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三階 権天使
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三人で教室に戻って弁当を食べる。その間もずっと頭から告白の光景が離れなかったし、気持ちが落ち着かなかった。授業が始まっても上の空だったし、気づいたら放課後になっていた。
「よし、部活行くか!」
「そうしますか、肇さん?」
「んあ?!授業は?」
「終わりましたけど?大丈夫ですか?熱でもありますか?」
「い、いや?多分大丈夫、行こうか」
悟られまいと躍起になって思考を押さえつける。考えないようにすればするほど、あの光景がフラッシュバックする。今まではこんな事無かったのに。
部室を開けると、ルトが座って本を読んでいた。ルトはこちらを一瞥すると、呼んでいた本をパタンと閉じた。
「ごきげんよう」
「え…?何に影響されたの?」
「嫌ですわ、影響だなんて」
おほほほ、と口元に手をやって笑っているルトをしり目に、智一はルトが置いた本をのぞき込む。すると目を見開いた後、何回も頷いた。
「お嬢様、異世界転生への道…か」
「な、なんで知ってるの?!」
「俺も好きだからな!それ、面白いよな!」
「うち好きなんだよね!」
「分かる分かる!」
二人は手を取り合って見つめあっていた。何、これ。何を見せられているんだ?というか…智一は恋バナ好きなら女子人気高いのでは?容姿も優しそうだし、清潔感もあるし。俺らを置いてけぼりにして二人は話を続けている。
「あ、どうしよ?」
「あんなに二人の世界に入ってしまってはどうする事も出来ませんね。何より…楽しそうです」
「あれ?笑夢はあの本知ってるんじゃ…?」
「静かに!知っていますけど、肇さんが一人になってしまうでしょう?何より、私は書物に好きも嫌いもありませんから」
うぅ…。なんていい天使なんだ。良くできた天使だ…。何かしてあげたいけど、何も出来ないかも…。寧ろやってもらってる立場だし…。
「なら、デートに行きましょう?」
「う、うん?!」
「ふふ、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ?」
「そ、そうだね?」
「今度はどこに行きましょうか?」
ニコニコしながら話している笑夢を見つめる。どうすればいいのか…分からないけど、何とか笑夢に楽しんでもらおう。そのために全力を尽くすぞ。
「デートするの?いいな~うちも行きたいな~」
「じゃあ、合宿とかどう?」
「いいじゃん!行きたい!」
聞かれていたのか?!変に思われなかっただろうか…?笑夢が両性なのを知っているのはこの中では笑夢と俺しかいないんだけど…。そう思って笑夢を見ると、笑夢は首を横に振ってこそっと「同性だからとか関係ないですよ」と俺の耳元で囁いた。
「そうだね、合宿って申請とか出すのかな?」
「う~ん…分かんないね?」
「そうだな…俺も分からん!」
自信満々に言うな?!分かるのかと思ったじゃないか!というか…顧問も居ないけど、どうなってるんだろう?勝手に空き教室を占拠しているみたいな事になってないだろうか?
「そこら辺は大丈夫です。多分自費で行く分には行けるのではないでしょうか?」
「後は親御さんの許可のみかな?」
カレンダーを見ると、夏目前で、6月の後半。後一か月もすれば夏休みに入る所だ。
「どこ行く?夏休みだったら…海とか?!」
「海か!いいね!」
ルトと智一は二人で盛り上がっている。海か~…。俺海苦手なんだよな、しょっぱくて。飲みたいから飲んでる訳じゃ無いよ?!いやさ、口に入るじゃん。ていうか誰に言い訳してるんだよ…?
「言うなら今ですよ?」
「まぁ、いっかな?」
「そうですか?肇さんがいいのなら、私はいいですよ?」
いやぁ…笑夢はどっちにしても視線を集めそうだ。俺もきっと悪い意味で視線を集めるんだろうな…。
「どうよ?!肇!海行こうぜ!」
「肇君、どうかな?!うちも行きたい!」
二人が潤んだ瞳をこちらに向けてくる。それはもう…子犬のような純粋な眼で。断れないし、断る理由もないかな。海水が好きじゃないだけで、友達と海に行くシチュエーションとか…わくわくするし!
「あぁ、行こう。」
「笑夢君もそれでいいかな?」「笑夢もいいよな?」
二人は今度、笑夢にも同じ視線を向ける。笑夢は多分大丈夫だろう。苦手なものとかなさそうだし、その気になれば海を割れそう…何それ?見て見たい。
「ええ、構いませんよ?」
「やった~!」「わーい!」
二人は大はしゃぎしている。まだ行けるかどうか分からないよ?許可出るかな?家は大丈夫だけど。待てよ…書類が必要だったような…。どうしよ?海外に居る両親にどうやって書いてもらうんだ?まぁ、そこら辺はいっか!
「肇さん、私が書きますから」
「そっか、別に代筆でもいいのか」
「確か、ホテルによって異なります」
「へぇ…そうなんだ?」
「必ずではなかったはずです」
それなら、両親に確認だけ取ってできるか…!楽しみだな!その前に…笑夢とのデート、どうしようかな。
「よし、部活行くか!」
「そうしますか、肇さん?」
「んあ?!授業は?」
「終わりましたけど?大丈夫ですか?熱でもありますか?」
「い、いや?多分大丈夫、行こうか」
悟られまいと躍起になって思考を押さえつける。考えないようにすればするほど、あの光景がフラッシュバックする。今まではこんな事無かったのに。
部室を開けると、ルトが座って本を読んでいた。ルトはこちらを一瞥すると、呼んでいた本をパタンと閉じた。
「ごきげんよう」
「え…?何に影響されたの?」
「嫌ですわ、影響だなんて」
おほほほ、と口元に手をやって笑っているルトをしり目に、智一はルトが置いた本をのぞき込む。すると目を見開いた後、何回も頷いた。
「お嬢様、異世界転生への道…か」
「な、なんで知ってるの?!」
「俺も好きだからな!それ、面白いよな!」
「うち好きなんだよね!」
「分かる分かる!」
二人は手を取り合って見つめあっていた。何、これ。何を見せられているんだ?というか…智一は恋バナ好きなら女子人気高いのでは?容姿も優しそうだし、清潔感もあるし。俺らを置いてけぼりにして二人は話を続けている。
「あ、どうしよ?」
「あんなに二人の世界に入ってしまってはどうする事も出来ませんね。何より…楽しそうです」
「あれ?笑夢はあの本知ってるんじゃ…?」
「静かに!知っていますけど、肇さんが一人になってしまうでしょう?何より、私は書物に好きも嫌いもありませんから」
うぅ…。なんていい天使なんだ。良くできた天使だ…。何かしてあげたいけど、何も出来ないかも…。寧ろやってもらってる立場だし…。
「なら、デートに行きましょう?」
「う、うん?!」
「ふふ、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ?」
「そ、そうだね?」
「今度はどこに行きましょうか?」
ニコニコしながら話している笑夢を見つめる。どうすればいいのか…分からないけど、何とか笑夢に楽しんでもらおう。そのために全力を尽くすぞ。
「デートするの?いいな~うちも行きたいな~」
「じゃあ、合宿とかどう?」
「いいじゃん!行きたい!」
聞かれていたのか?!変に思われなかっただろうか…?笑夢が両性なのを知っているのはこの中では笑夢と俺しかいないんだけど…。そう思って笑夢を見ると、笑夢は首を横に振ってこそっと「同性だからとか関係ないですよ」と俺の耳元で囁いた。
「そうだね、合宿って申請とか出すのかな?」
「う~ん…分かんないね?」
「そうだな…俺も分からん!」
自信満々に言うな?!分かるのかと思ったじゃないか!というか…顧問も居ないけど、どうなってるんだろう?勝手に空き教室を占拠しているみたいな事になってないだろうか?
「そこら辺は大丈夫です。多分自費で行く分には行けるのではないでしょうか?」
「後は親御さんの許可のみかな?」
カレンダーを見ると、夏目前で、6月の後半。後一か月もすれば夏休みに入る所だ。
「どこ行く?夏休みだったら…海とか?!」
「海か!いいね!」
ルトと智一は二人で盛り上がっている。海か~…。俺海苦手なんだよな、しょっぱくて。飲みたいから飲んでる訳じゃ無いよ?!いやさ、口に入るじゃん。ていうか誰に言い訳してるんだよ…?
「言うなら今ですよ?」
「まぁ、いっかな?」
「そうですか?肇さんがいいのなら、私はいいですよ?」
いやぁ…笑夢はどっちにしても視線を集めそうだ。俺もきっと悪い意味で視線を集めるんだろうな…。
「どうよ?!肇!海行こうぜ!」
「肇君、どうかな?!うちも行きたい!」
二人が潤んだ瞳をこちらに向けてくる。それはもう…子犬のような純粋な眼で。断れないし、断る理由もないかな。海水が好きじゃないだけで、友達と海に行くシチュエーションとか…わくわくするし!
「あぁ、行こう。」
「笑夢君もそれでいいかな?」「笑夢もいいよな?」
二人は今度、笑夢にも同じ視線を向ける。笑夢は多分大丈夫だろう。苦手なものとかなさそうだし、その気になれば海を割れそう…何それ?見て見たい。
「ええ、構いませんよ?」
「やった~!」「わーい!」
二人は大はしゃぎしている。まだ行けるかどうか分からないよ?許可出るかな?家は大丈夫だけど。待てよ…書類が必要だったような…。どうしよ?海外に居る両親にどうやって書いてもらうんだ?まぁ、そこら辺はいっか!
「肇さん、私が書きますから」
「そっか、別に代筆でもいいのか」
「確か、ホテルによって異なります」
「へぇ…そうなんだ?」
「必ずではなかったはずです」
それなら、両親に確認だけ取ってできるか…!楽しみだな!その前に…笑夢とのデート、どうしようかな。
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