上 下
19 / 61
四階 能天使

(1)

しおりを挟む
 学校からの帰宅途中、急に思い出す。人を本気で好きになるってどういう感情なんだろう。好きって…なんだろう。笑夢は俺に構ってくれるけど、俺はどうなんだろう。う~ん…分からん!!調べてみるか…。
 携帯を取り出して検索する。好きとは、感情が激しく動いた時。画面を見て固まる。だってそうだろう?意味が分からないから。怖い思いをしたとき、それは好き?悲しい思いをしたとき、それは好き?感情って何ですか?
 「はぁ…。」
 「深いため息ですね?どうしました?」
 「ははは、分かってるんでしょ?」
 隣を歩いている笑夢が話しかけてくる。心が読めるのなら、俺の悩みなんて分るだろう。
 「そんなに深く考えなくていいですよ?」
 「ダメなんだ、真剣に考えないと。」
 初めてにして最後の恋になるかもしれないじゃないか。今ここで考えたって大丈夫なはず。寧ろ…ちゃんと答えが出てないのに付き合うとか…ならなくない?
 「そうですかね?年齢によって変わると思いますよ?」
 「年齢…ね。」
 「高校生の時から真剣にお付き合いとか…あんまり居ないと思いますよ?」
 なるほど…?先は長いし、告白されたら付き合うとかあるかもしれない。う~ん…ますます分からない。感情が大きく動く…か。どこで動いているんだろ?
 「真剣に考えてくれるのは嬉しいですけどね?」
 「うん?だってさ、もし恋愛が始まったらこの先ずっと一緒だよね?」
 「まぁ…そうなりますかね?私が女神という立場になりますので」
 だよね。だったらはっきり答えを出したいよ。この先、何百、何千…数えきれないぐらい一緒に居る予定だと思うから。
 「良いですね!!本当に…かっこいいですよ?」
 「はは、ありがとう?」
 甲斐性なしとも言えるかもしれないのに。ポジティブに考えてくれてありがとう。最初に出会ったときには頷いたはずなんだけどなぁ…。今更なんなんだろうな。
 「うん、勢いで付き合ったらきっと別れてしまうでしょうね」
 「そうなのかな?」
 「そこそこ高い確率だと思いますよ?相手を知らないじゃないですか?」
 「うん?」
 「後で嫌なところだけ見えてくるのは、最初には見えていなかったからです」
 なるほど…。いいところのみを見ているから、後で嫌なところが出てくると耐えられない、と?そういうもの…か。じゃあ、俺は大丈夫か。笑夢に嫌だと思ったところはないし。強いて言えばちょっと怖いかな…ってだけで。
 「ちょっと…怖いですか?」
 笑夢は顔を近づけてくる。そういうところが怖いっていうか…。なんていうか。心読まれるのも…怖いし。
 「う~ん…そういうものですか。」
 「そればかりは…ね?」
 「まぁ…いいでしょう。」
 頬を膨らませて不服そうにしているが、何とか納得してくれたようだ。
そうだ…デートだ!どこに行けばいいかな…。夏休みに海に行く予定だし、なんだろう?どこがいいんだ…う~ん。考える事が山ほどあるぞ?!何故だ…。
 「ふふ、いいんですよ?どこでも?」
 「良くないよ?二回目ってね、一回しか来ないんだから」
 一回目も二回目も三回目も、一回しかない。記憶に残るようなデートにしないと。それらは全て記念になるんだ。
 「面白い事を考えますね!人生だって一回きりしかないですからね」
 「うん、だから全力で考えるんだ」
 「肇さんは本当に…面白い人ですね」
 笑夢はうっとりした顔をして俺を見つめている。前を見ていないのに、歩いてくる人をよけ続ける。もはや、そこしか気にならなくなってしまった。
 「ただいま」
 二人で玄関をくぐる。笑夢は台所に行き、食事の準備を始めた。俺はデートの場所をもう一度検索し始めた。
 前にも調べたけど…定番じゃない方がいいかな?いや、定番でもいいけど…二人で興味があるものがいい。でも、二人で興味があるものってなんだ?ん~…。笑夢が興味があるので唯一知っているのが犬なんだよな。犬が好きって事は…動物が好き?
 「動物園とか好きですよ?」
 「わぁ…ご丁寧にありがとう!じゃあ、動物園に行こうか」
 「はい!行きましょう!」
 笑夢の笑顔が輝いて見えた。綺麗な純粋な笑顔。天使ってのは本当にすごいらしい。どうやってなるんだろう。
 「前世で善良な行いをすると、ある日選ばれますよ?」
 「そうなの?!そんなぽんっと決まるものなの?」
 「ええ、私の場合はそうでした。階級も役割みたいなものですからね」
 「へぇ…そうなんだ?」
 「そうですよ、一個ずつ段階を踏んで神に近づいていく形ですね」
 机の上にご飯を並べながら笑夢は話している。でも、それなら尚更…飛び級ってありえない話だよね。どういう基準なんだろう。神って言う存在は意外と曖昧なのかな?
 「かもしれないですね、そうだ、少しばかり居なくなりますね?」
 「な…?!急だね?」
 「ちょっと用事がありまして…この後家を離れないといけないんですよ」
 「そっか…分かった、行ってらっしゃい」
 「はい、行ってきます!」
 ご飯を食べ終えて、天に向かって羽ばたいていく。大丈夫なのかな?あの姿で見られたら、大変な事になるんじゃ。なんて考えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...