地味な私と公爵様

ベル

文字の大きさ
上 下
12 / 26

逃げられないお姫様

しおりを挟む
馬車で運ばれて着いた先はラエル公爵様の邸宅でした。


馬車に乗っている最中から部屋に着くまで、ラエル様は私の手を離しませんでした。


ラエル様は終始ご機嫌で、私をとても愛しそうに見つめては手にキスを落とし、満足そうに微笑むのです。


私はときめく胸を押さえ、手汗などは大丈夫かしら、なんて少し不安に思いながらも、自分の想いをラエル様にお伝えすることができ、それを受け入れてもらえたこの幸せな気持ちをじんわりと感じておりました。


使用人達に何やら指示を出しながら、ラエル様は手を引いて私を部屋へと誘導されます。


部屋のドアを閉めた瞬間、とてつもない勢いで抱きすくめられました。


「らっ、ラエル様っ...!?」


あまりの勢いに驚き、体が硬直します。


「...ローズ、私の腰に手を回してくれないか?」


「は、はい」


私はラエル様に抱きしめられた時、今まではどうしていいかわからずラエル様の胸元のシャツをぎゅっと握る事で精一杯でした。


腕を腰に回すなんて初めてのことです。


これでいいのかしら。
おずおずとラエル様の腰に手を回し、きゅっと力を込めて抱き返しました。


こんなに、逞しい体をされてらっしゃるのね。...って、私は何を考えているのっ。


顔がかぁっと熱くなるのを感じました。


ラエル様は私の腕が回るのが分かると、ふう、と甘くため息をつかれます。


「...やばいな」


そう呟くと、抱きしめた腕を緩めて私の頬を優しくなぞりました。


「ローズ...」


端正な顔が近づいてくるのが分かり、私はそっと目を閉じました。


ちゅ...と、優しく啄むように、確かめるようにラエル様は私に口付けます。


「...っ、....んっ!?」


突然ふわっと体が浮いたかと思うと、側にあったソファにそっと降ろされました。


「ローズ、君が嫌がることはしたくないし、私達はまだ婚約の段階だから....まだ先には進めない。」


そう言いながら、ラエル様は熱っぽい視線を私に向けました。先に進む、という言葉に顔が熱を持つのが分かります。


いずれは、とは思っていますが私にその準備ができるのかと不安にもなります。


けれど、少しだけ苦しそうなその表情に戸惑い、私はそっと彼の頬に触れました。


「ラエル様...?」


ラエル様は私の手をそっと取り、ちゅっと手のひらにキスをしながら、私の方に視線を向けました。


その、なんとも言えない強い視線にドクっと胸が波打つのを感じます。


なんだか、ラエル様が別のお方になったみたい。


「...ローズ、キスをしてもいいかい?」


「は、はいっ」


「少しだけ、驚くかもしれないけれど、受け入れてほしい」


「...?」


ラエル様の言葉の意味が分からず、私が戸惑っていると、再びラエル様の顔が近づいてきて、唇が重なりました。


「....っ、んうっ...!?」


突然ラエル様の舌が私の中へ入ってきて、思わず声が出てしまいます。


こっ、これは何...っ


驚いて唇を離そうとしましたが、ラエル様の手が私の腰と後頭部にまわりそれを許してくれません。


どうすればいいの。
くっ、苦しいわ...


「...ん、..ぷぁっ」


そんな様子に気がついたのか、ラエル様がようやく唇を離してくださいました。


苦しそうに息をする私の頭を優しく撫でながらも、まだ瞳の奥は熱っぽさを保ったままです。


「ローズ、ちゃんと息をして。鼻で息をするんだ」


いいね?と言いながら、ラエル様は再び顔を近づけてきました。


長く深いキスをし、時折頬やおでこに優しく触れるようなキスを落としたかと思うと、ちゅ...と首元にも唇が降りてきて、背中がぞわりとし、なんとも言えない感覚が襲ってきます。


「...っ、ラエル様...っ」


「ローズ...」


首元にチクリと鈍い痛みを感じ、思わず息を止めます。ラエル様は、大丈夫だから楽にして、と言い優しく私の頭を撫でながらも、何度も首元にキスを落としました。


どれだけ時間が経ったのかわかりません。私はラエル様に着いて行くので必死で、気がつくと夕焼けが部屋に差し込んでくるのがわかりました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!

夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。 そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。 ※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様 ※小説家になろう様にも掲載しています

死にたがり令嬢が笑う日まで。

ふまさ
恋愛
「これだけは、覚えておいてほしい。わたしが心から信用するのも、愛しているのも、カイラだけだ。この先、それだけは、変わることはない」  真剣な表情で言い放つアラスターの隣で、肩を抱かれたカイラは、突然のことに驚いてはいたが、同時に、嬉しそうに頬を緩めていた。二人の目の前に立つニアが、はい、と無表情で呟く。  正直、どうでもよかった。  ニアの望みは、物心ついたころから、たった一つだけだったから。もとより、なにも期待などしてない。  ──ああ。眠るように、穏やかに死ねたらなあ。  吹き抜けの天井を仰ぐ。お腹が、ぐうっとなった。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

私はモブ嬢

愛莉
恋愛
レイン・ラグナードは思い出した。 この世界は前世で攻略したゲーム「煌めく世界であなたと」の世界だと! 私はなんと!モブだった!! 生徒Aという役もない存在。 可愛いヒロインでも麗しい悪役令嬢でもない。。 ヒロインと悪役令嬢は今日も元気に喧嘩をしておられます。 遠目でお二人を眺める私の隣には何故貴方がいらっしゃるの?第二王子。。 ちょ!私はモブなの!巻き込まないでぇ!!!!!

処理中です...