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第20話 ホームレス、作戦を考える

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「では、クニカズ大尉、どうしようか。正直に言えば戦力は心もとないよ。2万の兵力で広範囲の領土を守り切るのは難しすぎる。となると戦力を集中させて、決戦を挑むしか……」
 俺とクリスタは一緒に作戦を考える。

 今回の俺たちの勝利条件は期限内までの首都の防衛だ。敵国の兵士は、兵農分離が済んでいない設定なので、農業の繁忙期には帰国しなくてはいけないんだ。

 兵農分離というのは、専門の軍人だけじゃなくて農民も兵役を課して戦争をしている状態だ。日本なら豊臣秀吉の刀狩りで職業軍人と農民が完全に分離されるわけだけど……

「ああ……たしかに戦力の集中は大事だ。でも、クリスタ大尉。下手に決戦を挑めば、俺たちは不利だ。ここは首都防衛に特化して消耗抑制ドクトリンを採用したいと思うんだけど?」

「"消耗抑制ドクトリン"?? なんだい、それは?」

「ああ、そうか。こっちの世界ではまだ、それが体系化されていないんだな。でも、基本はわかりやすいよ。基本的に防御に徹して、敵を消耗させつつ、自分たちの損害を少なくする作戦だと考えればいい。本来ならば、砦や要塞を使うのが効果的だけど……」

「ああ、なるほど。そういうことか! うん、よくわかる。でもさ、この想定だと、使えそうな砦や要塞はほとんどないよね? まばらな砦を使っても、各個包囲されて撃破されるだけだし……」

「うん。でもね、クリスタ大尉。別に、人工物を使わなくてもカバーできるよ。地形を使えばいいんだ!」

「地形を使う??」

「たとえば、ここの湿地帯さ。この湿地帯は、山に囲われて小さな道しかない。大軍がここに展開しても、窮屈でうまく動けないのさ。ならば、ここに簡易的でも固い陣地を作って、砲兵も展開して迎え撃てば……」

「敵は大混乱に陥って、大きな被害を受ける!! さらに、少数の兵力でも有効的に大軍を迎え撃てるんだね!!」

「正解! だからさ、この湿地帯に必要物資を運ぶ計画を立ててくれないかな。俺は地図を眺めて、他に利用できそうな地形を探してみる」

「了解、クニカズ司令官!!」
 クリスタ大尉は勝機が見えたと元気に俺をからかった。

「頼むぞ、クリスタ後方参謀!」

 実は、この作戦も歴史知識を応用した。戦国時代に発生した"沖田畷おきたなわての戦い"のオマージュだ。

 九州の覇権を争っていた龍造寺家と島津家の争いで、2倍以上の戦力を有していた龍造寺軍が動きにくい湿地帯におびきだされて、少数の島津軍に大敗した。龍造寺当主の龍造寺隆信はこのいくさで戦死し、九州の覇権が島津家に傾いたんだ。

 これともう一つの歴史知識を使わせてもらう。
「遊撃戦論」だ!!
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