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四階 能天使
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隣の部屋を覗いた智一は「なんだ、別に何もないじゃん」と言って方を落とした。そんなはずはない、確認のため中を覗いた。本当に何も無かった。
笑夢は荷物まで全部持って行ったのか…?それじゃあ本当に帰るみたいじゃないか。本当に…幻覚だった?いや、智一は認識していたし、ルトもそうだった。
「な、何かあったら大変だからね?長らく開けてなかったし」
「そうか?」
嘘ではないけど。そこに住んでいた人が居たはずだった。もしかして、荷物は必要ないのではないか?という希望的な憶測をしてみる。本人じゃなきゃ分かりはしないけど。
「あ、そろそろ解散の時間だね?」
「お、おう!そうだな」
「じゃあ、送るよ」
そういってリビングに戻ろうとすると、後ろから影が顔を出す。何事だ?!と思ったら、笑夢だった。ひっそりと帰ってきていたみたいだ。
「楽しそうな事をしていますね?」
「わ?!いつの間に?!」
「うぉぉ?!帰ってきてたのか?何でここに居るって分かったんだ?!」
「いえ、普通に遊びに来ただけですよ?」
笑夢は男性の姿で現れた。何かを察していたのか、なんなのか。本当に…良かったよ。俺の幻覚だったんじゃないか、ずっとそんなことを考えていたのだから。
「皆さんを送るんですか?私も行きましょうか?」
「ん?お前は…帰らないのか?」
「私は家が近いんですよ」
「ふ~ん…そうなんだ」
何か智一は勘ぐっている様子だ。そういえば、さっきからルトの声が聞こえないような気がする。隣を見て見ると、ルトは腰を抜かして立ち上がれなくなっていた。
「な?!どうしたの?」
「うち…驚きすぎて…」
「あ、そういう事?」
確かに驚きもするよね。だって音もしなかったんだもん。というか…何処から入ってきたんだ?まさか…天から降臨した?最初の時みたいに?
ルトに手を貸して起き上がらせる。二人はテキパキと準備をして、そのまま玄関に向かった。
駅に二人を送り届けて、笑夢と二人で歩く。不思議な感覚がする。ちょっと前まで当たり前だった事が、一瞬で無くなるという事実。それを痛いほど通関した。
「どうでした?私が居ない間は?」
「寂しかったし心細かったよ」
「分かってま……え?」
笑夢は驚いた表情を見せて、歩くのを止める。俺の返答がおかしかったのか、それとも予期せぬ返答が返ってきたのか。
「どうしたの?」
「い、いえ…そう素直に言われる事を予想していなかったので…」
「そう?今回ばかりは…ね?」
いつもやってくれていた事は大変な事だったと思うし、一緒に居てくれた事も嬉しかった。本当に。家が一人だと寂しいと感じた事も、授業に集中できなかったことも、一緒にご飯を食べれた事も。全てが本当に貴重なんだと思う。
「肇さん…どこかに本体が隠れていますか?!」
「え?!俺が本体なんだけど?」
「いや、そんなに感謝されるなんて思ってなくて…」
「慣れるのが早かった、この言葉を思い出してさ?」
「はい」
「あの稀有な状況に慣れてしまって、当たり前になっていたんだよ」
「そう…ですか」
「俺はきっと、何百年も生きるつもりで生きていたんだ」
こんな珍しい、一生かけてもお目にかかれない状況を当たり前にしていた。天使ってだけでも一生、いや…十生かけても出会えるような事じゃない。なのに俺の苦手な所を全部カバーしてくれるんだ。俺の事を好き、と言う理由だけで。
「俺も…きっと好きになったんだと思う」
「は…はい?!」
「笑夢の事を」
「こんな…急に告白なんて…?!」
笑夢頬を赤らめてくねくねしている。ははは、本当に面白い。俺は今世、いや前世も来世も含めて、最高の経験をさせてもらっている。本当にありがとう。
「こ、怖いですよ?!」
「そう思う?これ、笑夢にも思ってた事だからね?」
「あ~…肇さんから伝わってましたよ?でも、肇さんの場合は…人が変わったみたいで怖いです」
「怖い怖い言うなよ?!傷つくじゃん?」
「ふふっ、思ってないですよね?どうですか?怖いをネタに昇華出来ましたか?」
「え?!なんで知ってるの?」
「私を誰だと思ってるんですか?」
「ははっ、天使だね」
「そうです!あ、ところで…今日の晩御飯は何にしますか?」
「う~ん…ごめん、なんでもいいよ?本当に…なんでも。」
笑夢は首を傾げているけど…俺の食生活見てないから分かってないんだろうな。カップ麺、総菜、出来合いの物しか食べてなかった一週間で、手作りの料理は本当に暖かい事を再認識した。
「は、肇さん…そんな生活していたんですか?」
「そうだ、バレるんだった…」
「健康に何か問題はないですか?」
「大丈夫かな…?寝不足、集中力なし、体も…若干重たい!」
「はい、生活習慣病予備軍ですね?」
この感覚も懐かしく感じるな。当たり前を当たり前だと思わない事が一番大事だ、ずっとそう思っておこう。
笑夢は荷物まで全部持って行ったのか…?それじゃあ本当に帰るみたいじゃないか。本当に…幻覚だった?いや、智一は認識していたし、ルトもそうだった。
「な、何かあったら大変だからね?長らく開けてなかったし」
「そうか?」
嘘ではないけど。そこに住んでいた人が居たはずだった。もしかして、荷物は必要ないのではないか?という希望的な憶測をしてみる。本人じゃなきゃ分かりはしないけど。
「あ、そろそろ解散の時間だね?」
「お、おう!そうだな」
「じゃあ、送るよ」
そういってリビングに戻ろうとすると、後ろから影が顔を出す。何事だ?!と思ったら、笑夢だった。ひっそりと帰ってきていたみたいだ。
「楽しそうな事をしていますね?」
「わ?!いつの間に?!」
「うぉぉ?!帰ってきてたのか?何でここに居るって分かったんだ?!」
「いえ、普通に遊びに来ただけですよ?」
笑夢は男性の姿で現れた。何かを察していたのか、なんなのか。本当に…良かったよ。俺の幻覚だったんじゃないか、ずっとそんなことを考えていたのだから。
「皆さんを送るんですか?私も行きましょうか?」
「ん?お前は…帰らないのか?」
「私は家が近いんですよ」
「ふ~ん…そうなんだ」
何か智一は勘ぐっている様子だ。そういえば、さっきからルトの声が聞こえないような気がする。隣を見て見ると、ルトは腰を抜かして立ち上がれなくなっていた。
「な?!どうしたの?」
「うち…驚きすぎて…」
「あ、そういう事?」
確かに驚きもするよね。だって音もしなかったんだもん。というか…何処から入ってきたんだ?まさか…天から降臨した?最初の時みたいに?
ルトに手を貸して起き上がらせる。二人はテキパキと準備をして、そのまま玄関に向かった。
駅に二人を送り届けて、笑夢と二人で歩く。不思議な感覚がする。ちょっと前まで当たり前だった事が、一瞬で無くなるという事実。それを痛いほど通関した。
「どうでした?私が居ない間は?」
「寂しかったし心細かったよ」
「分かってま……え?」
笑夢は驚いた表情を見せて、歩くのを止める。俺の返答がおかしかったのか、それとも予期せぬ返答が返ってきたのか。
「どうしたの?」
「い、いえ…そう素直に言われる事を予想していなかったので…」
「そう?今回ばかりは…ね?」
いつもやってくれていた事は大変な事だったと思うし、一緒に居てくれた事も嬉しかった。本当に。家が一人だと寂しいと感じた事も、授業に集中できなかったことも、一緒にご飯を食べれた事も。全てが本当に貴重なんだと思う。
「肇さん…どこかに本体が隠れていますか?!」
「え?!俺が本体なんだけど?」
「いや、そんなに感謝されるなんて思ってなくて…」
「慣れるのが早かった、この言葉を思い出してさ?」
「はい」
「あの稀有な状況に慣れてしまって、当たり前になっていたんだよ」
「そう…ですか」
「俺はきっと、何百年も生きるつもりで生きていたんだ」
こんな珍しい、一生かけてもお目にかかれない状況を当たり前にしていた。天使ってだけでも一生、いや…十生かけても出会えるような事じゃない。なのに俺の苦手な所を全部カバーしてくれるんだ。俺の事を好き、と言う理由だけで。
「俺も…きっと好きになったんだと思う」
「は…はい?!」
「笑夢の事を」
「こんな…急に告白なんて…?!」
笑夢頬を赤らめてくねくねしている。ははは、本当に面白い。俺は今世、いや前世も来世も含めて、最高の経験をさせてもらっている。本当にありがとう。
「こ、怖いですよ?!」
「そう思う?これ、笑夢にも思ってた事だからね?」
「あ~…肇さんから伝わってましたよ?でも、肇さんの場合は…人が変わったみたいで怖いです」
「怖い怖い言うなよ?!傷つくじゃん?」
「ふふっ、思ってないですよね?どうですか?怖いをネタに昇華出来ましたか?」
「え?!なんで知ってるの?」
「私を誰だと思ってるんですか?」
「ははっ、天使だね」
「そうです!あ、ところで…今日の晩御飯は何にしますか?」
「う~ん…ごめん、なんでもいいよ?本当に…なんでも。」
笑夢は首を傾げているけど…俺の食生活見てないから分かってないんだろうな。カップ麺、総菜、出来合いの物しか食べてなかった一週間で、手作りの料理は本当に暖かい事を再認識した。
「は、肇さん…そんな生活していたんですか?」
「そうだ、バレるんだった…」
「健康に何か問題はないですか?」
「大丈夫かな…?寝不足、集中力なし、体も…若干重たい!」
「はい、生活習慣病予備軍ですね?」
この感覚も懐かしく感じるな。当たり前を当たり前だと思わない事が一番大事だ、ずっとそう思っておこう。
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