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六階 主天使

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 はぁ…最近すごい疲れるな。色々非現実的な事が起きているからかな?それとも思考を巡らせているからかな?どれも全部か…。
 今までは帰り道が一人だった。それが二人になり、三人になり。自分以外は天使なんだけど。
「何か悩みがありまして?」
「うん、二人の事なんだけどね?」
「私も入ってるんですか?!」
「そうだよ…?」
 二人のおかげであり、二人の所為でもある、複雑だ。別に拒否したいわけじゃないのに、拒否をしなくちゃいけないのだから。
「まだ悩んでらしたんですの?」
「いや?決まってはいるよ?心苦しいというか…心労が…。」
「新郎になるから心労がかかっていると?」
「うまい!……違う!そういう事じゃなくて!」
 断らなきゃいけないという負担が大きい。かといって…二人同時は無理だ。好きと言ってくれるのを断るのは…俺が一生引きずりそうだ。
「気にしないでくださいまし?」
「え?」
「肇様には選ぶ権利があった、それだけですの」
「そうですね、私もそう思いますよ?」
 二人は笑顔で俺を見ている。そっか…長引かせているのも相手を思えば良くないか。元々笑夢との未来しか考えていなかったわけだし。
「わたくしが一歩遅かっただけですの…」
 美香は悔しがって、ハンカチを齧っている。ははは、感情豊かだな。見ていて本当に面白い。
「それでは、ごきげんよう」
「うん、また明日」
 俺は美香の後ろ姿に声を掛けた。美香はそのまま飛んで…行った。ああ、見えないんだっけ。忘れちゃうよな…。
「嵐が過ぎ去ったみたいですね?」
「すごい強風だったよね」
 二人で笑いあう。そういえば…告白ってどこでするのがいいんだろう?何か噂ではロマンチックな所がいいとか…じゃないと振られるとか?!なんとか…。
「どこでも大丈夫ですよ?」
「でもさ…きっと一生に一度だよ?」
「そうですか…そこまで考えてくれるならお任せしますね?」
 笑夢は恥ずかしそうにしている。責任重大だ…。どうする…?どうするか。
 寝ても覚めても告白事を考える。気づけばテストも終わり、終業式が終わり…明日が新年。まだ場所も決まらず、言葉も決まっていない。意気地なしめ…。
 ロマンチック…。待てよ?この家で始まったのなら…この家でもう一度新たなスタートをするのもいいか。言葉は…新年に合わせて…。よし、決めた!
「決まった!」
「え?何がですか?」
 リビングでテレビを見ていた笑夢は驚いた顔でこっちを見てくる。新年に向けてカウントダウンが進む。10…9……2…1。
「新年あけましておめでとう、好きです。今年も、これからもずっと一緒に居てください。」
「あはは…それじゃあプロポーズじゃないですか?」
「だって、ずっと一緒に居てくれるんでしょ?付き合ってっておかしな感じじゃない?」
 笑夢は涙を浮かべて頬を赤らめる。始まりも一旦の区切りも。新たなスタートも。全てこの家で。最善だったと思うんだ。どう…だろうか。
「はい!喜んで!」
「はぁ…緊張した。」
「本当ですか?全然そんな風に見えませんでしたよ?」
「照れ隠し…?」
「神隠しだ、酒を持ってきたぞ!祝いだ!」
「どっから湧いたんだ?!」
 気づけば隣に神が居た。この神…レギュラーみたいに現れてくる。ていうか…酒くさ!もう飲んでるな…?!
「ははは!恋愛小説みたいだったぞ?」
「そうか…これ見たかったんだ…。」
「それもそうだが、誰かの幸せを応援するのも神の仕事だからな!」
「酒を飲むのは…?」
「神にはな?集まりがあるのだ、酒は欠かせない!」
 酒瓶を片手に酒を煽る。神には神の事情があるみたいだ。と言うか…ムードぶち壊したな?本当に…。
「ムード?なんだ?何かしようとしていたのか?」
「いや?何もないけど…?」
「そういえば、笑夢への褒美はどうした?」
「ほう……び?」
 褒美…?ああ、俺の事を庇ってくれた?すっかり忘れていた…。もう、告白の事で精一杯だったよ…。
「あれは良いのです、もう…もらいましたから」
「おお、そうか?これで良かったのか?」
「はい!これは…永遠の愛です!」
「すごい…その言葉って体現できるんだ?!」
 永遠の愛とか…体現出来ないと思っていた。それこそ、寿命の問題で。永遠ではなく…長くても70年程度。
「私達は神と天使だぞ?不可能はない!」
「そういえば俺の面接終わった?」
「最終審査はクリアだな」
「どこでクリアした?!」
「ん?二人を娶ろうとするなら、蹴落としてやるつもりだったぞ?」
「うわぁ…まじか。」
「そうだろう?お前の考えた通りだ。優しさだけでは何も出来ないのだ」
 まぁ…妥当だ。ていうか用事もないのに降りてきたのか。いや…待てよ?最終審査クリアって事は…そういう事?
「そうだぞ?お前を迎えに来た。」
「……え?今?」
「ああ、今だ。」
 聞いてない、何それ。展開早すぎでしょ。ああ、天界だから?シャレにならんって!!
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