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許されない二人
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しおりを挟むそう言って抵抗する隙も与えぬまま、強引に奪った唇。
息ができないくらいに舌を絡ませて、背中からお尻太ももに触れた手が胸元に触れる。
丁寧で優しくする拓也とは違う。
女を本気で落としにくるキス。
体全体を押さえ込まれて、胸を弄ぶ。
それは、激しく快楽を伴った。
抵抗しなければいけないのに、そのまま続けて欲しいと思った自分が恐ろしい。
必死で拓也の姿を思い浮かべる・・・
だけれど、あの女の人のお腹の中に拓也の赤ちゃんがいる。
もう、二度と拓也に触れることも許されない。
でも、拓也に愛された思い出ばかりが蘇る。
ようやくキスから解放された時、私は信雪くんを突き飛ばした。
例え失恋で弱っていても、簡単に乗り換えることのできる女ではないと自分に言い聞かせたかったから。
無論、鍛えられている彼は私が押してもびくともせずに、ベーっと舌を出した。
「こういうのを期待して俺のところに来たんでしょ?」
(ムカつく・・・)
「もう、帰る」
荷物を持とうとした私の手を引いて、後ろから優しく抱きしめて、拓也が私に向けるような優しい眼差しで見つめた。
もう拓也と出会うことが許されないのならば、このまま信雪くんと幸せになるのもいいのかもしれない。
「ごめん・・・ついついかわいくて・・・それに俺こんなに頑張って作ったんだから残さず食べてよ・・・」
そう言われると、帰り辛くなってしまう。
貧乏性だから、食べ物を残して帰るのは自分を許せない。
その後私は、だいぶ飲んでしまったようで足元がフラフラした。
天井が回転する感覚を初めて味わったのだ。
とてつもなく酔っぱらった私を母のお店まで送ってくれたが、「もう、こんなに酔っ払って~~。今お店忙しくて相手にできないから。」と母は回答した。
「わかった。俺が飲ませすぎちゃったわ・・・責任持って送ってくる。」
「これ奏のアパートの住所。」
「おいおい、変なことすんなよ」と信雪くんは男性のお客さんに冷やかされている。
そんなやりとりをしているのは聞こえてくるのに、体が動かなかった。
タクシーに放り込まれて、おぼつかない手で部屋の鍵を開ける。
そのままベッドにダイブして、天井がぐるぐると回って体が熱くなった。
今思えば、まともに日本酒など飲んだことがないのにあまりの口当たりの良さと美味しさについつい飲みすぎてしまったのだ。
ビールやワインでは一向に酔わなかった私も、日本酒の免疫はなかったようだ。
余計に、泣き疲れているからか睡魔が襲う。
そのまま私は、眠りなれたシングルの布団の感触に安心したのかすやすやと眠りについた。
*
翌朝目覚めると、冬の朝のシングルの布団のはずなのにやけに狭苦しく暑い。
私は、スーツを脱いでおりブラージャーの上にレースのキャミソールを着て、パンツは履いているが、
布団の周りには脱ぎ捨てられたスーツとYシャツに、ストッキングがおぞましく散らばっている。
(昨日の夜・・・何があったの・・・・嘘でしょ・・・・)
飛び起きると、私は頭を抑える。
頭痛と吐き気で気分も悪い。
布団を深く被った男の黒髪が見えたため見なかったことにして布団をかぶせた。
すやすやと寝息を立てていて、上半身は服をきていない。
(これは確実にやっちゃった・・・ね・・・)
頭の中を整理すればどう考えても、信雪くん以外に考えられないのだ。
大きくため息をつくと、その男がモゾモゾと動き出す。
意を決して布団をあげると、寝ぼけ眼で「おはよう・・・大丈夫?」とその男は言った。
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