ぼそっ

タスマ

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1:ここには

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 もうすぐ夏休みだと浮かれてるのは、勿論、僕だけじゃなくて。なんなら僕より教室にいる人達の方が浮かれてる。見てみろよ。野球の猿なんか空気椅子してる。

それは同時に期末試験の訪れを物語っている。自分でいうのもなんだが成績は悪い方じゃない。このまま行けばどっかのなんかの私立大学には推薦で入れるだろう。

まあ後二週間あるし、どうにかなるだろうムード漂っているこの部屋を出て飲み物を買いに外二階の自動販売機に向かった。有難いことにクーラーこそついている7月の教室だが、喉は渇く。

 二階の外廊下端にある一台の自動販売機は、この時期らしい品揃えだ。スカッとするような炭酸飲料、夏果物使った新作ジュース、そしてこちらは気温と平行して売れ切れていったスポーツ飲料。 残念ながら僕は決まって550ミリリットルのお茶だ。他のは売り切れになりつつあるのに君はいつもいるな。

あ、似てるな。僕と。

中学までの友達も知り合いもいないこの高校で、新たに人脈を作るのは難しく、友達‼と呼べる人は誰もいないまま、季節は一巡して高二にいたる。だからと不自由ないし、ずっとこんな独り言頭で呟いてるもんだから余計だ。

 会話するとしたら四人班とか………とか………プリントの…時は返事か……………。どうでもいい担任との方がまだ話をしているだろう。

 困るとしたら班決めで、余るのが僕の役目になっている。勿論、しっかり役目を果たしているが。しょうがなく余りが入るに相応しい集団の班にぶちこまれるのがお決まりだ。これが一日で終わればいいが、数日数回同じ班だと気まずいったらありゃりゃだ。

 そんなもんだから、取り合いにならない僕とそのお茶が似てるねって話だか、そもそも考えれば君は有名企業の商品、片や僕は一般家庭生まれ。位が違う。たががお茶に敗北感をつけられたもんだから、少し乱暴にペットボトルをふって、中の茶っ葉を混ぜた。

 混乱してるみたいなその茶っ葉はまた僕に似てる、のかな。

 
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