8 / 26
隠すはずが手違いで倒しちゃいました
しおりを挟む
「あの…それはどういう…?」
私は聞き間違いかと思ってオレフィスに聞き返した。
まさか目の前の怪物を倒せなんて言うはずないわよね。私はあくまでも伯爵令嬢。魔法使いの騎士ではない。これがどれだけ異常な状況なのかは、私にだって理解できる。
オレフィスもよく事態を飲み込めていないようだった。首を傾げつつも、もう一度私に言う。
「この怪物を、倒していただきたいのです。無理を承知なのはわかっているのですが、ルカ皇太子様がマルスティア様にそう伝えるようにと申しつかりまして…」
はい??
ルカ…あの人何を考えているの。
「そんな事、できませんわ」
「やはりそう、ですよね。大変失礼な事をしてしまい申し訳ございません。」
申し訳なさそうな表情のオレフィス。
全くもう、あいつは何を考えているのよ!
オレフィスにこんな顔をさせてっ。
「オレフィス、あなたが謝ることはありません。顔を上げてください」
そうよ、オレフィスが謝ることはないわ。
私はルカに怒り心頭だった。
他の騎士たちも、やっぱりなという表情で私を見ている。
「ほらみろ、やっぱり嘘じゃないか」
「だよな、あんなちっこい御令嬢が怪物を相手になんて出来るわけがないだろうよ」
「しかも俺たちだって捕まえるのに苦労した怪物だぜ」
「だよな。ほらみろ、見ただけで震えてるじゃないか。訓練もあるってのに無駄な時間を食っちまったよ」
何だか、嫌みな奴らね。
確かに騎士様たちからすれば私はちっこいただの御令嬢かも知れないけれど、そこまで言わなくたって良いじゃない。
私だって好きでここに来たわけじゃないのに。震えてるのはオレフィスがドタイプ過ぎて、どうして良いかわからないのよっ(?)
「夜にお呼びだてして申し訳ございませんでした。今日はもう遅いですし、部屋でお休みになってください」
そう言ってオレフィスが私を訓練場から出るように促そうとしたその時だった。
「うわぁっ!!?」
突然、怪物を繋いでいた紐がブチブチっと切れたかと思うと、紐を持っていた騎士たちが勢いよく吹き飛ばされた。
あんなに小さいのに、さすがは怪物。力は強いらしい。
騎士たちは油断していたのか、突然の事態にオロオロとし始める。まさか紐が切れるなんて思ってもいなかったようだ。
「マルスティア様はここから逃げてください!」
サッとオレフィスが私の盾になるように戦闘体制に入った。さすがは騎士団長。他の騎士たちと違い、動きに無駄がない。
行動まで格好いいなんて完璧じゃない。いけない、呑気にキュンとしてる場合じゃないわ。
そうは思うものの、あの怪物の動き見る限り、明らかに怪物の中でも小物にしか見えない。どうして騎士であろう人たちがあんなにも怯えながら戦っているの?
オレフィスの背中の陰に隠れながらも、私は無駄な動きの多い騎士たちにやや苛立ちを覚えてしまった。
さっきまでの嫌味ったらしい雰囲気はどこにいったのよ。
「危ないっ!!」
次の瞬間、怪物がオレフィス目掛けてシュッと光の玉を放ったのだ。
私は咄嗟にオレフィスの前に出て、その玉を跳ね返した。そしてその玉を操るようにして怪物目掛けて撃ち放つ。
「キェーーっ」
それは、一瞬のことだった。
「…」
「…」
「…嘘、だろ?」
怪物は私の反撃を受けてバタンっと倒れた。
あちゃー
これは、やってしまったかも知れない。
「えーと」
全員の視線が私の方へと集まるのがわかる。
「え、えへ?」
可愛く誤魔化してみたが無駄だった。
「あんな速い光の玉を一瞬で…」
「しかも操っているようにも見えたぞ」
「まさか、本当に…」
「信じられない…」
騎士たちは口をあんぐりと開けて私の方を見つめている。
顎が外れるんじゃないかと思うほど口を開けているものや、目を見開くもの、ハクハクと言葉にならない何かを話しているもの。
先ほどまでとは打って変わって、雰囲気が一気に変わったのが嫌でもわかった。
「マルスティア、様…」
「えと、今のは何というか、ぐ、偶然…?」
「あなた様の力が必要なんです!」
「え?」
オレフィスは目を輝かせて私の手をぎゅっと両手で握り締めた。
突然ドタイプの人に見つめられて手を握られて、何のご褒美かと思いつつも私はあくまでも冷静さを装って答えた。
「それはどういう意味ですか?」
そういえば、ルカも同じことを言っていたような気がする。
力が必要って、どういうこと?
私は聞き間違いかと思ってオレフィスに聞き返した。
まさか目の前の怪物を倒せなんて言うはずないわよね。私はあくまでも伯爵令嬢。魔法使いの騎士ではない。これがどれだけ異常な状況なのかは、私にだって理解できる。
オレフィスもよく事態を飲み込めていないようだった。首を傾げつつも、もう一度私に言う。
「この怪物を、倒していただきたいのです。無理を承知なのはわかっているのですが、ルカ皇太子様がマルスティア様にそう伝えるようにと申しつかりまして…」
はい??
ルカ…あの人何を考えているの。
「そんな事、できませんわ」
「やはりそう、ですよね。大変失礼な事をしてしまい申し訳ございません。」
申し訳なさそうな表情のオレフィス。
全くもう、あいつは何を考えているのよ!
オレフィスにこんな顔をさせてっ。
「オレフィス、あなたが謝ることはありません。顔を上げてください」
そうよ、オレフィスが謝ることはないわ。
私はルカに怒り心頭だった。
他の騎士たちも、やっぱりなという表情で私を見ている。
「ほらみろ、やっぱり嘘じゃないか」
「だよな、あんなちっこい御令嬢が怪物を相手になんて出来るわけがないだろうよ」
「しかも俺たちだって捕まえるのに苦労した怪物だぜ」
「だよな。ほらみろ、見ただけで震えてるじゃないか。訓練もあるってのに無駄な時間を食っちまったよ」
何だか、嫌みな奴らね。
確かに騎士様たちからすれば私はちっこいただの御令嬢かも知れないけれど、そこまで言わなくたって良いじゃない。
私だって好きでここに来たわけじゃないのに。震えてるのはオレフィスがドタイプ過ぎて、どうして良いかわからないのよっ(?)
「夜にお呼びだてして申し訳ございませんでした。今日はもう遅いですし、部屋でお休みになってください」
そう言ってオレフィスが私を訓練場から出るように促そうとしたその時だった。
「うわぁっ!!?」
突然、怪物を繋いでいた紐がブチブチっと切れたかと思うと、紐を持っていた騎士たちが勢いよく吹き飛ばされた。
あんなに小さいのに、さすがは怪物。力は強いらしい。
騎士たちは油断していたのか、突然の事態にオロオロとし始める。まさか紐が切れるなんて思ってもいなかったようだ。
「マルスティア様はここから逃げてください!」
サッとオレフィスが私の盾になるように戦闘体制に入った。さすがは騎士団長。他の騎士たちと違い、動きに無駄がない。
行動まで格好いいなんて完璧じゃない。いけない、呑気にキュンとしてる場合じゃないわ。
そうは思うものの、あの怪物の動き見る限り、明らかに怪物の中でも小物にしか見えない。どうして騎士であろう人たちがあんなにも怯えながら戦っているの?
オレフィスの背中の陰に隠れながらも、私は無駄な動きの多い騎士たちにやや苛立ちを覚えてしまった。
さっきまでの嫌味ったらしい雰囲気はどこにいったのよ。
「危ないっ!!」
次の瞬間、怪物がオレフィス目掛けてシュッと光の玉を放ったのだ。
私は咄嗟にオレフィスの前に出て、その玉を跳ね返した。そしてその玉を操るようにして怪物目掛けて撃ち放つ。
「キェーーっ」
それは、一瞬のことだった。
「…」
「…」
「…嘘、だろ?」
怪物は私の反撃を受けてバタンっと倒れた。
あちゃー
これは、やってしまったかも知れない。
「えーと」
全員の視線が私の方へと集まるのがわかる。
「え、えへ?」
可愛く誤魔化してみたが無駄だった。
「あんな速い光の玉を一瞬で…」
「しかも操っているようにも見えたぞ」
「まさか、本当に…」
「信じられない…」
騎士たちは口をあんぐりと開けて私の方を見つめている。
顎が外れるんじゃないかと思うほど口を開けているものや、目を見開くもの、ハクハクと言葉にならない何かを話しているもの。
先ほどまでとは打って変わって、雰囲気が一気に変わったのが嫌でもわかった。
「マルスティア、様…」
「えと、今のは何というか、ぐ、偶然…?」
「あなた様の力が必要なんです!」
「え?」
オレフィスは目を輝かせて私の手をぎゅっと両手で握り締めた。
突然ドタイプの人に見つめられて手を握られて、何のご褒美かと思いつつも私はあくまでも冷静さを装って答えた。
「それはどういう意味ですか?」
そういえば、ルカも同じことを言っていたような気がする。
力が必要って、どういうこと?
48
お気に入りに追加
1,445
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
貴方に側室を決める権利はございません
章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。
思い付きによるショートショート。
国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる