先に絡みついた。

「あぁぁ…っ♡♡やぁぁ…♡♡♡」
「…これはすごいな。熱くてトロトロだ。ふふ、ここにワタシの肉を入れたら、さぞ気持ちが良いだろうな」
「ぅあ…、ッ…♡♡やっ…あっ、そこヤ…ッ♡♡♡」

指が前立腺を押し上げ、グリグリと強く揉み込む。強い刺激に腰が逃げ、堪らず泣き声が溢れた。

「ゃだ…っ、やだ…!やさしく…っ、優しくして…っ」
「うん?優しく撫でられる方が好きか?」
「う…っ、ぅ…!♡しゅき…っ、やさし…優しいのがいい…♡♡」
「いいぞ、可愛い妻のお願いだからな。優しく撫でてやろう」
「は…っ♡♡あっ♡あぁぁ~…っ♡♡♡」

言葉の通り、腹のナカをぐちゅぐちゅと掻き混ぜていた指の動きは緩やかになり、ぬるりぬるりと、ゆっくりと抜き差しする動きに変わった。
人間の指と同じ形をしたそれは、人と変わらぬ体温と肌をしていて、あらぬところでそれを感じてしまっていることに妙な羞恥が込み上げる。
ぬる…♡ぬる…♡と、じっくりと腸壁を撫でる感覚は甘く穏やかで、少しずつ体内に熱が籠り、体温が上がっていくような気持ち良さに勝手に声が漏れた。

「ぁぁ…♡あぁぁ…っ♡♡」
「どうだ?腹のナカを撫でられるのは気持ち良いか?」
「んぁ…あ…っ♡きもひ…っ♡きもちぃ…♡♡」
「ふふ、蕩けた顔をして…お前は本当に可愛いな。ほれ、口を開けて、舌を出せ」
「は…はぁ…っ♡…ぁ……んむ♡♡」

キスをされる───分かっていて、素直に口を開き、舌を差し出した。
生き物としての本能か、ひたすらに犯されたことによる学習能力からか、それとも、敵わないと悟ったことによる諦念か…受け入れてしまうことへの抵抗力も薄れていた。
唇を塞がれ、深く絡んだ舌は熱く、咥内を舐めるように濡らされていく感覚に、鼻から抜ける息にも甘さが混じる。

(きもちぃ…♡)

くちゅくちゅと唾液が混じる音と、ぬちゅぬちゅと腸壁を撫でる音が合わさり、静かな空間の中に粘着質な音と、自身の甘えたような嬌声だけが響く。
口の中を貪るように動く舌も、アナルに埋め込まれた指が柔い肉の壁を撫でるように擽る熱も、脳をぐずぐずに溶かすには充分だった。

「ふ…♡ふぅ……んぅっ♡…ッ、ぷぁっ…♡♡はぁ…っ、きもひ…♡♡ダメ…イッちゃ…♡イク…!♡♡」
「うん?イきそうか?」
「イク…ッ♡イッちゃ…♡♡きもちぃぃ…!♡♡」
「素直に言えて偉いぞ。流石にワタシも限界だ…慣らすのはこれくらいでいいだろう」
「んぁっ♡」

ちゅぽっ♡と糸を引いて、アナルから魔物の指が抜かれる。温かな指先の体温を失った肉孔が、寂しいと鳴くようにヒクついたが、それも僅かな間だった。

「さぁ、交尾の時間だ」
「…っ!」

簡易な服の前を寛げ、晒された魔物の股間に、コクリと息を呑んだ。

(…でかい…)

魔物のペニスとはどれほどグロテクスなものか、戦々恐々としていたが、視界に入ったソレは人間と同じ形をしていて、こんな状況にも関わらず少しだけホッとする。
だがその股間は、細身な体には不似合いなほどの大きさで、色白な肌と同じ色合いであるが故にどこかミスマッチにすら見えた。

(…勃ってる…♡)

他人の、ましてやこれから自分を犯そうとしている魔物のペニスが勃起している姿を見て、妙に興奮している自分がいた。
魔物の催淫液のせいなのだろうが、自身の痴態に雄が興奮していることに、体は悦び、心臓がドクドクと高鳴った。
そんなことない、信じたくない───そう思うのに、開いた股の間、ぷっくりと腫れ、ヒクつくアナルに魔物のペニスをぬるぬると擦り付けられ、それだけで脳が『欲しい』と信号を発してしまった。

「はぁっ♡はぁっ…ぁ…や…♡」
「実はワタシも性器コレを使うのは初めてでな。今までコレが勃起したこともなかったし、捧げ物の精を集めるだけなら他の手で事足りていたんだが…今はお前にワタシの肉を挿れたくて堪らん。こんなのは初めてだ」
「ん…っ♡んぅ…♡」
「…欲しいか?」

ペニスの先、丸々と膨れた亀頭部分をアナルに飲み込ませるように押し付けられ、ギリギリで残っていた理性の箍は呆気なく外れた。

「は…ぁ♡ほし…欲しいです…っ♡」
「うん、ナニが欲しいんだ?」
「はぁ…、ぁ…っ♡だ、旦那様…っ♡旦那様の、勃起した…お肉が、欲しいで───」


───ゴヂュンッッ♡♡♡


「…ッッお"っ!?♡♡♡~~~~~…ッッ!!!♡♡♡♡」

言い終わらぬ内に、太く長い魔物のペニスが後孔に深く挿入され、腸の奥を叩くように突いた。
その一突きだけで目の前には火花が散り、体は絶頂し、全身を引き攣らせながら声にならない嬌声を上げた。

「~~~…ッ!!♡♡♡は…っ、はぁっ…!♡♡はぁっ、ひぃっ!?むり!!♡♡こんなのむりっ…!♡♡お"っ!?♡♡♡」

過ぎた快楽は恐ろしく、体がガクガクと震える。
だが四肢を触手に拘束され、腰を魔物の手で強く押さえられた状態では快楽を逃すこともできず、涙腺が壊れたようにぼたぼたと涙を流しながら、許しを乞うことしかできなかった。

「やだ!!おねが…っ、お願い、しましゅ…っ!♡抜いて…っ♡抜いてくだしゃい…!!♡♡」

また怒りを買うかもしれないなどと考える余裕もない。ただ快感から逃げたくて、震える腰を必死にくねらせた。

「はぁ……、これは…なんとまぁ…なんて気持ちが良いのだろう…」
「うぅ…っ♡ッ…?♡」

恍惚とした表情で、ほんのりと頬を染めた魔物がうっとりと呟く。
その瞳は妙に煌めいていて、繋がったまま、じっとこちらを見つめられ、ドキリと心臓が跳ねた。

「可愛い妻との交尾というのは、こんなにも気持ちが良いものなのだな」
「あ……んぅ♡♡」

言葉と共に、唇が重なる。
唇を喰むような口づけを受けていると、触手に捕われていた両手が自由になり、再び指と指を絡ませるように強く握られ、途端に顔に熱が集まった。

「あ、やぁ…っ♡」
「お前はこうして手を繋ぐのが好きなのだろう?腹のナカがうねって、体温が上がったぞ」
「や…、や…っ♡」
「…好きだろう?」
「んあ"っ!?♡♡」

なぜか妙に恥ずかしく、反射的に首を横に振れば、ズルルッ♡とペニスを引き抜かれ、また勢いよく奥まで挿され、落ち着いていた熱があっという間に再熱した。
パンッ♡パンッ♡と、肉を打ちつけるように、何度も何度も連続で腹の奥を突かれ、その度に絶頂し、繋いだ手を強く握り締めた。

「あ"ぁっ!!♡♡やらっ!♡やら!♡♡ごめんなしゃ…っ!♡♡ごめんなひゃい…っ!♡」
「質問に答えていないぞ?」
「あ"あぁぁっ!!♡♡まっひぇ…!♡♡しゅきっ、しゅきです…っ!♡♡旦那、様と…っ、手繋ぐの…ぉ"♡好きでふ…!♡♡♡」
「手繋ぎ交尾は好きか?」
「あ"っ♡♡イグッ!♡♡イク!♡♡しゅきっ…♡好き…!♡♡旦那様とっ♡手繋ぎ交尾…っ、大好きれ…!♡♡♡んあ"ぁ"あぁぁっ!!♡♡♡」

きちんと答えた。それなのに、尻たぶを打ち付ける腰の強さは変わらず、ジュボッ♡グポッ♡とアナルを乱暴に掻き混ぜる音は一層激しさを増した。
亀頭が奥の柔らかな肉を突くたび、雁首が前立腺を押し潰すたび、腰を引く動きに合わせてアナルの縁が引っ張られるたび、延々と生まれる快感に、頭がどうにかなってしまいそうだった。

「やめでっ!!♡♡もうやめでくだしゃい…!!♡イッてぅ!♡♡ずっとイッてゆ…っ!♡♡ずっと…っ!♡やだ!!もぉやだぁぁ"!!♡♡♡」

途切れない快感は苦痛でしかない。
息すらまともにできない絶頂に、意識が飛びそうになるが、それすら許してもらえない律動に、後から後から涙が溢れた。

「やだぁ…!ッ…!?はっ、やだ!ダメ!ダメェ…!!♡♡」

腰の動きも緩めぬまま、魔物が身を屈め、無言のまま乳首に吸い付いた。

「んやぁぁぁ…っ!♡♡♡らめ…っ!♡♡乳首舐めないでぇっ♡♡!だめ!だめだめだめ!!イッ…くぅ~~~ッ!!♡♡♡」

魔物の口の中で、肥大し、膨れ上がった乳首を転がされ、甘噛みされながら強く吸われる。
ちゅくちゅく♡と吸われながら舌全体で潰すように転がされ、チロチロと弾くように舐められ、意図せずアナルを犯すペニスを締め付けてしまい、更に快感が増す。
体中どこもかしこも気持ち良くて、壊れたように全身が震え、開いた口の端からは涎が垂れた。

「旦那しゃま…!♡旦那ひゃま…っ♡♡もう許して…っ!♡許ひてくだひゃい…!♡♡許じて…!♡♡おかしくなる…っ!!♡♡」
「…そう言って、夫を煽ってることにも気づかぬのだから、お前は本当に可愛い妻だな」
「ア"ッ…♡♡なに…?♡やだっ…やだ、またイグ…っ!♡♡♡またイッちゃぅ…!♡♡」

ようやく口を開いた魔物の声は穏やかで、柔らかに細められた瞳はひどく優しげだった。
言われている言葉の意味を考える頭などとうに無く、縋るようにその瞳を見上げることしか出来なかった。

「何度もイッて、可愛らしいな…っ、…ワタシも、そろそろイキそうだ…っ!」
「んお"っ!?♡♡あ"ぁぁぁっ!!♡♡♡」

言葉と同時に挿入は更に深くなり、腹の奥でグポッ♡グポッ♡と音がするように激しく突かれ、精を吐き出せないはずのペニスからは透明な汁がプシュッ♡と吹き出た。

「ひっ…っあ"ぁ"あぁぁぁっ!!♡♡♡ひぐっ♡いぎゅ…っ♡♡ダメ!だめぇ"っ!!♡♡こわれぅっ♡こわれちゃう!!♡♡♡」
「また可愛らしいことを言って…!」
「やだ!♡もぉやだぁ…!こわい…っ、こわいぃ…っ!イクのこわいぃ!!♡♡」

無我夢中でかぶりを振れば、繋いでいた手が解かれ、代わりに痛いほどの力で抱き締められ、目を見開いた。
突然のことに驚いている間に唇を塞がれ、宥めるような甘いキスを受ける。

「ぅん…んんっ♡…んぁっ…♡」
「こうしていれば、怖くないだろう?」
「…うん…っ、うん…!♡♡」
「うん、良い子だ。…さぁ、ワタシも…っ、もうイくぞ…!」
「あっ!♡あっ、あっ、あっ!♡♡♡」

ぱちゅんっ♡ぱちゅんっ♡と腰を打ち付ける動きが規則的になり、腸のナカをみっちり埋めるペニスが一際膨らんだのが分かった。

「ワタシが達すれば、今日の交尾は終わりだ…っ、交尾なのだから、お前のナカに種付けするぞ?いいな…っ?」

「いいな?」と言われても、そこに拒否権が無いことくらい知っている。
それよりも、今はただこの激しい性交から解放されたくて、『交尾は終わり』という言葉しか頭に入ってこなかった。

「はい…っ♡はい…っ、種付け…!種付けしてくだひゃい♡♡旦那様…!♡♡」
「ああ…お前は本当に…っ!」
「んあ"っ!?♡♡♡んお"ぉ"ぉぉぉっ!!!♡♡♡♡」

ゴチュッ!♡バチュッ!♡と、太くなったペニスに容赦なくアナルを犯され、同時に背骨が軋むほど強く抱き締められ、息苦しさと脳まで突かれるような絶頂に、全身が痙攣する。

「あ"ぁぁ…!!ッッ…♡♡♡ゆるじて…っ♡ゆるしでぇ…っ!♡♡♡」
「…ッ、違うだろう?今は、ワタシの精が欲しいのだろう…?」
「あ"っ!んぁぁ…っ♡♡はっ…、ひゃい♡♡くだひゃい!♡♡旦那しゃまのっ♡精子…っ♡くだしゃい…っ♡♡くだひゃい…!♡♡旦那様ぁ…!♡♡♡」
「ふ…、ああ、初めての交尾で、初めての種付けだ…!きちんと雌孔で、ワタシの精の味を覚えるんだぞ?」
「はいっ♡♡はいっ…!♡覚えましゅ…!♡覚えるから…あ"っ!♡イッてくだしゃ…!♡♡イッて…!♡♡ナカで、出して下さ…っ、アッ!アッ!アッ!イグ!イきましゅ…っ!イク…ッッ!!♡♡♡」
「…っ、くぅっ…!」


───ビュクッビュクッビュクッ♡♡♡


「んお…♡♡あ、あぁ~~~…っっ!♡♡♡」

アナルに埋まったペニスがドクドクと脈打ち、腹の奥に生温かい物が大量に注がれ、溜まっていく感覚に、ぶるりと身が震えた。
魔物の射精と同時に自身も絶頂を迎え、更にはナカに注がれた精液を感じるたびに甘イキが止まらず、言葉にし難いほどの多幸感に包まれる。

「はぁ…♡はぁ…っ♡んぁ…♡」
「はぁ……これが交尾か……ふふ、なんとも気持ちの良いものだな、我が妻よ」
「んっ…♡」

同じように荒い呼吸を吐き出していた魔物と、息も整わぬまま、舌先を舐めるような短いキスを何度も交わす。
それがどうしようもなく気持ち良くて、頭のネジが飛んだようなフワフワとした感覚のまま、与えられる口づけを享受した。

「…ああ、そうだ。うっかりしていた」
「……っ、う…?♡」

ふと唇が離れると、魔物の手が擽るように頬を撫で、不思議な色合いの瞳が真っ直ぐ自分を見据えた。

「ワタシとしたことが、可愛い妻の名を聞くのを忘れていた。名は、なんというのだ?教えておくれ」

まるで、とでも言いたげに、白くすべらかな指先が肌を撫でた。
スルスルと頬を撫でる、たったそれだけの動きすら気持ち良くて、ぐずぐずに溶け、短時間の内に躾けられた脳は、反射的に魔物の望む答えを口にしていた。

「…ダリル…、ダリル……♡」

馬鹿正直に自身の名を告げれば、魔物は嬉しそうに頬を緩めた。

愛しい人ダリルか。良い名だな。ワタシの妻にぴったりだ」
「んぅ♡…んんっ♡」

言い終わると同時に強く抱き締められ、深い口づけを受けた。
長い長いキスだった。自分の咥内の熱さと魔物の舌の熱さが混じり合い、口の中が溶けてしまいそうなほどドロドロになった頃、ようやく唇を解放された。

「ぷはっ…♡はぁっ…♡はぁ…ひぅ…っ♡」
「…愛いヤツめ。接吻だけでイッたな?」
「あっ…♡あ…やぁぁ…っ♡」

射精後も繋がったまま、腹のナカに深く埋められていたペニスを甘く締め付けてしまい、それに応えるように腰を緩く揺すられ、思わず嬌声が漏れた。

「やっ♡ダメ…ッ、交尾したら…、終わりって言った…!」
「…そうだったな。残念だが、これからは毎日、交尾ができるのだから、今は我慢しよう」
「は…ぁん…っ♡」

そう言うと、アナルからゆっくりと魔物のペニスが引き抜かれた。
聞き捨てならない発言が聞こえたが、意外なほどアッサリと魔物は引き下がり、それと同時にようやく体の拘束も解けた。
極限まで体を酷使され、精神を削り、大事なものをいくつも失ったせいか、四肢はくったりと垂れ、意識は今すぐにでも途切れてしまいそうだった。

眠りに落ちるように、閉じてしまいそうな瞼の隙間から見る魔物は、相変わらず美しく───その顔はなぜかとても嬉しそうに、愛おしげに微笑んでいた。


「淫魔だった母は、数多の雄を喰らいながら、最後はたった一人の雄だけを一途に愛し続けて死んだそうだ。愛など一生理解できないものだと思っていたが…今なら母の気持ちも理解できる。───ダリル、愛しい我が妻よ。ワタシが死ぬまで、お前を愛そう」


───ゾクリと、背筋が震えた。
それが恐怖なのか、悦びなのか、それすらもう正常に判断できなくなった頭では、何も答えることが出来なかった。

それでも優しく抱き締められ、頬や首筋に唇を落とされるたび、唇からは熱い吐息が漏れ───そっと寄せられた唇に、甘えるように自ら唇を重ねた。










ダリルが去った都では、時たま思い出すように誰かが彼の噂話をした。

ある日忽然と姿を消してしまったダリルを心配する者もいたが、多少名が知れているとはいえ、ただの一冒険者のことをいつまでも話題に出す者も無く、次第にその存在は皆の記憶からも薄れていった。





約1年後、突然ふらりと現れたダリルに、彼を知る者は皆驚き、同時に声を掛けることすら忘れ、茫然とその姿を見送った。

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