地味な私と公爵様

ベル

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お姫様は考える

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「ラエル公爵様、ローズお嬢様、到着致しました」


私が返事をしようとした時、外から声をかけられました。


「...着いたか。ローズ、降りようか」


ラエル様は身体を起こし、にこっと笑って私の手を取ります。いつもの優しい笑顔ではなく、初めて会った時の笑顔に戻ったようでした。


何かを隠すような、そんな張り付いたような笑顔。


そのあとは一緒に夕食を食べ、お互いに今日あったことを話しました。馬車での話には触れず、差し障りない程度の会話。


私の方から切り出すこともできず、結局そのまま帰宅しました。


ラエル様の様子がいつもと違ったのは明らかでした。けれど、何故なのかわかりません。


私が何か失礼な事をしてしまったのかしら...


考えてもわからず、結局答えは出ないまま翌朝を迎えることになりました。


私はまだ気づいていなかったのです。
言葉で、行動で好意を示すことがどれだけ大切か。


ラエル様からの好意を受け取ることに必死で、自分のことばかりに必死で、ラエル様に対して「好き」という気持ちを一切伝えていなかったことに、私は気づくことができませんでした。
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