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俺はアイドルオタク
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「私、かのんは25歳の誕生日を持ちまして「fairy powder」を卒業します。」
俺は二度目の失恋を経験した。
アイドルが卒業を決める理由として、体力的なものあるかもしれないが大体は恋愛や結婚だ。
もう、あの笑顔や一生懸命に歌って踊る姿が見られなくなってしまう。
かのんは俺の唯一の生きる希望だった。
かのんを初めて見たのは、彼女がまだ12歳の時だった。
資産家の父は、基本的に働かず持っている資産で豪遊して暮らしている。
要領のいい兄も同じように「楽をしてお金を稼ぐ」ことばかりを考えている。
それに便乗して母も自由気ままな暮らしをしている。
父も女遊びが激しいが、母はそれ以上だと思う。
この異常な家庭に生まれた俺はまっすぐ育つこともなく、勉強もスポーツも常に兄の上をいくことだけを考えていたのに、高校生の頃に本気で恋をしていた二つ年上の彼女を兄に奪われた。
『拓也は真面目でつまらない』
この言葉は今でも思い出しては、胸糞悪くなる。
その頃だった・・・
かのんという天使に出会ったのは・・・
駅前の人混みの中でポップなサウンドとともに、決して上手とは言い難い歌声が聞こえてくる。
その音の元へ向かうとまだ、小中学生であろう女の子が短いスカートを履いて一生懸命歌って踊る姿に思わず俺は涙した。
彼女たちはパフォーマンスを終えた後も、道ゆく人に迷惑がられならも、笑顔を保ち続けてCDを売り続けていた。
もちろん、俺はそのCDを買った。
初めは買わないつもりだったけれど、気がついたら彼女たちからCDを受け取っていた。
道ゆく人たちは、テレビに出ていないような無名なアイドルたちを気に留めることもなく通りすぎていく。
俺は、音楽的知識があるわけではないし、そもそも芸能人やアニメの類も興味がないけれど、とにかくかのんに惹かれていた。
茶髪のチャラチャラとした高校生が買うのだから、その当時のかのんは少し怖がっていたが、笑顔でお礼を言ってくれた彼女のことを今でも覚えている。
それから、俺は彼女たちのライブには全公演参加し、グッズも購入した。
しかし、それはあくまで自分がバイトをしたお金で。
自分が、アイドルにハマっていることを知られてしまえば(特に兄に)人生の終わりなのでライブへ行く際は必ずマスクと、眼鏡をして髪のセットもいつもと変えていた。
おかげさまで、今日に至るまで誰にもバレることなくアイドルオタクを続けることができたのだ。
そして、12歳から応援し続けてきた彼女は、ここ最近一気に綺麗になった。
目がぱっちりとしていて色白で、美脚の持ち主であったが、最近は色気が増した。
他のメンバーは、ライブ後の握手およびチェキ会でファンによって対応を変えることも多かったが、彼女は一切そんなことはしない。
誰にでも公平に接する。
また、SNSで彼氏を匂わずようなことは一切せずにひたすら食べ物の写真ばかりをアップしていたところもまた愛おしい。
プレゼントやグッズ購入を強請ることもしない。
そして、ファン一人一人のことを覚えており、俺のこともしっかりと認識してくれているのだ。
それがアイドルだからとわかっていても、彼女の特別な存在になれていると思っていたのに・・・
(卒業かよ・・・かのんも他の男のものになっちまうのか・・・)
最後のライブは声が枯れるまで声援をして、涙が枯れるまで泣いた。
そして、改めて思い知らされる。
俺はアイドルや、このグループが好きなのではなくきっと「かのん」という一人の女を愛していたのだと。
かのんが引退してしまえば、きっとこの先ライブに行くこともないだろうし、他のアイドルに乗り換えるという予定もない。
生活のほとんどが埋め尽くされていたというのに、これからどうやって生きていけばいいのだろうか・・・
(ああ、いい加減婚活するか・・・子供欲しいな・・・切実に・・・)
ライバル視してきた兄は、すでに結婚して(俺の元カノじゃない女と)二人子供がいるというのに俺はかのん一筋であったため、高校生を最後に彼女はいないし、父の持ってきた縁談も全て断っていた。
(これからの人生どうするかな・・・)
俺は二度目の失恋を経験した。
アイドルが卒業を決める理由として、体力的なものあるかもしれないが大体は恋愛や結婚だ。
もう、あの笑顔や一生懸命に歌って踊る姿が見られなくなってしまう。
かのんは俺の唯一の生きる希望だった。
かのんを初めて見たのは、彼女がまだ12歳の時だった。
資産家の父は、基本的に働かず持っている資産で豪遊して暮らしている。
要領のいい兄も同じように「楽をしてお金を稼ぐ」ことばかりを考えている。
それに便乗して母も自由気ままな暮らしをしている。
父も女遊びが激しいが、母はそれ以上だと思う。
この異常な家庭に生まれた俺はまっすぐ育つこともなく、勉強もスポーツも常に兄の上をいくことだけを考えていたのに、高校生の頃に本気で恋をしていた二つ年上の彼女を兄に奪われた。
『拓也は真面目でつまらない』
この言葉は今でも思い出しては、胸糞悪くなる。
その頃だった・・・
かのんという天使に出会ったのは・・・
駅前の人混みの中でポップなサウンドとともに、決して上手とは言い難い歌声が聞こえてくる。
その音の元へ向かうとまだ、小中学生であろう女の子が短いスカートを履いて一生懸命歌って踊る姿に思わず俺は涙した。
彼女たちはパフォーマンスを終えた後も、道ゆく人に迷惑がられならも、笑顔を保ち続けてCDを売り続けていた。
もちろん、俺はそのCDを買った。
初めは買わないつもりだったけれど、気がついたら彼女たちからCDを受け取っていた。
道ゆく人たちは、テレビに出ていないような無名なアイドルたちを気に留めることもなく通りすぎていく。
俺は、音楽的知識があるわけではないし、そもそも芸能人やアニメの類も興味がないけれど、とにかくかのんに惹かれていた。
茶髪のチャラチャラとした高校生が買うのだから、その当時のかのんは少し怖がっていたが、笑顔でお礼を言ってくれた彼女のことを今でも覚えている。
それから、俺は彼女たちのライブには全公演参加し、グッズも購入した。
しかし、それはあくまで自分がバイトをしたお金で。
自分が、アイドルにハマっていることを知られてしまえば(特に兄に)人生の終わりなのでライブへ行く際は必ずマスクと、眼鏡をして髪のセットもいつもと変えていた。
おかげさまで、今日に至るまで誰にもバレることなくアイドルオタクを続けることができたのだ。
そして、12歳から応援し続けてきた彼女は、ここ最近一気に綺麗になった。
目がぱっちりとしていて色白で、美脚の持ち主であったが、最近は色気が増した。
他のメンバーは、ライブ後の握手およびチェキ会でファンによって対応を変えることも多かったが、彼女は一切そんなことはしない。
誰にでも公平に接する。
また、SNSで彼氏を匂わずようなことは一切せずにひたすら食べ物の写真ばかりをアップしていたところもまた愛おしい。
プレゼントやグッズ購入を強請ることもしない。
そして、ファン一人一人のことを覚えており、俺のこともしっかりと認識してくれているのだ。
それがアイドルだからとわかっていても、彼女の特別な存在になれていると思っていたのに・・・
(卒業かよ・・・かのんも他の男のものになっちまうのか・・・)
最後のライブは声が枯れるまで声援をして、涙が枯れるまで泣いた。
そして、改めて思い知らされる。
俺はアイドルや、このグループが好きなのではなくきっと「かのん」という一人の女を愛していたのだと。
かのんが引退してしまえば、きっとこの先ライブに行くこともないだろうし、他のアイドルに乗り換えるという予定もない。
生活のほとんどが埋め尽くされていたというのに、これからどうやって生きていけばいいのだろうか・・・
(ああ、いい加減婚活するか・・・子供欲しいな・・・切実に・・・)
ライバル視してきた兄は、すでに結婚して(俺の元カノじゃない女と)二人子供がいるというのに俺はかのん一筋であったため、高校生を最後に彼女はいないし、父の持ってきた縁談も全て断っていた。
(これからの人生どうするかな・・・)
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