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二階 大天使

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 会計を終えて店を出る。もう、外は夕焼けに染まっていた。長い事わんわん王国に居たんだな。そろそろデートも終わりか。最初から最後まで緊張してて、体はかなり疲労している。
 「そろそろ…終わりですか?」
 笑夢は潤んだ目をして悲しそうに呟く。時間だからしょうがないけど…俺も少しだけ寂しさを感じるかもしれない。なんだろう、終わりって聞くと寂しくなるのは。それに、夕焼けの中って言うのも雰囲気が出ているのかな。
 「帰ろうかって言いづらいよ…また、来ようか?」
 「え、本当ですか?!」
 わぁ、見事に騙されたみたい。ずるいよ…あんな表情されたら誰だって言っちゃうと思う。楽しんでもらえたみたいだし、良かったかな。笑夢が俺の腕にぎゅっと抱き着いてくる。む、胸が当たる…ちょっと。
 「帰りましょうか?」
 「う、うん」
 最後までドキドキさせてくれるな…。嬉しいんだけどね?嬉しいんだけど…本当に困ったなぁ。駅まで二人で無言で歩く。なんて話せばいいか分からないし、疲労と胸の高鳴りで言葉も出てこない。
 「肇さんは…楽しかったですか?」
 「あ、うん。楽しかったよ」
 「本当ですか?!なら良かったです!」
 「笑夢も楽しめた?俺は笑夢に何も出来なかったけど」
 笑夢は悩んだ表情をする。え、あんなに楽しそうだったのに?!ダメだったかな…。やっぱり、言ってくれてはいたけど…男らしさが欲しかったかな?
 「肇さんの色々な表情が見れたので、ほんっとうに楽しかったですよ?」
 「はぁ…良かったぁ…」
 「男らしさは別に要らないです、だって私両性になれますからね?」
 「はっ?!そうだった…」
 「男の私はどうですか?」
 うん、かっこいいと思うけど。何かこう…背徳感というか、後ろめたさ的なものがあったりする。もし、好きになったら二つの姿を好きになるってことだし。なんか浮気しているみたいな感じになりそうで。
 「大丈夫ですよ?要望には応えられますので…」
 「う、なんて答えればいいのか…」
 「受け入れてくれればいいのです、安心してください!」
 「出来るか?!」
 「ふふふ、いいんです、余計な事は考えなくて!」
 「そう?かっこいいとは思うよ」
 「そうですか、良かったです!学校でしか使わない予定ですからね」
 一番手っ取り早いと思う。友達を作るって、どういう方法だろう?と思ったけど、学校で仲介役をやってくれるなんて。最初こそ、驚いたけど、クラスメイトは名前を憶えてくれたし…って俺が覚えられてない!!まずいな…
 「教えましょうか?覚えてますけど…」
 「ええ?!あんなに囲まれていつの間に聞いたの?」
 「見たら覚えました」
 もう、驚かない。トンデモ能力が山ほどある、と思っておこう。教えてもらうって言っても…クラスメイト約30人全員分を…一晩で?俺は…覚えられないと思う。頭が爆発するんじゃないかな。
 「頭に直接書き込みますか?」
 「え?!こっわ?!」
 「もしかしたら…ゆで卵みたいに破裂する可能性も…」
 「電子レンジ?!レンジだけは勘弁してください…」
 「ふふふ、しませんよ。なんで大事な人を失わなくてはならないのですか!」
 「え、爆発は冗談じゃないんだ?」
 「う~ん…多分しませんけど、何が起こるか分からないですからね?」
 「うわぁ…手術の誓約書と同じ気持ちになるんだ」
 責任は取れません…って。そんな不安な気持ちになるなら、ちゃんとクラス名簿見て覚えるよ。笑夢ははにかんで頷いている。同じ苗字の人とかいっぱい居るんだろうな…下の名前まで覚えよう。
 「佐藤さん6人、鈴木さん3人、高橋さん4人、田中さん5人ぐらいですかね?」
 「え?それだけで18人?うわぁ…絶望だ」
 「大丈夫ですよ、苗字だけ一緒ですから」
 「12人の方から覚えようかな」
 「肇さんって珍しい方ですよね?」
 「そうだね、谷古宇って聞いたことないし」
 「全国に1500人程しか存在しないですからね」
 「へぇ…え?何?調べたの?」
 「いえ、思い出しました」
 珍しい苗字のおかげで人から名前を覚えられることは多かった。主に悪い方にだけど。今は少しだけ状況が変わってきたから、1500人しかいないなら嬉しいかもしれない。
 電車のアナウンスと同時にホームに電車が入ってくる。それに乗り込んで家の方へ帰る。デートは良く考えてみればあっという間に終わってしまった。楽しかったけれど、緊張で記憶がほとんどない。
 「さて、夕飯は何にしましょうか?」
 「何がいいかな…なんでもいいかも?」
 「もう…倦怠期ですか?」
 「え、ごめん?何か、思い浮かばなくて」
 「仕方ないですね…ハンバーグにしますか?」
 「うん、ありがとう」
 笑夢の作ってくれたハンバーグに舌鼓し、初デートは成功?という形で終わった。
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