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8.5 それぞれの思い

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(さる高貴なお方ーーゲオルグ視点)


「ハハ!見てくれ、今朝も勃ったぞ!」

あの日以来、毎朝勃ち上がる股間が誇らしくて侍従のヨナタンに見せつけると、

「ゲオルグ様、それは誠に喜ばしいことではございますが、流石にそろそろそのように見せつけるのはおやめくださいませ」

と眉を寄せて注意されてしまった。

「何を言うヨナタン、お前ならわかるだろう?僕のココは今まで全く反応したことがなかったのだから・・・ああ、あの女神様にもう一度お会いしたいなぁ」

僕は目を閉じて、あの晩、僕を死の苦しみから解き放ってくれた美しき女神のお姿を思い浮かべる。

彼女の小さく柔らかい手のひらが、僕の胸を這い回る感触・・・
僕のコレを握りしめながら恥じらうお顔・・・

ああ、思い出すだけでまた達してしまいそうだよ。

「ゲオルグ様、それは魔女の見せた夢だと何度も申し上げているではありませんか」

ヨナタンはウンザリした顔で言う。しかし何度そう言われても、僕は納得できないのだ。

「よし、もう一度あの店に行ってみよう」
「なりません」

「なぜ?」
「それは・・・そう、ゲオルグ様の夢を壊すような現実が待ち受けているからです」


・・・ヨナタンは何か隠しているな?
あの日、僕が朦朧とする意識の中で覚えているのはあの麗しき女神様のことだけ。目覚めたらすでに屋敷まで運ばれていたからな。
なおさらその魔女に会って話を聞かなくては・・・




◇◇◇      ◇◇◇



(騎士クルト視点)


どうしてこうも気になるのか。

コジマが泣いているのを初めて見た。
当たり前か、これまでロクに彼女の顔を見てこなかったのだから。


『私は私なのに、本当の顔が見えるようになったからってなんでそんなに態度変えるの?』


たしかに、その通りだ。
コジマが怒るのも無理ないよなぁ。


はぁ・・・


「おいおい、お前まだマッサージに行ってないのか?」

水飲み場で項垂れていると、またヨハンに声をかけられた。

思わずヨハンの顔をじぃーっと見つめる。

「なっ、なんだよ、気色わりぃな」
「いや、お前って意外と綺麗な顔をしていると思ってな」

「あ?嫌味か?嫌味だな。っていうか、今更かよ。何年一緒にいると思ってんだ」

たしかにな、寄宿学校へ入ってからずっとだから、もう10年以上の付き合いだな・・・




「で、なんで行かないんだ、マッサージに・・・?」

ヨハンは言いながら自身の目の下を撫でる。
ああ、クマが出てるんだろ?知ってるさ、あまり眠れてないからな。


「彼女を怒らせてしまってな・・・」
「は?彼女って?」

「いや、だからコジマだよ」


俺がそういうと、ヨハンはわかりやすく固まった。

「え、コジマってあれだよな?あの、サル顔の・・・?」
「あー・・・・・・まぁな」

一瞬、サル顔ではないと否定しそうになり、口をつぐんだ。
コジマの本来の姿を見るためには、あの魔法を解くだけの関係を築いてからでないと不公平だからな・・・
教えてやるもんか。


「え、まさか惚れたとか?」
「いやっ、バカか、そんなんじゃ・・・」

とか言って否定しつつ、柄にもなく顔が熱くなるのを止められなかった。


「おいおい、マジかよ・・・」


口をポカンと開け、呆れ顔で俺を見るヨハンは「もうなんて声を掛けたらいいのやら」ってブツブツ言っている。


「俺は彼女のことを・・・?」
「知らねーよ!ってかそうなんじゃないの、その顔だとさ」


今度マッサージに行って、俺はどんな顔でコジマに会えばいいんだろうか。


「彼女、何が好きなんだろうな?」
「ってか、マジか・・・お前、めちゃくちゃモテるのになぁ・・・よりにもよって人外かぁ・・・」


呆れ果てて俺を見るヨハンに、言ってやりたい。
コジマは、本当は可愛くて美しい女性なのだと・・・

いやだめだ。
やはり試練を乗り越えて、自らの手で魔法を解くものにしか見れない喜びと驚きがあるのだから・・・


って、そういえばあの男。
鍛治職人のコンラートだったか?

あいつ、コジマにしつこく付き纏っていたな・・・つまり、あいつも知ってるってことだろう?
ウラ婆がいるから変なことはできないだろうが、コジマを泣かしたのはアイツだよな。

なんか、ムカつくな・・・

ムカつくと言えば、もう1人。
コジマの本命って、誰だ?

ああ、なんかモヤっとする。
ちらりと隣に座るヨハンを見たら、


「なんだよ、嫌だよ」
「まだ何も言ってないが、まぁ遠慮するな」

俺はヤツの首根っこを引っ掴んで立ち上がった。


「ぎゃー、勘弁してー」


とか言ってるが、構うもんか。
俺はヨハンを引っ張って、また鍛錬場へと戻った。





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