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一線を超えたアイドルとファン
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引越しと言えど大きな荷物の移動がないため不要なものは後輩にあげたり、処分したりしてキャリーケース一つにまとまった。
4畳の狭い部屋から、20畳の広々としたリビングと、8畳の洋室が3つある3LDKの間取りで彼氏と同棲とい一変した生活に不安ばかりが募る。
「今日からよろしくお願いします」
深々と頭を下げた私に、「こちらこそ」と笑顔で返す拓也。
ここに至るまで、「胡散臭い」「騙されている」「変なビジネスしてるんじゃないの?」と母には反対されたが聞く耳持たずに勢いで拓也の家に転がり込んだ。
母が心配する気持ちもわかるけれどこの恋を失いたくなかった。
一瞬一秒でも拓也と離れたくなかった。
最新の家具家電に、充分すぎる収納スペース
拓也は、他の部屋や、水回りの使用方法を一通り説明したものの奥の一部屋だけ説明がなかった。
なんとなく私は察する。
(この部屋怪しすぎる・・・あれだけグッズ買ってくれたからこの部屋に置いてあるんじゃ・・・)
気を背けるために「コーヒーでも飲む?」と言った拓也の泳ぐ目に私はその部屋のドアノブに手を掛ける。
「いや・・・この部屋は見ない方がいいと思うな~~~」
その手をつかんで、拓也はドアの前に立って私を通さない。
「そう言われると気になります」
勢いよく開けたドアの先には部屋一面に私(かのん)のポスターが貼られており、歴代のライブグッズおよびサイン入りチェキなどが綺麗に飾られていた。
こんなにも自分関連のグッズがあったのかと驚いてしまう。
「奏がうちに来てくれるってことで手放すことも考えたんだけど、できなくて・・・」
顔を押さえながら恥ずかしがって言う彼の姿を、会社の人たちは絶対に見たことがないだろう。
「なんかすみません・・・」
私は、すぐにドアを閉めた。
「引いた?」
「なんとなく想像はしていました。」
一息ついて、荷ほどきを始めると私は驚くべきことに気が付く。
キャリーバックの中から出てくるもの服やポーチなど全てにおいてたあくん(拓也)からのプレゼントだった。
確かに、彼からもらうプレゼントは全てにおいてセンスがよく自分が欲しいと思っていたものや実用的なものが多かった。
(モテる男は違うな・・・)
時刻は18時で、普段であればまだレッスンやらライブを行っていたが、卒業後は夕飯を作っていた。
私は、エプロンをして夕飯の準備に取り掛かることにした。
キッチンに立った私に、拓也は「マジか・・・俺んちのキッチンでかのんちゃんがエプロンしている」
彼は他にも、「俺んちのリビングにかのんちゃんがいる・・・どうしよう・・・」と呟いていた。
それほどまでに私のファンでいてくれたことに頭が上がらない。
そんな彼だから、料理を机に広げて向かい合わせに座り食べていれば、「どうしよう・・・かのんちゃんの手料理食べてる」と言って涙を浮かべる。
お風呂に入れば、「かのんちゃんが俺の家のお風呂に入った・・・すっぴん・・部屋着・・・」
そのうちに私が適当にあしらうようになると、どちらが年上なのかが分からなくなる。
無口でクールな、市ヶ谷拓也の幸せそうな顔を独り占めできるのは私だけだと優越感に浸る。
部屋はお借りしたものの、寝具一式用意できていないということを言い訳に彼のベッドに潜り込む。
「俺、生きてけなくなる・・・風呂上がりだし、俺が普段使ってるボディーソープの匂いするし、まじで歯止め効かなくなる。」
そう言って抱き寄せる。
「かのんちゃん・・・」と言いかけた拓也の逞しい胸板を叩く。
「もう、かのんちゃんって言ったら一緒に寝ない・・・」
怒って、背を向けた私を離れないように強く抱きしめる。
「ごめん、ごめん・・・奏・・・俺、浮かれすぎてるね・・・」
4畳の狭い部屋から、20畳の広々としたリビングと、8畳の洋室が3つある3LDKの間取りで彼氏と同棲とい一変した生活に不安ばかりが募る。
「今日からよろしくお願いします」
深々と頭を下げた私に、「こちらこそ」と笑顔で返す拓也。
ここに至るまで、「胡散臭い」「騙されている」「変なビジネスしてるんじゃないの?」と母には反対されたが聞く耳持たずに勢いで拓也の家に転がり込んだ。
母が心配する気持ちもわかるけれどこの恋を失いたくなかった。
一瞬一秒でも拓也と離れたくなかった。
最新の家具家電に、充分すぎる収納スペース
拓也は、他の部屋や、水回りの使用方法を一通り説明したものの奥の一部屋だけ説明がなかった。
なんとなく私は察する。
(この部屋怪しすぎる・・・あれだけグッズ買ってくれたからこの部屋に置いてあるんじゃ・・・)
気を背けるために「コーヒーでも飲む?」と言った拓也の泳ぐ目に私はその部屋のドアノブに手を掛ける。
「いや・・・この部屋は見ない方がいいと思うな~~~」
その手をつかんで、拓也はドアの前に立って私を通さない。
「そう言われると気になります」
勢いよく開けたドアの先には部屋一面に私(かのん)のポスターが貼られており、歴代のライブグッズおよびサイン入りチェキなどが綺麗に飾られていた。
こんなにも自分関連のグッズがあったのかと驚いてしまう。
「奏がうちに来てくれるってことで手放すことも考えたんだけど、できなくて・・・」
顔を押さえながら恥ずかしがって言う彼の姿を、会社の人たちは絶対に見たことがないだろう。
「なんかすみません・・・」
私は、すぐにドアを閉めた。
「引いた?」
「なんとなく想像はしていました。」
一息ついて、荷ほどきを始めると私は驚くべきことに気が付く。
キャリーバックの中から出てくるもの服やポーチなど全てにおいてたあくん(拓也)からのプレゼントだった。
確かに、彼からもらうプレゼントは全てにおいてセンスがよく自分が欲しいと思っていたものや実用的なものが多かった。
(モテる男は違うな・・・)
時刻は18時で、普段であればまだレッスンやらライブを行っていたが、卒業後は夕飯を作っていた。
私は、エプロンをして夕飯の準備に取り掛かることにした。
キッチンに立った私に、拓也は「マジか・・・俺んちのキッチンでかのんちゃんがエプロンしている」
彼は他にも、「俺んちのリビングにかのんちゃんがいる・・・どうしよう・・・」と呟いていた。
それほどまでに私のファンでいてくれたことに頭が上がらない。
そんな彼だから、料理を机に広げて向かい合わせに座り食べていれば、「どうしよう・・・かのんちゃんの手料理食べてる」と言って涙を浮かべる。
お風呂に入れば、「かのんちゃんが俺の家のお風呂に入った・・・すっぴん・・部屋着・・・」
そのうちに私が適当にあしらうようになると、どちらが年上なのかが分からなくなる。
無口でクールな、市ヶ谷拓也の幸せそうな顔を独り占めできるのは私だけだと優越感に浸る。
部屋はお借りしたものの、寝具一式用意できていないということを言い訳に彼のベッドに潜り込む。
「俺、生きてけなくなる・・・風呂上がりだし、俺が普段使ってるボディーソープの匂いするし、まじで歯止め効かなくなる。」
そう言って抱き寄せる。
「かのんちゃん・・・」と言いかけた拓也の逞しい胸板を叩く。
「もう、かのんちゃんって言ったら一緒に寝ない・・・」
怒って、背を向けた私を離れないように強く抱きしめる。
「ごめん、ごめん・・・奏・・・俺、浮かれすぎてるね・・・」
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