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三階 権天使
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「すごい楽しそうな話をしているじゃない?混ぜてよ」
「恥ずかしいからやめてくれって!!」
智一のお母さんは化粧をして服装を普段着に着替えて登場した。え、俺のためにこんなにしてくれるの?それにしても…若々しいな。何歳なんだ?智一の恋バナ好きはここからきているのかもしれない。
「あ、どうぞ」
「では、失礼して…」
「肇?!いいの?!」
「だって、智一には申し訳ないけど解決できそうにないし…」
「うぐぐ…確かに。俺は話を聞いて楽しむタイプだ…。」
「ははは、私が必要じゃないかね?」
楽しそうなお母さんだ。こんな母親が家に居たら愉快なんだろうな。というか…話は聞かせてもらったってどこまで?!最初から筒抜けだったって事?聞き耳立ててたの?!ちょっと恥ずかしいな。
「喧嘩の話は、肇君からすると喧嘩って感じじゃないでしょ?」
「そうなんですよ」
「なん…だと?!」
「心のもやもやがあるってだけに聞こえるのよね」
なんだ?!エスパーか?!超能力者ってどこにでもいるのか?!俺…普通に話してたよね?というかやっぱりきっちりすべて聞こえていたのか…。思った以上に大きな声になっていたかもしれない。
「そうなんですよ」
「なんでそこまで分かるんだ?」
「年の功だよ!言わせるな!」
智一の頭をひっぱたく。ははは、本当に漫才を見ているみたいだ。変に飾っている大人じゃなくて、こういう大人になりたいかもしれない。周りを下げて笑いを取るのではなくて、自分のマイナスも面白可笑しく話せるような。
「私からは顔が怖いように見えないけどね?そもそも礼儀正しい子だと思うし」
「そんな…ないですよ」
「謙虚なのはいいけど、謙虚すぎるのはあまり良くないのよ?自分のモチベーションが下がっちゃったりするでしょ?」
「そうかもしれないですね」
「私だって年齢を気にしないの、いつだって気持ちよ」
「お母さんはお若く見えますよね」
「もう私も38でアラフォーよ?」
「あ、本当に若かった」
「ありがとう、本当にいい子だね」
お母さんは凄いニコニコしている。智一は複雑そうな顔をして俺らのやり取りを見ている。気の持ちようなのか、本当に若い。智一を産んでいるとは思えない程だ。20代と言われても飲み込めるだろう。
「自分のマイナスを笑いに変えるぐらいの気持ちが大事よ?」
「はい…顔が怖いと結構避けられてきまして…それでつい」
「智一?あんたももしかして避けてた?」
「う…う、ん」
「あんた!見た目じゃないって言ったでしょ?!」
「ご、ごめん」
「肇君、いい?大事なのは謝るんじゃなくて、言葉にすることよ?」
「言葉…」
「そう、向こうは気にしていないかもしれないけど、こっちが気にしていると軋轢が生まれたりするでしょ?嫌なものは嫌だと言いなさい?」
「わ、分かりました…」
諦めていたのかもしれない。顔が怖いと避けられているから。どうせ言ったって無駄だ、と。でも、無駄じゃない。言葉にしないと伝わらない事もある。今日だってそうしていたら良かったかもしれない。もしかしたら笑夢には気持ちは伝わっていたかもしれないけど。
「解決できそうかしら?」
「はい、とりあえず言葉にするために今日は帰ります」
「そう、なら良かったわ」
「肇、ごめんな」
「いいんだ、友達ができて良かったよ、智一」
「お、おう」
「お邪魔しました」
「また来なさいな」
そういって見送りをしてくれる。辺りはすっかり暗くなっていた。そのまま駅に向かい電車に乗る。笑夢は家に帰っているだろうか。帰っているんだろうな、第一声はどうしようか。そんなことを考える。
「う、気が重いな」
家の前に到着して息を整える。扉を開けると、笑夢はこちらに走ってくる。「ごめんなさい、あんなに気にするなんて思わなかったです」と言ってぎゅっと抱き着いてくる。想定していなかった、こんなに気にしてくれていたなんて。
「顔が怖いって、傷ついたよ?」
「ごめんなさい…まだネタには昇華できませんでしたか?」
「うん、まだ駄目だ。でも、これからはできそうだよ?」
「違う女の匂いがしますよ?」
笑夢は俺の事をクンクンと犬のように嗅ぐ。わお…これはこれで違う火種になりそうだ。でも、別に友達の母親だし…友達も居たからいいよね?友達の母親は恋愛対象にはならないよ?
「そうですか、なら良かったです」
「うん、俺もごめん。笑夢は気を使ってフォローしてくれたんだよね?」
「そのつもりだったんですけど、結果的に傷つけてしまいました」
笑夢は項垂れて反省しているように見える。あの場でフォローするってそういう風にしか出来ないか。俺の不器用な笑顔とかが怖がられる原因だったんだし。これからはちゃんとツッコむよ?誰の顔が怖いんや!って。
「それはそれで…違う気がしますね」
「え…本当?」
「お笑いを勘違いした人の発想みたいな…」
「うわぁ…笑いって難しい。」
そう言って二人で笑いあう。今日1日の厄日はこれで終わったのかな。
「恥ずかしいからやめてくれって!!」
智一のお母さんは化粧をして服装を普段着に着替えて登場した。え、俺のためにこんなにしてくれるの?それにしても…若々しいな。何歳なんだ?智一の恋バナ好きはここからきているのかもしれない。
「あ、どうぞ」
「では、失礼して…」
「肇?!いいの?!」
「だって、智一には申し訳ないけど解決できそうにないし…」
「うぐぐ…確かに。俺は話を聞いて楽しむタイプだ…。」
「ははは、私が必要じゃないかね?」
楽しそうなお母さんだ。こんな母親が家に居たら愉快なんだろうな。というか…話は聞かせてもらったってどこまで?!最初から筒抜けだったって事?聞き耳立ててたの?!ちょっと恥ずかしいな。
「喧嘩の話は、肇君からすると喧嘩って感じじゃないでしょ?」
「そうなんですよ」
「なん…だと?!」
「心のもやもやがあるってだけに聞こえるのよね」
なんだ?!エスパーか?!超能力者ってどこにでもいるのか?!俺…普通に話してたよね?というかやっぱりきっちりすべて聞こえていたのか…。思った以上に大きな声になっていたかもしれない。
「そうなんですよ」
「なんでそこまで分かるんだ?」
「年の功だよ!言わせるな!」
智一の頭をひっぱたく。ははは、本当に漫才を見ているみたいだ。変に飾っている大人じゃなくて、こういう大人になりたいかもしれない。周りを下げて笑いを取るのではなくて、自分のマイナスも面白可笑しく話せるような。
「私からは顔が怖いように見えないけどね?そもそも礼儀正しい子だと思うし」
「そんな…ないですよ」
「謙虚なのはいいけど、謙虚すぎるのはあまり良くないのよ?自分のモチベーションが下がっちゃったりするでしょ?」
「そうかもしれないですね」
「私だって年齢を気にしないの、いつだって気持ちよ」
「お母さんはお若く見えますよね」
「もう私も38でアラフォーよ?」
「あ、本当に若かった」
「ありがとう、本当にいい子だね」
お母さんは凄いニコニコしている。智一は複雑そうな顔をして俺らのやり取りを見ている。気の持ちようなのか、本当に若い。智一を産んでいるとは思えない程だ。20代と言われても飲み込めるだろう。
「自分のマイナスを笑いに変えるぐらいの気持ちが大事よ?」
「はい…顔が怖いと結構避けられてきまして…それでつい」
「智一?あんたももしかして避けてた?」
「う…う、ん」
「あんた!見た目じゃないって言ったでしょ?!」
「ご、ごめん」
「肇君、いい?大事なのは謝るんじゃなくて、言葉にすることよ?」
「言葉…」
「そう、向こうは気にしていないかもしれないけど、こっちが気にしていると軋轢が生まれたりするでしょ?嫌なものは嫌だと言いなさい?」
「わ、分かりました…」
諦めていたのかもしれない。顔が怖いと避けられているから。どうせ言ったって無駄だ、と。でも、無駄じゃない。言葉にしないと伝わらない事もある。今日だってそうしていたら良かったかもしれない。もしかしたら笑夢には気持ちは伝わっていたかもしれないけど。
「解決できそうかしら?」
「はい、とりあえず言葉にするために今日は帰ります」
「そう、なら良かったわ」
「肇、ごめんな」
「いいんだ、友達ができて良かったよ、智一」
「お、おう」
「お邪魔しました」
「また来なさいな」
そういって見送りをしてくれる。辺りはすっかり暗くなっていた。そのまま駅に向かい電車に乗る。笑夢は家に帰っているだろうか。帰っているんだろうな、第一声はどうしようか。そんなことを考える。
「う、気が重いな」
家の前に到着して息を整える。扉を開けると、笑夢はこちらに走ってくる。「ごめんなさい、あんなに気にするなんて思わなかったです」と言ってぎゅっと抱き着いてくる。想定していなかった、こんなに気にしてくれていたなんて。
「顔が怖いって、傷ついたよ?」
「ごめんなさい…まだネタには昇華できませんでしたか?」
「うん、まだ駄目だ。でも、これからはできそうだよ?」
「違う女の匂いがしますよ?」
笑夢は俺の事をクンクンと犬のように嗅ぐ。わお…これはこれで違う火種になりそうだ。でも、別に友達の母親だし…友達も居たからいいよね?友達の母親は恋愛対象にはならないよ?
「そうですか、なら良かったです」
「うん、俺もごめん。笑夢は気を使ってフォローしてくれたんだよね?」
「そのつもりだったんですけど、結果的に傷つけてしまいました」
笑夢は項垂れて反省しているように見える。あの場でフォローするってそういう風にしか出来ないか。俺の不器用な笑顔とかが怖がられる原因だったんだし。これからはちゃんとツッコむよ?誰の顔が怖いんや!って。
「それはそれで…違う気がしますね」
「え…本当?」
「お笑いを勘違いした人の発想みたいな…」
「うわぁ…笑いって難しい。」
そう言って二人で笑いあう。今日1日の厄日はこれで終わったのかな。
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