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プロローグ
プロローグ
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大都会東京
某オフィスの中のスタジオでは、カメラのシャッター音が鳴り響く。
次から次へとポージングを変えていくモデルは、緊張した面持ちでカメラのレンズを見つめる。
白く透き通った肌に、細長い手足にくりっととした瞳の色はカラーコンタクトをしているようで、明るいブラウンと深いグリーンの中間の色であるヘーゼルカラーで、髪の色の色素も薄い。
すっと通った鼻筋と、形の良い胸は色気を感じさせながらも、赤くて小さな赤い唇や時折見せる無邪気な笑顔は、子供のようなあどけなさを残している。
照明に照らされて儚く消えていってしまいそうな姿は、まるでおとぎ話に出てくる「妖精」のようだ。
しかし、普通の雑誌のモデルと違うのは「下着」だけを身にまとっていること。
時折、手やサングラスなどの小道具で顔を隠す。
「はーい菜奈ちゃん。いいねー」
「かわいいよー」
「笑顔ちょうだい」
とカメラマンがおだてながら、彼女は真剣な眼差しでカメラを見つめる。
彼女の名前は、藤崎菜奈15歳
中学を卒業してもうすぐ花の女子高生。
彼女の色気と美しさはつい先日まで中学生の制服を着ていたとは思えないレベルであり、撮影に関わるスタッフは皆息を飲む。
*
数か月前
「私が下着モデル?うそでしょ?」
私は、自分が普段出す声量の倍以上の声で言う。
「お願い。菜奈じゃなきゃ嫌なの」
そう言ったのは、私の母である藤崎真理子だ。
背が高くスタイルが良くて美人の日本とアメリカのハーフで私はクォーター。
細長いきれいな手を合わせて、私を見つめた。
「え~だって、いろんな人にあたしの体をさらけ出すんでしょ?」
うんざりした顔で私は言う。
(ママは、いつも突然、いつも自分勝手)
「大丈夫、顔はださない約束だから!お願い!バイトだと思って?」
(まあ、これから一人暮らしなきゃだし、バイトしようと思ってたしいっか・・・)
私は渋々了承する。
母は自分の要求を必ず突き通す人だからいくら私が駄々をこねようと時間と労力の無駄なのだ。
「中学を卒業したら、すぐに東京に戻るわよ」
用件を伝えたかと思えば、すぐに母は仕事へ戻って行く。
母は仕事人間だ。
それには理由がある。
私がまだ2歳だった時、父は、飛行機事故で亡くなった。
母はかつてモデルをしていたが私を出産と同時にモデルをやめて専業主婦だったが、父の死をきっかけにすぐにモデル業に復帰して女で一つ、私を育てた。
それと同時進行で下着ブランド「nana.」を立ち上げた。
初めのころは全くと言っていいほど売れず、雑誌の片隅にちょこっと乗っているくらいだった。
でも、徐々に人気が出てきて、お店もできて、気が付けば季節ごとにカタログが出るくらいになっていた。
母はどんどん忙しくなり、私はほとんど家に帰らなかった。
中学に上がると同時に、長野の母の実家に預けられて、中学校の三年間は母の実家で祖父母と過ごした。
その三年間が私にとっても印象深い。
東京の狭いアパートで帰ってこない母親を待つよりも、家に帰れば必ず祖父母が迎え入れてくれて温かいご飯が食べられるし、友人たちにも恵まれた。
一切私の様子を見にこなかった母は、突然私にモデルを頼み、東京の高校を受験させたのだからなんて自分勝手な母親だろうかと誰しもが思うだろう。
しかし、私は嬉しかったのだ。
母に必要とされることや、母の仕事に関われることが・・・
結局のところ私ははは尊敬している。
誰よりもカッコ良くて、私も母のようになりたいと思う。
でも、自分が母親になれた時は、もっと子供との時間を作りたいけどね・・・
顔は一切出さない下着モデルとして・・・
撮影のお昼休憩の時間、近くのコンビニに立ち寄った。
そこには雑誌を見て話す女子高生が大きな声で話している。
「nana.の下着いつもかわいいよね~」
「確かに、てかこのモデルの子、いつもサングラスしたり顔ださなくて体だけじゃね?」
「実際、顔がぶすだからじゃね?」
「体だけってやつ?」
とカタログをめくりながら大きな声で笑っていた。
私は、女子高生に見つからないようにそそくさとコンビニを後にした。
見上げた空は濁っていて、空気は排気ガスのにおいがする。
私は、人波をかき分けながら撮影をしているオフィスに向かって歩き出した。
「モデルの仕事に興味ありませんか?」
コンビニから出ると、スーツを着た男が声をかけてきたかと思えば、次は芸能プロダクションのスカウトが「タレントになりませんか?」と声をかける。
私は、断るがその男は強引に名刺を渡す。
(東京は怖い・・・長野ではこんなことないのに・・・)
一歩外に出ればそこは無法地帯。
人が波のように押し寄せて、行き交う男たちが私を珍しいもののように見る。
髪の色や、目の色が特殊だから。
こんな息もできないようなこの場所で私は生きていけるのだろうか・・・
「菜奈ちゃん、また有名どころの事務所から名刺もらったんだって?モデルやればいいのに~その辺の読モと比べると桁違いの可愛さだよ。」
カメラマンが陽気に話しかける。
「もう、他の事務所になんて渡すわけないでしょ!高校卒業まではしっかり勉強してもらわなくちゃ。」
と母は私の頭を撫でながら言う。
「さあ、もう少し頑張りましょう」
母は軽快に手を叩きながら声をかけると、また現場に緊張感が走る。
先ほどの高校生が読んでいたものはカタログだ。
下着のカタログであるはずなのに、まるでおとぎ話の絵本のページをめくっているかのような世界観で、読んでいる女の子の心を引きつける。
母はすごい・・・・
カシャ
「はーいオッケーでーす」
最後の一枚の撮影が終わり、一斉に片付けが始まった。
「お疲れ様でした。ありがとうございましたー」
私は、すれ違うスタッフに声をかけていると母がやってきた。
「菜奈、よかったわよ~。すっかり色気も出てきちゃって~」
「ありがとう」
「じゃあ、ママはまだ仕事あるから、送ってあげられないけど気を付けて帰るのよ!
きょろきょろしてると変な人に連れてかれちゃうから気をつけるのよ!まあ、練習だと思って頑張って。」
「うん。大丈夫だよ・・」
撮影は好き、楽しい、下着もかわいい・・・恥ずかしさもなくなった。
でも、東京の人混みはいまだになれない・・・
看板がありすぎて迷ってしまう・・・無事に家にたどり着けるだろうか・・・?
このスタジオからタクシーを使うほどではない。
外にでるとあたりは真っ暗になっていた。
帰路には大通りがあり、夜になっても人通りが多かった。
(ここからこう行けばこの道があって・・・・・あれ?ここどこ? この前来た道と違う!)
スマホの地図のアプリを起動するも、方向が分からない。
コンビニも同じようなコンビニが立ち並び、景色が同じに見える。
「ねえ、ねえ、一人?」
後ろを振り返ると、高校生ぐらいの男子3人組に声をかけられた。
3人ともハイトーンの髪色に、ストリート系ブランドのロゴの入った服を着ている。
「超かわい~~~これからどこ行くの?」
「お兄さんたちとあーそぼ!」
いきなり話しかけられた私はびっくりして声が出ない。
「・・・」
目を合わさないようにして、その場を立ち去ろうとした。
「いいじゃん。せめて、ID教えてよ~」
男たちは、私の腕をつかんだ。
「こっこまります!」
(・・・・もうだめだ・・・怖いよ・・・)
「やば、反応もマジかわいいじゃん!」
(・・・どうしよう・・・こういうときどうすればいいの?)
その時
私の腕をつかんでいた手ががはなれた。
見上げると長身でスーツがよく似合う、黒髪の黒縁メガネをかけた20代前半ぐらいのイケメンが、その男たちの腕をつかんでいた。
「お前ら何、下手なナンパしてんだよ。困ってるだろ?」
「やべ、かっしーじゃん。」
なぜか、その男は、ニックネームで呼ばれていた。
「早く帰れよ!」
「はいはい。わかりましたよー」
といって高校生たちはそそくさと、歩き出した。
(・・・・え?なんでこんないさぎよく?・・・・)
「じゃーね」
イケメンは、高校生に手を振った。
(・・・・・何?この人・・・超かっこいい)
「大丈夫だった?」
そのイケメンは私に問う。
「はっはい。ありがとうございます・・・」
私は俯いたままお礼を言った。
(・・・・どうしよう、恥ずかしすぎる・・・)
「アイツら、悪い奴らじゃねーから。びっくりさせてごめんな。」
とにこっと笑った。
「いいえ・・・」
(・・・笑顔やばい・・・・)
「てか、なんでかわいい子が一人でこんなとこ歩いてるの?一歩奥行けば、キャッチされるよ」
(・・・キャッチ(田舎者だから分からない)ってなんだ・・・?まあいっか・・)
「家に帰りたいけど、道に迷ってしまって・・・」
「あぶないな~。春からこっちで新生活的なね・・・見ず知らずの人に住所教えるのもどうかと思うけど、どこなの家?・・・送るよ」
私は、たどり着かない地図アプリの行き先の住所をそのイケメンに見せる。
イケメンは、その住所を見るとハッとした顔をする。
「ん・・・・ここ俺とおんなじマンションなんだけど。」
少し考えた後に、思い出したかのようにそのイケメンは私に問う。
「もしかして君って、隣に新しく引っ越してきた人?」
「あ。ご挨拶が遅れてすみません藤崎です。よろしくお願いします。」
ぺこりと私は頭を下げた。
「俺、柏原っす。よろしく!この前、いなかったからさ、お菓子ありがとうね。」
「いえ、とんでもない。」
どうやら、柏原というイケメンは、私と同じマンションのひとで、なおかつ隣の部屋ということらしい。
私は、彼の後ろを歩き、大通りを抜けて、マンションまでたどり着いた。
「進学でこっちきたの?」
「あっはい。」
「そっか。まあ、何かこまったことがあったらいつでも聞いて」
「ありがとうございます。」
他愛のない会話を繰り返し、気が付けばあっという間に、部屋の前についていた。
(楽しい時間ってあっという間だな・・・・)
「柏原さん・・・今日はほんとうにありがとうございました。」
「いーえ。今日はゆっくり休んでね。おやすみ」
「おやすみなさい・・・」
私たちは、それぞれの部屋に入って行った。
(・・・なになにあのかっこいいひと!優しすぎるよ・・・)
胸の鼓動が鳴りやまなかった。
某オフィスの中のスタジオでは、カメラのシャッター音が鳴り響く。
次から次へとポージングを変えていくモデルは、緊張した面持ちでカメラのレンズを見つめる。
白く透き通った肌に、細長い手足にくりっととした瞳の色はカラーコンタクトをしているようで、明るいブラウンと深いグリーンの中間の色であるヘーゼルカラーで、髪の色の色素も薄い。
すっと通った鼻筋と、形の良い胸は色気を感じさせながらも、赤くて小さな赤い唇や時折見せる無邪気な笑顔は、子供のようなあどけなさを残している。
照明に照らされて儚く消えていってしまいそうな姿は、まるでおとぎ話に出てくる「妖精」のようだ。
しかし、普通の雑誌のモデルと違うのは「下着」だけを身にまとっていること。
時折、手やサングラスなどの小道具で顔を隠す。
「はーい菜奈ちゃん。いいねー」
「かわいいよー」
「笑顔ちょうだい」
とカメラマンがおだてながら、彼女は真剣な眼差しでカメラを見つめる。
彼女の名前は、藤崎菜奈15歳
中学を卒業してもうすぐ花の女子高生。
彼女の色気と美しさはつい先日まで中学生の制服を着ていたとは思えないレベルであり、撮影に関わるスタッフは皆息を飲む。
*
数か月前
「私が下着モデル?うそでしょ?」
私は、自分が普段出す声量の倍以上の声で言う。
「お願い。菜奈じゃなきゃ嫌なの」
そう言ったのは、私の母である藤崎真理子だ。
背が高くスタイルが良くて美人の日本とアメリカのハーフで私はクォーター。
細長いきれいな手を合わせて、私を見つめた。
「え~だって、いろんな人にあたしの体をさらけ出すんでしょ?」
うんざりした顔で私は言う。
(ママは、いつも突然、いつも自分勝手)
「大丈夫、顔はださない約束だから!お願い!バイトだと思って?」
(まあ、これから一人暮らしなきゃだし、バイトしようと思ってたしいっか・・・)
私は渋々了承する。
母は自分の要求を必ず突き通す人だからいくら私が駄々をこねようと時間と労力の無駄なのだ。
「中学を卒業したら、すぐに東京に戻るわよ」
用件を伝えたかと思えば、すぐに母は仕事へ戻って行く。
母は仕事人間だ。
それには理由がある。
私がまだ2歳だった時、父は、飛行機事故で亡くなった。
母はかつてモデルをしていたが私を出産と同時にモデルをやめて専業主婦だったが、父の死をきっかけにすぐにモデル業に復帰して女で一つ、私を育てた。
それと同時進行で下着ブランド「nana.」を立ち上げた。
初めのころは全くと言っていいほど売れず、雑誌の片隅にちょこっと乗っているくらいだった。
でも、徐々に人気が出てきて、お店もできて、気が付けば季節ごとにカタログが出るくらいになっていた。
母はどんどん忙しくなり、私はほとんど家に帰らなかった。
中学に上がると同時に、長野の母の実家に預けられて、中学校の三年間は母の実家で祖父母と過ごした。
その三年間が私にとっても印象深い。
東京の狭いアパートで帰ってこない母親を待つよりも、家に帰れば必ず祖父母が迎え入れてくれて温かいご飯が食べられるし、友人たちにも恵まれた。
一切私の様子を見にこなかった母は、突然私にモデルを頼み、東京の高校を受験させたのだからなんて自分勝手な母親だろうかと誰しもが思うだろう。
しかし、私は嬉しかったのだ。
母に必要とされることや、母の仕事に関われることが・・・
結局のところ私ははは尊敬している。
誰よりもカッコ良くて、私も母のようになりたいと思う。
でも、自分が母親になれた時は、もっと子供との時間を作りたいけどね・・・
顔は一切出さない下着モデルとして・・・
撮影のお昼休憩の時間、近くのコンビニに立ち寄った。
そこには雑誌を見て話す女子高生が大きな声で話している。
「nana.の下着いつもかわいいよね~」
「確かに、てかこのモデルの子、いつもサングラスしたり顔ださなくて体だけじゃね?」
「実際、顔がぶすだからじゃね?」
「体だけってやつ?」
とカタログをめくりながら大きな声で笑っていた。
私は、女子高生に見つからないようにそそくさとコンビニを後にした。
見上げた空は濁っていて、空気は排気ガスのにおいがする。
私は、人波をかき分けながら撮影をしているオフィスに向かって歩き出した。
「モデルの仕事に興味ありませんか?」
コンビニから出ると、スーツを着た男が声をかけてきたかと思えば、次は芸能プロダクションのスカウトが「タレントになりませんか?」と声をかける。
私は、断るがその男は強引に名刺を渡す。
(東京は怖い・・・長野ではこんなことないのに・・・)
一歩外に出ればそこは無法地帯。
人が波のように押し寄せて、行き交う男たちが私を珍しいもののように見る。
髪の色や、目の色が特殊だから。
こんな息もできないようなこの場所で私は生きていけるのだろうか・・・
「菜奈ちゃん、また有名どころの事務所から名刺もらったんだって?モデルやればいいのに~その辺の読モと比べると桁違いの可愛さだよ。」
カメラマンが陽気に話しかける。
「もう、他の事務所になんて渡すわけないでしょ!高校卒業まではしっかり勉強してもらわなくちゃ。」
と母は私の頭を撫でながら言う。
「さあ、もう少し頑張りましょう」
母は軽快に手を叩きながら声をかけると、また現場に緊張感が走る。
先ほどの高校生が読んでいたものはカタログだ。
下着のカタログであるはずなのに、まるでおとぎ話の絵本のページをめくっているかのような世界観で、読んでいる女の子の心を引きつける。
母はすごい・・・・
カシャ
「はーいオッケーでーす」
最後の一枚の撮影が終わり、一斉に片付けが始まった。
「お疲れ様でした。ありがとうございましたー」
私は、すれ違うスタッフに声をかけていると母がやってきた。
「菜奈、よかったわよ~。すっかり色気も出てきちゃって~」
「ありがとう」
「じゃあ、ママはまだ仕事あるから、送ってあげられないけど気を付けて帰るのよ!
きょろきょろしてると変な人に連れてかれちゃうから気をつけるのよ!まあ、練習だと思って頑張って。」
「うん。大丈夫だよ・・」
撮影は好き、楽しい、下着もかわいい・・・恥ずかしさもなくなった。
でも、東京の人混みはいまだになれない・・・
看板がありすぎて迷ってしまう・・・無事に家にたどり着けるだろうか・・・?
このスタジオからタクシーを使うほどではない。
外にでるとあたりは真っ暗になっていた。
帰路には大通りがあり、夜になっても人通りが多かった。
(ここからこう行けばこの道があって・・・・・あれ?ここどこ? この前来た道と違う!)
スマホの地図のアプリを起動するも、方向が分からない。
コンビニも同じようなコンビニが立ち並び、景色が同じに見える。
「ねえ、ねえ、一人?」
後ろを振り返ると、高校生ぐらいの男子3人組に声をかけられた。
3人ともハイトーンの髪色に、ストリート系ブランドのロゴの入った服を着ている。
「超かわい~~~これからどこ行くの?」
「お兄さんたちとあーそぼ!」
いきなり話しかけられた私はびっくりして声が出ない。
「・・・」
目を合わさないようにして、その場を立ち去ろうとした。
「いいじゃん。せめて、ID教えてよ~」
男たちは、私の腕をつかんだ。
「こっこまります!」
(・・・・もうだめだ・・・怖いよ・・・)
「やば、反応もマジかわいいじゃん!」
(・・・どうしよう・・・こういうときどうすればいいの?)
その時
私の腕をつかんでいた手ががはなれた。
見上げると長身でスーツがよく似合う、黒髪の黒縁メガネをかけた20代前半ぐらいのイケメンが、その男たちの腕をつかんでいた。
「お前ら何、下手なナンパしてんだよ。困ってるだろ?」
「やべ、かっしーじゃん。」
なぜか、その男は、ニックネームで呼ばれていた。
「早く帰れよ!」
「はいはい。わかりましたよー」
といって高校生たちはそそくさと、歩き出した。
(・・・・え?なんでこんないさぎよく?・・・・)
「じゃーね」
イケメンは、高校生に手を振った。
(・・・・・何?この人・・・超かっこいい)
「大丈夫だった?」
そのイケメンは私に問う。
「はっはい。ありがとうございます・・・」
私は俯いたままお礼を言った。
(・・・・どうしよう、恥ずかしすぎる・・・)
「アイツら、悪い奴らじゃねーから。びっくりさせてごめんな。」
とにこっと笑った。
「いいえ・・・」
(・・・笑顔やばい・・・・)
「てか、なんでかわいい子が一人でこんなとこ歩いてるの?一歩奥行けば、キャッチされるよ」
(・・・キャッチ(田舎者だから分からない)ってなんだ・・・?まあいっか・・)
「家に帰りたいけど、道に迷ってしまって・・・」
「あぶないな~。春からこっちで新生活的なね・・・見ず知らずの人に住所教えるのもどうかと思うけど、どこなの家?・・・送るよ」
私は、たどり着かない地図アプリの行き先の住所をそのイケメンに見せる。
イケメンは、その住所を見るとハッとした顔をする。
「ん・・・・ここ俺とおんなじマンションなんだけど。」
少し考えた後に、思い出したかのようにそのイケメンは私に問う。
「もしかして君って、隣に新しく引っ越してきた人?」
「あ。ご挨拶が遅れてすみません藤崎です。よろしくお願いします。」
ぺこりと私は頭を下げた。
「俺、柏原っす。よろしく!この前、いなかったからさ、お菓子ありがとうね。」
「いえ、とんでもない。」
どうやら、柏原というイケメンは、私と同じマンションのひとで、なおかつ隣の部屋ということらしい。
私は、彼の後ろを歩き、大通りを抜けて、マンションまでたどり着いた。
「進学でこっちきたの?」
「あっはい。」
「そっか。まあ、何かこまったことがあったらいつでも聞いて」
「ありがとうございます。」
他愛のない会話を繰り返し、気が付けばあっという間に、部屋の前についていた。
(楽しい時間ってあっという間だな・・・・)
「柏原さん・・・今日はほんとうにありがとうございました。」
「いーえ。今日はゆっくり休んでね。おやすみ」
「おやすみなさい・・・」
私たちは、それぞれの部屋に入って行った。
(・・・なになにあのかっこいいひと!優しすぎるよ・・・)
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