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隠すはずが手違いで倒しちゃいました

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「あの…それはどういう…?」

私は聞き間違いかと思ってオレフィスに聞き返した。
まさか目の前の怪物を倒せなんて言うはずないわよね。私はあくまでも伯爵令嬢。魔法使いの騎士ではない。これがどれだけ異常な状況なのかは、私にだって理解できる。

オレフィスもよく事態を飲み込めていないようだった。首を傾げつつも、もう一度私に言う。

「この怪物を、倒していただきたいのです。無理を承知なのはわかっているのですが、ルカ皇太子様がマルスティア様にそう伝えるようにと申しつかりまして…」

はい??
ルカ…あの人何を考えているの。

「そんな事、できませんわ」

「やはりそう、ですよね。大変失礼な事をしてしまい申し訳ございません。」

申し訳なさそうな表情のオレフィス。
全くもう、あいつは何を考えているのよ!
オレフィスにこんな顔をさせてっ。

「オレフィス、あなたが謝ることはありません。顔を上げてください」

そうよ、オレフィスが謝ることはないわ。

私はルカに怒り心頭だった。
他の騎士たちも、やっぱりなという表情で私を見ている。

「ほらみろ、やっぱり嘘じゃないか」
「だよな、あんなちっこい御令嬢が怪物を相手になんて出来るわけがないだろうよ」
「しかも俺たちだって捕まえるのに苦労した怪物だぜ」
「だよな。ほらみろ、見ただけで震えてるじゃないか。訓練もあるってのに無駄な時間を食っちまったよ」

何だか、嫌みな奴らね。
確かに騎士様たちからすれば私はちっこいただの御令嬢かも知れないけれど、そこまで言わなくたって良いじゃない。

私だって好きでここに来たわけじゃないのに。震えてるのはオレフィスがドタイプ過ぎて、どうして良いかわからないのよっ(?)

「夜にお呼びだてして申し訳ございませんでした。今日はもう遅いですし、部屋でお休みになってください」

そう言ってオレフィスが私を訓練場から出るように促そうとしたその時だった。

「うわぁっ!!?」

突然、怪物を繋いでいた紐がブチブチっと切れたかと思うと、紐を持っていた騎士たちが勢いよく吹き飛ばされた。

あんなに小さいのに、さすがは怪物。力は強いらしい。

騎士たちは油断していたのか、突然の事態にオロオロとし始める。まさか紐が切れるなんて思ってもいなかったようだ。

「マルスティア様はここから逃げてください!」

サッとオレフィスが私の盾になるように戦闘体制に入った。さすがは騎士団長。他の騎士たちと違い、動きに無駄がない。

行動まで格好いいなんて完璧じゃない。いけない、呑気にキュンとしてる場合じゃないわ。

そうは思うものの、あの怪物の動き見る限り、明らかに怪物の中でも小物にしか見えない。どうして騎士であろう人たちがあんなにも怯えながら戦っているの?

オレフィスの背中の陰に隠れながらも、私は無駄な動きの多い騎士たちにやや苛立ちを覚えてしまった。

さっきまでの嫌味ったらしい雰囲気はどこにいったのよ。

「危ないっ!!」

次の瞬間、怪物がオレフィス目掛けてシュッと光の玉を放ったのだ。

私は咄嗟にオレフィスの前に出て、その玉を跳ね返した。そしてその玉を操るようにして怪物目掛けて撃ち放つ。

「キェーーっ」

それは、一瞬のことだった。

「…」
「…」
「…嘘、だろ?」

怪物は私の反撃を受けてバタンっと倒れた。

あちゃー
これは、やってしまったかも知れない。

「えーと」

全員の視線が私の方へと集まるのがわかる。

「え、えへ?」

可愛く誤魔化してみたが無駄だった。

「あんな速い光の玉を一瞬で…」
「しかも操っているようにも見えたぞ」
「まさか、本当に…」
「信じられない…」

騎士たちは口をあんぐりと開けて私の方を見つめている。

顎が外れるんじゃないかと思うほど口を開けているものや、目を見開くもの、ハクハクと言葉にならない何かを話しているもの。

先ほどまでとは打って変わって、雰囲気が一気に変わったのが嫌でもわかった。

「マルスティア、様…」

「えと、今のは何というか、ぐ、偶然…?」

「あなた様の力が必要なんです!」

「え?」

オレフィスは目を輝かせて私の手をぎゅっと両手で握り締めた。

突然ドタイプの人に見つめられて手を握られて、何のご褒美かと思いつつも私はあくまでも冷静さを装って答えた。

「それはどういう意味ですか?」

そういえば、ルカも同じことを言っていたような気がする。
力が必要って、どういうこと?
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