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聖女の力
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一瞬、何が起こったのか分からなかった。
突然ルカに抱きしめられたかと思ったら、ドスッと嫌な音が響く。
次の瞬間、ルカが力なく私の方へと崩れ落ちてきた。私は彼を受け止めることで精一杯だった。
「ルカ皇太子様!!!」
オレフィスが真っ青な顔で近づいてくる。再び光の玉が近づいてくるのにようやく気づいた私は、頭が混乱しつつも魔力で打ち返した。その光は怪物を一瞬で倒してしまった。
まさかあれが、ルカに当たったの…?
「ルカ、皇太子…さま?」
私は恐る恐る彼の肩を持って起き上がらせようとするが、重くて持ち上げられない。何よりも、手が震えて動かせなかった。
呆然とする私の代わりに、オレフィスが急いでルカを横に寝かせる。
「あ…う、そ…」
治療しなきゃ。
治さなきゃ。
…私に、治せるの?
「マルスティア様!治療を!!」
どう考えても、私にはできない。
私は簡単な治癒魔法しか使えない。
ここにくる前にクリスティアに治癒魔法のコツを教えてもらって、それを実践したからさっきまでは治療ができた。けれどルカのこの傷はどう考えても私ができる範囲を超えている。
クリスティアなら治せるだろうか。
けれど、瞬間移動をするには相手がしっかりと捕まってくれなければ移動できない。
どうして、私なんかを庇ったのよ。
あなたはこの国の皇太子様でしょう?
何で、盾になるようなことを…
こんなの、この物語の流れにはなかったでしょう?
あなたは幸せになるのよ。
そうなってるんだから。
「マルスティア様、どうかお願いします。頼めるのはあなただけなのです」
オレフィスが泣きそうな表情で続ける。
「ルカ皇太子様はいつもあなたのことを気にかけておいででした。宮殿に呼んだことも、最近では本当に悪いことをしたと悩んでおられました。あなたには別の人生があったのではないかと」
そういえば最近は視察に行く回数が減ったと思っていた。それは、あえて私を連れていかなかったのかもしれない。
怪物は一人でも倒せると言ってもいつも必ず側にいてくれた。危ない時は守ってくれた。
忙しいはずなのに食事はいつも一緒にとってくれて、何か不自由はないかと会うたびに気にかけてくれた。
時折、申し訳なさそうな視線を私に向けることもあった。目が合うたびに、優しく微笑んでくれた。
今まで過ごした時間が走馬灯のように私の中を駆け巡っていく。
「…っ、ルカ皇太子様」
涙が頬を伝う。
お願い。
お願いだから、目を覚まして。
〝心から願うのです〟
ふと、クリスティアの声が聞こえた。
それは、治癒魔法について教えてもらった後、クリスティアが私に言った言葉だった。
〝もしどうしても救えない人がいた場合は、その人の手を握って心から生きてほしいと願ってください。心から願うのです。これは聖女にしかできない祈りですが、マルスティア様ならその力を発揮できるはずです。どうか信じてください。あなたは聖女の力を持っています〟
私はルカの手を握り、心から願った。
どうか、目を覚まして。
私はあなたが……
次の瞬間、辺り一面が光の渦に巻き込まれた。
突然ルカに抱きしめられたかと思ったら、ドスッと嫌な音が響く。
次の瞬間、ルカが力なく私の方へと崩れ落ちてきた。私は彼を受け止めることで精一杯だった。
「ルカ皇太子様!!!」
オレフィスが真っ青な顔で近づいてくる。再び光の玉が近づいてくるのにようやく気づいた私は、頭が混乱しつつも魔力で打ち返した。その光は怪物を一瞬で倒してしまった。
まさかあれが、ルカに当たったの…?
「ルカ、皇太子…さま?」
私は恐る恐る彼の肩を持って起き上がらせようとするが、重くて持ち上げられない。何よりも、手が震えて動かせなかった。
呆然とする私の代わりに、オレフィスが急いでルカを横に寝かせる。
「あ…う、そ…」
治療しなきゃ。
治さなきゃ。
…私に、治せるの?
「マルスティア様!治療を!!」
どう考えても、私にはできない。
私は簡単な治癒魔法しか使えない。
ここにくる前にクリスティアに治癒魔法のコツを教えてもらって、それを実践したからさっきまでは治療ができた。けれどルカのこの傷はどう考えても私ができる範囲を超えている。
クリスティアなら治せるだろうか。
けれど、瞬間移動をするには相手がしっかりと捕まってくれなければ移動できない。
どうして、私なんかを庇ったのよ。
あなたはこの国の皇太子様でしょう?
何で、盾になるようなことを…
こんなの、この物語の流れにはなかったでしょう?
あなたは幸せになるのよ。
そうなってるんだから。
「マルスティア様、どうかお願いします。頼めるのはあなただけなのです」
オレフィスが泣きそうな表情で続ける。
「ルカ皇太子様はいつもあなたのことを気にかけておいででした。宮殿に呼んだことも、最近では本当に悪いことをしたと悩んでおられました。あなたには別の人生があったのではないかと」
そういえば最近は視察に行く回数が減ったと思っていた。それは、あえて私を連れていかなかったのかもしれない。
怪物は一人でも倒せると言ってもいつも必ず側にいてくれた。危ない時は守ってくれた。
忙しいはずなのに食事はいつも一緒にとってくれて、何か不自由はないかと会うたびに気にかけてくれた。
時折、申し訳なさそうな視線を私に向けることもあった。目が合うたびに、優しく微笑んでくれた。
今まで過ごした時間が走馬灯のように私の中を駆け巡っていく。
「…っ、ルカ皇太子様」
涙が頬を伝う。
お願い。
お願いだから、目を覚まして。
〝心から願うのです〟
ふと、クリスティアの声が聞こえた。
それは、治癒魔法について教えてもらった後、クリスティアが私に言った言葉だった。
〝もしどうしても救えない人がいた場合は、その人の手を握って心から生きてほしいと願ってください。心から願うのです。これは聖女にしかできない祈りですが、マルスティア様ならその力を発揮できるはずです。どうか信じてください。あなたは聖女の力を持っています〟
私はルカの手を握り、心から願った。
どうか、目を覚まして。
私はあなたが……
次の瞬間、辺り一面が光の渦に巻き込まれた。
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