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Side 1ーOne way loveー

10(今泉翠)

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次の日出社すると、女性社員囲まれる一人の男がいる。

「え、どうしたんですか?イメチェン?」

「なんかかっこいい。絶対この方がいいです。」

「そうかな?」と照れながら受け答えしているのはいつものボサボサ頭で丸メガネを外し、しっかり髪の毛をセットしメガネを外し、きっちりとしたワイシャツにネクタイとパンツを合わせていた。

「あれはギャップ萌すぎる。瀬戸口さん仕事できるし話、面白いし。一気にポイント上がったわ~~」

とコソコソと話す女子社員の言葉は丸聞こえだ。
手のひらを返したように瀬戸口を褒める彼女たちに女の怖さを改めて思い知らされてしまう。
顔より性格か、性格より顔かなんて質問があったりするけれど「顔より性格」だと建前で言っておきながら結局は顔が一番なんだよねと皮肉なことを考えながらも彼女たちの中に混ざってどこが「かっこいい」かを言い合いたいものだ。
なんて考えてしまう私は結構、瀬戸口のことが好きなんだと思う。
いや、大好きだと思う。

私たちは恋人同士になった。

あんなに愛の言葉を囁いたくせに満更でもない顔をしているのは少し腹が立つ。

私は瀬戸口と目があったがすぐにそらした。
もっと申し訳なさそうな顔をしたり、冷たい態度をとればそれで私が満足したのかといえばそうでもないのかもしれないけれど、大人な振る舞いをできない自分が嫌だ。

仕事の間も、普段は気にすることのなかった存在を、必死に目で追ってしまう。
当然のごとく、今日の仕事は全くと言っていいほど集中できなかった。
これは、今後に差し支えがでてしまうレベルまで達している。
しかし、考えないようにすればするほど気になってしまう私がいる。


仕事が終わり会社を後にすると瀬戸口が追いかけてきた。

「なんで怒ってるの?あ・・・もしかして嫉妬してる?
うわーーー嬉しい~~。でも安心して。俺は翠以外興味ないから!!それにしてもみんな薄情だよね~~~。今まで俺に全く興味なかった人たちがあんなに態度豹変するんだもん。」
とヘラヘラ笑いながら言う瀬戸口にとても腹が立つ。

私は、ネクタイを引っ張りキスをした。

「すごく嫌だった。」

その後、瀬戸口は満足げな顔していた。「ツンデレ最高~~~」

「ねえ、やっぱりチャラい。そう言うノリやだ」

「いいじゃん。今日は俺のうち来てくれる?なにもしないから前みたいにお泊りしていってよ。
朝まで一緒にいたい。」

瀬戸口は私の髪を優しく撫でて、抱き寄せてキスをする。
次第に舌を絡めて、息ができなくなる。
かつての私は『キスが上手い人』というのが理解できなかった。キスに上手いも下手もあるのだろうか。
ただ、唇と唇をくっつけるだけくらいに思っていたし、今までそんなキスしかしたことがなかった。
でも、瀬戸口は違う。
このまま、誰もいない私たちだけの空間ならばそのまま体を預けたくなってしまうほど感情が高ぶっていくキス。
女の私でもちゃんと「性欲」というものが存在しているということを実感させられてしまう。

次第に、それが怖くなる。
今まで何人の女をこういう気持ちにさせてきたのだろう。
私に、片思いをしていたと言ってはいたが、こんなキスをしてくる男が女経験ゼロだなんて信じがたい。

(ああ、悔しい。なんかムカつく。瀬戸口のくせに)

私は、止まらなくなるキスを自分から唇を話中断した。
瀬戸口は、流し目で私を見る。

(こんな男みたいな顔するんだ)

「まだ、無理・・・」

「そっか、そっか・・・ごめん・・・」
そういって瀬戸口は後ろから抱きしめる。
この数日間の間で周りを取り巻く変化に私はついていけないのだ。
私は、流されたな負けな気がして今日も自宅まで送ってもらい何もせずに帰る。こんな日が何日が続いた。
処女もここまでくると「成り行き」で終わらせるのが嫌なのだ。
それでいて、今キスだけでこうの状態なのにその先に進んだ時に瀬戸口がどうなってしまうのか・・・
今まで、『同期』としか見てこなかった人が突然『男』になったことに私はまだ戸惑っている。

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