17 / 47
Side 1ーOne way loveー
10(今泉翠)
しおりを挟む次の日出社すると、女性社員囲まれる一人の男がいる。
「え、どうしたんですか?イメチェン?」
「なんかかっこいい。絶対この方がいいです。」
「そうかな?」と照れながら受け答えしているのはいつものボサボサ頭で丸メガネを外し、しっかり髪の毛をセットしメガネを外し、きっちりとしたワイシャツにネクタイとパンツを合わせていた。
「あれはギャップ萌すぎる。瀬戸口さん仕事できるし話、面白いし。一気にポイント上がったわ~~」
とコソコソと話す女子社員の言葉は丸聞こえだ。
手のひらを返したように瀬戸口を褒める彼女たちに女の怖さを改めて思い知らされてしまう。
顔より性格か、性格より顔かなんて質問があったりするけれど「顔より性格」だと建前で言っておきながら結局は顔が一番なんだよねと皮肉なことを考えながらも彼女たちの中に混ざってどこが「かっこいい」かを言い合いたいものだ。
なんて考えてしまう私は結構、瀬戸口のことが好きなんだと思う。
いや、大好きだと思う。
私たちは恋人同士になった。
あんなに愛の言葉を囁いたくせに満更でもない顔をしているのは少し腹が立つ。
私は瀬戸口と目があったがすぐにそらした。
もっと申し訳なさそうな顔をしたり、冷たい態度をとればそれで私が満足したのかといえばそうでもないのかもしれないけれど、大人な振る舞いをできない自分が嫌だ。
仕事の間も、普段は気にすることのなかった存在を、必死に目で追ってしまう。
当然のごとく、今日の仕事は全くと言っていいほど集中できなかった。
これは、今後に差し支えがでてしまうレベルまで達している。
しかし、考えないようにすればするほど気になってしまう私がいる。
仕事が終わり会社を後にすると瀬戸口が追いかけてきた。
「なんで怒ってるの?あ・・・もしかして嫉妬してる?
うわーーー嬉しい~~。でも安心して。俺は翠以外興味ないから!!それにしてもみんな薄情だよね~~~。今まで俺に全く興味なかった人たちがあんなに態度豹変するんだもん。」
とヘラヘラ笑いながら言う瀬戸口にとても腹が立つ。
私は、ネクタイを引っ張りキスをした。
「すごく嫌だった。」
その後、瀬戸口は満足げな顔していた。「ツンデレ最高~~~」
「ねえ、やっぱりチャラい。そう言うノリやだ」
「いいじゃん。今日は俺のうち来てくれる?なにもしないから前みたいにお泊りしていってよ。
朝まで一緒にいたい。」
瀬戸口は私の髪を優しく撫でて、抱き寄せてキスをする。
次第に舌を絡めて、息ができなくなる。
かつての私は『キスが上手い人』というのが理解できなかった。キスに上手いも下手もあるのだろうか。
ただ、唇と唇をくっつけるだけくらいに思っていたし、今までそんなキスしかしたことがなかった。
でも、瀬戸口は違う。
このまま、誰もいない私たちだけの空間ならばそのまま体を預けたくなってしまうほど感情が高ぶっていくキス。
女の私でもちゃんと「性欲」というものが存在しているということを実感させられてしまう。
次第に、それが怖くなる。
今まで何人の女をこういう気持ちにさせてきたのだろう。
私に、片思いをしていたと言ってはいたが、こんなキスをしてくる男が女経験ゼロだなんて信じがたい。
(ああ、悔しい。なんかムカつく。瀬戸口のくせに)
私は、止まらなくなるキスを自分から唇を話中断した。
瀬戸口は、流し目で私を見る。
(こんな男みたいな顔するんだ)
「まだ、無理・・・」
「そっか、そっか・・・ごめん・・・」
そういって瀬戸口は後ろから抱きしめる。
この数日間の間で周りを取り巻く変化に私はついていけないのだ。
私は、流されたな負けな気がして今日も自宅まで送ってもらい何もせずに帰る。こんな日が何日が続いた。
処女もここまでくると「成り行き」で終わらせるのが嫌なのだ。
それでいて、今キスだけでこうの状態なのにその先に進んだ時に瀬戸口がどうなってしまうのか・・・
今まで、『同期』としか見てこなかった人が突然『男』になったことに私はまだ戸惑っている。
0
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
こじらせ女子の恋愛事情
あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26)
そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26)
いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。
なんて自らまたこじらせる残念な私。
「俺はずっと好きだけど?」
「仁科の返事を待ってるんだよね」
宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。
これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。
*******************
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
Perverse second
伊吹美香
恋愛
人生、なんの不自由もなく、のらりくらりと生きてきた。
大学三年生の就活で彼女に出会うまでは。
彼女と出会って俺の人生は大きく変化していった。
彼女と結ばれた今、やっと冷静に俺の長かった六年間を振り返ることができる……。
柴垣義人×三崎結菜
ヤキモキした二人の、もう一つの物語……。
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
同居離婚はじめました
仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。
なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!?
二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は…
性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
景華
恋愛
顔いっぱいの眼鏡をかけ、地味で自身のない水無瀬海月(みなせみつき)は、部署内でも浮いた存在だった。
そんな中初めてできた彼氏──村上優悟(むらかみゆうご)に、海月は束の間の幸せを感じるも、それは罰ゲームで告白したという残酷なもの。
真実を知り絶望する海月を叱咤激励し支えたのは、部署の鬼主任、和泉雪兎(いずみゆきと)だった。
彼に支えられながら、海月は自分の人生を大切に、自分を変えていこうと決意する。
自己肯定感が低いけれど芯の強い海月と、わかりづらい溺愛で彼女をずっと支えてきた雪兎。
じれながらも二人の恋が動き出す──。
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる