地味な私と公爵様

ベル

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逃げられないお姫様

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馬車で運ばれて着いた先はラエル公爵様の邸宅でした。


馬車に乗っている最中から部屋に着くまで、ラエル様は私の手を離しませんでした。


ラエル様は終始ご機嫌で、私をとても愛しそうに見つめては手にキスを落とし、満足そうに微笑むのです。


私はときめく胸を押さえ、手汗などは大丈夫かしら、なんて少し不安に思いながらも、自分の想いをラエル様にお伝えすることができ、それを受け入れてもらえたこの幸せな気持ちをじんわりと感じておりました。


使用人達に何やら指示を出しながら、ラエル様は手を引いて私を部屋へと誘導されます。


部屋のドアを閉めた瞬間、とてつもない勢いで抱きすくめられました。


「らっ、ラエル様っ...!?」


あまりの勢いに驚き、体が硬直します。


「...ローズ、私の腰に手を回してくれないか?」


「は、はい」


私はラエル様に抱きしめられた時、今まではどうしていいかわからずラエル様の胸元のシャツをぎゅっと握る事で精一杯でした。


腕を腰に回すなんて初めてのことです。


これでいいのかしら。
おずおずとラエル様の腰に手を回し、きゅっと力を込めて抱き返しました。


こんなに、逞しい体をされてらっしゃるのね。...って、私は何を考えているのっ。


顔がかぁっと熱くなるのを感じました。


ラエル様は私の腕が回るのが分かると、ふう、と甘くため息をつかれます。


「...やばいな」


そう呟くと、抱きしめた腕を緩めて私の頬を優しくなぞりました。


「ローズ...」


端正な顔が近づいてくるのが分かり、私はそっと目を閉じました。


ちゅ...と、優しく啄むように、確かめるようにラエル様は私に口付けます。


「...っ、....んっ!?」


突然ふわっと体が浮いたかと思うと、側にあったソファにそっと降ろされました。


「ローズ、君が嫌がることはしたくないし、私達はまだ婚約の段階だから....まだ先には進めない。」


そう言いながら、ラエル様は熱っぽい視線を私に向けました。先に進む、という言葉に顔が熱を持つのが分かります。


いずれは、とは思っていますが私にその準備ができるのかと不安にもなります。


けれど、少しだけ苦しそうなその表情に戸惑い、私はそっと彼の頬に触れました。


「ラエル様...?」


ラエル様は私の手をそっと取り、ちゅっと手のひらにキスをしながら、私の方に視線を向けました。


その、なんとも言えない強い視線にドクっと胸が波打つのを感じます。


なんだか、ラエル様が別のお方になったみたい。


「...ローズ、キスをしてもいいかい?」


「は、はいっ」


「少しだけ、驚くかもしれないけれど、受け入れてほしい」


「...?」


ラエル様の言葉の意味が分からず、私が戸惑っていると、再びラエル様の顔が近づいてきて、唇が重なりました。


「....っ、んうっ...!?」


突然ラエル様の舌が私の中へ入ってきて、思わず声が出てしまいます。


こっ、これは何...っ


驚いて唇を離そうとしましたが、ラエル様の手が私の腰と後頭部にまわりそれを許してくれません。


どうすればいいの。
くっ、苦しいわ...


「...ん、..ぷぁっ」


そんな様子に気がついたのか、ラエル様がようやく唇を離してくださいました。


苦しそうに息をする私の頭を優しく撫でながらも、まだ瞳の奥は熱っぽさを保ったままです。


「ローズ、ちゃんと息をして。鼻で息をするんだ」


いいね?と言いながら、ラエル様は再び顔を近づけてきました。


長く深いキスをし、時折頬やおでこに優しく触れるようなキスを落としたかと思うと、ちゅ...と首元にも唇が降りてきて、背中がぞわりとし、なんとも言えない感覚が襲ってきます。


「...っ、ラエル様...っ」


「ローズ...」


首元にチクリと鈍い痛みを感じ、思わず息を止めます。ラエル様は、大丈夫だから楽にして、と言い優しく私の頭を撫でながらも、何度も首元にキスを落としました。


どれだけ時間が経ったのかわかりません。私はラエル様に着いて行くので必死で、気がつくと夕焼けが部屋に差し込んでくるのがわかりました。

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