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六階 主天使

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 時が動き出す。少々厄介な事になってしまったけど…それでもいいか。天使に好かれるという事は悪い事じゃない。寧ろ良い事だ…と思う。
「肇?何悩ましい顔してるんだ?」
「いいんだ、俺の事は」
「??親友の俺にも話せない事なのか?」
「そうだ、これは…誰にも話せない!」
「うぐぐ…しょうがない。頑張れよ!」
「何?このやり取り?」
「さあ?分からんけど…どうするの?あの人」
 智一は美香を指さす。俺らの中では決まった事でも、もう一度説明しないといけないか。時が止まってたわけだし。
「部活に入ってもらうかな」
「そうか!いいな!これで女性二人、男性三人…どんどん増えるかもな!」
「なんか…考えてる?」
「い、いや?何も考えてないぞ?」
「そこの方は彼女ができるかも、と言う淡い期待を抱いておりますわ」
「な?!なんで知って?!いや、違う!!」
「はは~ん…?邪な事を考えていたんだ?」
「いいじゃん!俺も男の子なんだぞ?!」
「智一の場合は…野郎だね?」
「酷い事言うなよ?!」
 皆で笑いあう。智一の彼女事情はまぁ…一旦置いておこう。今日は凄い疲れたし、解散でいいかな?
「じゃあ、今日は解散で」
「は~い…」
「うち…あんまり喋れてない…」
「うん?まぁ…明日もあるからさ!」
「そうだね!」
 ごめんだけど…もう家に帰りたい。この騒動は思った以上に長引きそうだし…いや…待てよ?一つだけ…一つだけ収める方法があるのか。
「とりあえず、帰ろうか」
「はい、帰りましょう」
 笑夢と一緒に部室を後にする。部室を出ると、大勢の人がまだ待っていたけど、俺らはスルー出来た。目当ては美香だから。美香は囲まれた人を無下にできず、そのまま質問攻めに…ごめん。それはどうにもできないや。
「良かったんですか?あれで」
「これ以上は…ね?俺も狙われそうだよ?」
「女子にですか?」
「な?!男子にだよ?刺されそうじゃない?怖いよ…」
「ふふ、邪魔したら大変な事になりそうですもんね」
「暴動とか起きるでしょ。」
「平和の象徴が原因で暴動が起きたらまずいですからね」
 笑夢はニコニコしている。う~ん…地味に目の奥が笑っていない感じがするんだけど。どうなの?
「笑ってますよ?ちゃんと、ほら?」
 笑夢はまっすぐ俺を見つめて、捕まえて笑顔を見せてくる。本当…だ?笑ってる?俺には心が読めないから分からないや。
「ちゃんと信じてくださいよ?別に何かするわけじゃないですから」
「そう…だね?ごめん」
「いえ、信じてもらえたならいいですよ?」
 一安心か。それにしても、俺の結論を急がないと…でも、心は決まっていると思ってるんだけど。どうしても言葉に出来ないよな…恥ずかしい感じがするんだ。
「発見しましたわ!」
「うわぁ?!なんで前から?!」
 美香が俺らの目の前に立ちはだかる。いい人なのは分かるんだ、だって天使だから。うん。でもさ、なんか…ストーカー気質な人が多くない?俺…今まで二人中二人にストーカーされている気がするよ。
「わたくしも一緒に帰らせていただきます!」
「パワフルな…」
「肇さん、行きましょう?」
「う、うん」
 笑夢に引きずられながら帰る。後ろを美香が着いて来る。なんか、ゲームみたいだな。この場合…俺が主人公だけど、めちゃくちゃパワーレベリングされてる感じ?
「失礼ですね?」
「そ、そう?二人して強いからさ?」
「女性に対していう言葉ではありませんわね?」
 こういう時だけ息ぴったりだ。計画を実行に移すためには…俺の覚悟が必要なんだよな…。
 家に着くとまた何やらただならぬ気配を感じる。ああ、これ、居るわ。泥棒だ、泥棒。
「ほう?神に向かって泥棒とは失礼な奴だな?」
「だって、泥棒じゃん!別に盗んでないけど、勝手に居るんだよ?」
「ははは!そうだな?では、何か盗んでいくか?」
「ごめんなさい…勘弁してください!!」
「そうであろう?今回は許してやろう?」
「ははぁ、寛大な心感謝いたします!」
 俺は土下座を決め込む。まぁ…この流れ自体は別にいつも通りか。所で昨日の今日みたいなペースで来たけど、何事?
「どうだ?天使に挟まれる生活は?」
「あ…勘弁してください。本当に…」
「うん?別に送り込んだのは小僧に対しての嫌がらせではないぞ?」
「嫌がらせ…ではないけど、正直困ってるよ」
 天使二人は傅くけど、俺は全然対等に話している。この状況に違和感は覚えない。だって、飲んだくれてた神だからね?そうだな…一応敬ってはいるけど。
「失礼な!もう一人送り付けるぞ?」
「嫌がらせじゃん!それ!」
「冗談だ!そこの二人しか、物好きは居らん」
「それこそ失礼だ!物好きって…うん、間違ってない。」
「であろう?」
 否定できない自分が悲しくなってきたよ。もう…どうにかしてよ。
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