御曹司と地下アイドル〜一線を越えた夜〜

許されない二人

４（拓也視点）

朝目覚めると、隣で眠る奏の可愛い寝顔を見ていると目が開いてすぐに奏は飛び起きた。

「なんで隣で寝てるの？」

寝癖とキャミソールの肩紐がずれた無防備な姿がたまらなくエロい。

「昨日一緒にいた子に後はお願いって言われたから」

「こんなところにいたらダメだって・・・GPSとかつけられてたらどうするの？」

よくわからないことを言い出した奏に、俺は首を傾げる。

「何があったか詳しく教えてもらえる？」

口止めをされているらしくなかなか口を開かなかったが、懇願した結果昨日の出来事をぽつりぽつりと話した。

『縁談した相手を妊娠している』『子供のために別れて欲しいと言われた。』と言うワードに思わず気絶しそうになる。

俺がいつどのタイミングで奏以外の女と子作りしたって？

「証拠は見せてもらったの？エコー写真とか、母子手帳とか・・・」

奏は首を横にふる。「でも、つわりが辛そうで・・・」

「怖いわ・・・なんでそんなの信じたの？
妊娠って空気感染なの？俺、あの子と一回しか会ったことないんだけど・・・しかも、向こうの両親もいる状態で・・・え・・・今時の子恐ろしい・・・・」

奏はむすっとして黙り込んだかと思えば安堵の涙を流す。


「奏以外の女なんて、抱けるわけないだろ・・・馬鹿・・・」

久しぶりに触れた奏の髪と柔らかい肌に理性が崩壊する。

「嘘だ・・・絶対・・・」

「本当だって・・・」

「拓也のことは信じられない。」

「いや、それがさ・・・俺、高校の時に付き合った彼女を最後に、エッチが出来なくなったんだよね。勃たなくて・・・」

奏は心配そうに顔を覗き込む。

「病気とか？」

「いや、お前のせいだよ。奏に入れ込みすぎてリアルな恋愛ができなくなった。だから俺はいつも奏の写真とか動画で抜いてたんだよ。」

勢いでそう言ってしまった俺を軽蔑の眼差しで見る。

「ごめんごめん、気持ち悪いよね・・・」

「もう気持ち悪いのは知ってる。」

「てめ～～」

そう言った俺の唇を奪った。奏からキスをしてくるのは大変珍しいことで俺も黙り込んでしまう。

「疑ってごめん・・・それから、正直にいうね。私は昨日、拓也が会った男の人とキスしたの。
拓也が私以外の女の人と結婚して、子供を産んで幸せになるんだって思ったら正気ではいられなくて・・・
裏切ったの・・・」

奏は、目を潤ませながら視線を落とす。

「どうでもいいよそんなの・・・」

どうでもいいだなんて思えなかった。本当はめちゃくちゃ動揺している。

もし仮に、昨日の夜にこの場にいなければ奏は今頃あの男と付き合うことになって、体の関係になっていたと思う。

当然のことながら他の男に触れられるのは死ぬほど嫌だけれど、奏がその男に心を奪われてしまう方が嫌だ。
それにしても、あの男『指一本触れてない』って言っていたけれど嘘じゃないか。

（あの野郎！！！ふざけんな！！）

「で、奏はどうしたいの・・・？その男と付き合いたいの？」

そんな聞き方しかできなかった。
奏は、静かに微笑んで俺の手を握る。

「そんなわけないでしょ。嫌だよ。あんないじめっ子。」

「男は好きだからいじめたくなるんだよ。」

奏の細い首にをなぞり、噛み付くようなキスをうなじにする。

「拓也にだったら、いくらいじめられてもいいよ・・・」

潤んだ目で、顔を赤らめて上目使いで言われてしまえば抱きたくてたまらなくなる。

言葉も交わさずに奏の体に触れれば、それに答えるように可愛い声で喘ぐ。


奏に初めて出会った頃はこんな関係になれることなど夢にも思わなかった。

潤んだ目をして余裕のない奏がたまらなく愛おしい。
もう絶対に離さない・・・何があっても・・・


横で力尽きた奏は、呼吸を乱して枕に顔を埋めた。

どうやら俺は感情的になって、奏に無理をさせてしまったらしい。
そう、例え奏が俺に裏切られたと落ち込んでいたからとは言え、他の男と二人っきりでいたと言う事実は許せないのだ。
彼が言っていた通り、俺の惚気話を延々としていたのは可愛らしいが、もしも、彼が常識的な男でなければそのまま襲われていた可能性だってある。
それに、彼は顔がいいし、俺と違って料理ができるというところに奏は惹かれてしまったかもしれない。


「奏・・・愛してるよ」
そう言えば、奏はいつも照れ臭そうに手を握りながら「私も」と返す。

奏の柔らかくて、白い肌を抱きながらいつものようにそう言っておでこにキスをする。
今は、俺のことを考えて欲しい。